“今年最強レベル”という台風が急スピードで日本列島を縦断しようというさなか、私はいつものごとく映画を観に行っておりました――だって、今後のスケジュールを考えると、今日しかなかったんだもの。
朝から間歇的に大雨になっていて、さすがに自転車は無理。電車も普段使っている路線だけだと徒歩の部分が長いので、地下鉄も利用して地上に出る時間を短縮し、訪れたのはいつものTOHOシネマズ日本橋。鑑賞したのは、午前十時の映画祭9今コマ上映作品、監督が自らの体験をベースに、一兵卒として見たベトナム戦争のリアルを描きだして、アカデミー賞はじめ多くの賞に輝いた傑作『プラトーン』(Warner Bros.初公開時配給)。
冒頭から過酷としかいいようのない状況が描かれる、本当に重い戦争映画。訓練もないままの実戦、階級が無意味になる現場の混乱、敵に対する非人道的な言動など、あまりに過酷すぎる状況の数々に圧倒される一方で、観ているこちらまでが麻痺していく。しかも終盤になると、もはや兵士にとって戦うべき敵が何だったのか解らなくなる始末。決して政治的な意味では戦争が終わったわけではないのに、不思議と爽快感があるあのラストは、視点人物であるクリスにとっては、あの終わり方しかなかった、ということなのでしょう。そう読み解くと余計に慄然とする。全員似たように薄汚れているのに、それでも見分けがつくほどキャラが明確に描き分けられていて、過酷ながらも描写にテンポがあり、エンタテインメント性も備えている。恐るべき傑作です――ほぼ“生き物”呼ばわりされてる『地獄の黙示録』ほどではないにせよ、戦争映画の完成形のひとつだと思う。
付近で食事するにも、やっぱり外を出歩きたくはなかったので、はじめから家で食べるつもりでした――が、劇場のあるフロアから1階まで下りてみたら、外が明るい。傘を差してる人がひとりもいない。なんだか釈然としない気分になりつつも、雨が降ってないなら、と地上を歩いて、ふだん利用しているほうの駅から電車に乗ったのでした。
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