ユナイテッド・シネマ豊洲で先月末から来月頭ぐらいまでにかけて、昨年評判の良かった作品のリヴァイヴァル上映企画をやっています。昨年、100本越えを達成したものの、それでも見落としていた作品が幾つかその中に拾われていたので、この機に鑑賞してきました。非常に私に好都合なスケジュールになっていたため、またしてもハシゴです。日中は汗ばむくらいの陽気だったものの、天気予報によれば日が暮れると一気に寒くなる、という話だったので、厚着をしたうえバイクにて豊洲へ。
1本目は、梁石日原作、阪本順治監督作品、人身売買の実態を描き出した『闇の子供たち』(ゴー・シネマ・配給)。正直なところ、“衝撃的”と謳われていた部分の大半は、現実を考えれば想像がつくもので、そういう意味で私は衝撃を受けなかったのですが、これを克明に描いたこと自体に意義がある作品です。何より、クライマックスで明かされる事実の重みが著しい。ラストの事件がちょっと説明不足なのが気になりましたが、なるほど問題作の名に相応しい。
お昼頃までは軽く頭痛がしていたので、1本観て調子が悪いようなら帰ろうとも考えていましたが、熱気に煽られたのか単純に風邪薬が効いたのか、観終わったときには状態が良くなっていたので、今週もう1回来るよりは、とすぐにもう1本のチケットを購入して、同じスクリーンにとって返す。
2本目は、『ハッシュ!』の橋口亮輔監督久々の作品、リリー・フランキーと木村多江演じる夫婦の10年に及ぶ歩みをじっくりと描き出す『ぐるりのこと。』(Bitters End・配給)。『闇の子供たち』は観る価値の高い作品ですが、単純に好き嫌いの話をするなら、私はこちらのほうが好き。決してかっちりとしたストーリーはないのですが、ひと組の男女が哀しい出来事や経て少しずつ絆を深めていく様が実に胸に沁みてきます。薄幸な役柄がハマりすぎている木村多江の魅力が全開になっているのも嬉しいところですが、意外だったのはリリー・フランキーがいい味を出していたこと。台詞に無理がなく、自然体の演技が作品の空気に馴染んでいます。先に観たのがあまりに絶望的な話だった分だけ、その和やかさ、生きることへの希望に満ちた雰囲気に余計に救われました。
どっちも重量級ながら、先週末のようにあとでケチをつけられることもなく、充実した気分で家路に就きました――本当に無茶苦茶寒かったけど。
コメント