『薬師寺涼子の怪奇事件簿』ファイル09-d 東京デッド・オア・ラブ(前編)

 もなみはいずれ涼子とすり替え、その後見人として瑠璃子がJACESを実質的に乗っ取るために作りだされたクローン人間だった。瑠璃子はもなみが泉田に抱いた恋心を利用して、涼子に対する殺意を抱くように仕向ける。狙われた涼子は、潜入した屋敷での爆発事故で自分を庇い負傷した泉田を姉の元に匿い、自分同様瑠璃子に狙われているはずの部下たちを室町に委ねると、単身最後の戦いに赴いた……

 ……うーん、やっぱりあんまり深く考えてないな。涼子の経済力とか情報収集能力とか計算高さとか全然反映されてないんですが。アニメ的な見せ場を作ることに執心するあまり、まるっきり原作と違うところに来てしまっている。自ら戦いに赴くのは別に不自然ではありませんが、なんか作品の方向性がだいぶ違ってしまっていて戸惑います。

 ただ、やろうとしていることは決して悪くない。涼子の常人離れしたポテンシャルの高さを示す一方で、弱さと泉田の前で必死に張ろうとしている虚勢を描くという趣向は、原作では根本的に出来ない――やろうとするとどうしても表現がわざとらしくなってしまうので、それを多視点にならざるを得ないアニメで実現したのはいい考えです。

 しかし、しかし、本当に少し考えがなさすぎだろ、これでは。見せ場を作るために人物の特徴を殺してはまずい。前回といい今回といい、味方も敵も計画性がなさ過ぎて呆れるばかりでした。原作のようにやたら説教臭くなるのもどうかと思いますが、見た目の娯楽性ばかり追求して破綻するのも考えものです。

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