かつて、恵比寿ガーデンプレイスの一画に恵比寿ガーデンシネマという、厳選された良質な作品ばかりかけるミニシアターが存在しました。2011年に惜しまれつつ閉館しましたが、一昨年、ユナイテッドシネマ系列のサーヴィスを導入しつつも独自のコンセプトを掲げ、同じ場所にてYEBISU GARDEN CINEMAとして復活したのです。しっかり情報は得ていましたし、観たい作品も多々上映していたのですが、しかし私にとってはやや遠い場所であり、しかも周囲に他に立ち寄るところの心当たりがない、といったわけで、なかなか足を運べずにいました。しかし本日、復活から2年を数えてやっと、訪問することが出来ました。
それも、新しいバイクで。
実は、早いうちに予算の目処が立ってしまったため、既に手配を進めていたのです。当初の予定ではこの前の日曜日に納車のはずでしたが、予定を組んだあとで従姉からバイク売却の日取りの話があったため、もし整備など必要な手続が済むようなら前日のうちに引き取りたい、と販売店に相談し、土曜日の夕方には私の手許に届いていました。
ただ、任意保険については我が家がかねがねお世話になっている代理人のかたにお願いするため、書類が揃うまでは跨がらずにいました。
そして火曜日、無事に保険もひととおり整ったので、実は既に軽く慣らし運転に出かけている。ただ、軽く買い物もするはずが、駐車する場所が見つからずに往復するだけで終わってしまったので、触れずにいたのです。
しかし今日はちゃんと目的もある。駐輪する場所も予め見定め、iPhoneに入れたカーナビのアプリに行き先設定をし、万全の準備を整えて出発。
このカーナビのアプリ、Hondaで配信しているもので、一般の乗用車のナビに使用されているものと同じデータを用いているため、極めて精度が高い。きのう一度試して、既に信頼はしてましたが、今日は改めてその機能の凄味を感じました。途中までは見知った道に誘導され、あるところで急に細い脇道に入っていったので不安になったのですが、そのあと余計な方向転換なしで辿り着いて感心してしまった。
ただ、移動に思いのほか時間がかかったのと、肝心の駐輪場の場所がすぐに解らなかったために、ぐるっと回って戻る必要が出て、予定表にある上映開始時間からちょっと遅れてしまいましたが、予告篇を幾つか見落とした程度で済みました。
そんなわけで久々の、そしてリニューアル後初めて訪れたYEBISU GARDEN CINEMAにて鑑賞したのは、本年度アカデミー賞主演男優賞&脚本賞受賞、兄の死により、忌まわしい記憶の残る町で冬を過ごすことになった男の姿を綴る重厚なドラマ『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(Bitters End×PARCO配給)。
長年、兄ベン・アフレックと友人マット・デイモンの陰に隠れてわりを食っていた感の否めなかったケイシー・アフレック渾身の“凡庸なダメ男”がもう圧巻。仕事が出来ないわけではないが酒に溺れやすく、最悪の失敗を犯した町に戻ることを怖れている。しかし、兄の死によって、自らのあやまちとふたたび対峙しなければならなくなった男の悲哀、弱々しさを、絶妙の匙加減で演じきってます。こういう主題の作品としては意外な落としどころまで含め、生きていくことの面倒くささと厄介さ、そしてそれを受け入れる優しさにも満たされた、優秀なドラマ。それを狙ったわけではないでしょうが、ケイシー自身の俳優としての道程と重なる部分もあって、これが高く評価されたのも当然だと思います。
ちなみにリニューアルされた劇場は、ロビーにカフェを設置したり、以前は認められていなかった場内での飲食が可能になっていたり、という違いはあっても、ふたつのスクリーンの配置、一方のスクリーンが階段を上がったところに入口が設けられている変わった作りなどはそのまんま。思った以上に、かつて訪れていた私にも違和感のないリニューアルでした……翻って、復活までの間に利用していたテナントもたぶん同じような構成のまま使ってたんだろうな、と推測出来ることに気づいて、ちょっと妙な気分になりましたけど。
鑑賞後は近くで見つけたラーメン店にて昼食を摂り、ふたたびバイクに跨がって帰宅。帰り道はナビが何度か意表をついた誘導をしてきたためにルートを外れる、というトラブルを繰り返しましたが、恵比寿から自宅までなら、ブランクがあるとはいえ見慣れた道も多いので、慌てることなく無事に帰宅。だいたい、偶然ではありますが、一部のルートはきのう慣らし運転をしたときにいっかい通っていたので、余計迷う余地はなかったのです。
そんなわけで、6月からの映画鑑賞は、バイクでの移動を織り交ぜていくつもり……まあ、間もなく梅雨に入るはずなので、そんなに頻繁には乗れないとは思いますが。
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