本日も東京国際映画祭の作品を鑑賞するため、夕方からお出かけです。ただし今日は六本木ではなく、TOHOシネマズ日本橋。今年から上映館に加わり、庵野秀明特集を中心にかけているのです――なのに私は、庵野作品は１本も押さえていないという。嫌いじゃないけど他の作品が気になったのです。
１本目は、舞台はフィリピン、しかし主演は浅野忠信でヒロインはメキシコ人、プロデューサーがドイツ人、という実に色々なところの才能が合流して撮った、スタイリッシュでユニークな犯罪ドラマ『壊れた心』(日本配給未定)。
スタイリッシュかつ実験的な作品。ほとんど台詞はなく、終始鳴り響くフィリピンのポップ・ミュージックやイメージ的な映像の連なりで物語を見せている。肝心なところをあえて外したような描き方なので、どうもはぐらかされたような気分にもなるのですが、独特の世界観と、観る者によって受け止め方の異なるヴィジュアルは面白い。
１本目鑑賞のあと、夕食を摂るためいったん劇場を離脱しました。近くのファストフードにでも、と思っていたのですが、調べてみるとこの日本橋界隈はあまり店舗がない。まあ少し離れたところでも、自転車で移動するからいいか――と思っていたのですが、そこで、ふ、と思い出した。
神田やぶそばが復活してるんだった！
以前、２回ほどしか訪れたことがありませんが、味も雰囲気も良かったことは覚えている。火事の一報を聞いたときは非常に残念でしたが、そのときから経営者が営業再開を誓っていたので、ずっと心待ちにしていたのです。先頃ようやく改築終了、営業再開という報道があり、そろそろ少しほとぼりが冷めた頃なので、もしあまり待たずに済むようならここで食べよう、と思い立った。
久々に来てみると、店舗は綺麗になりましたし、ちょっと構成も違うように思いますが、雰囲気はおおむね往時のまま。幸い、せいろうそばぐらいならあまり待たずに出してもらえるとのことなので、席に着く。注文するものにしばし悩み……体調やなんやかやと相談して、今日はシンプルにせいろうそばをお願いしました。
２回しか来ていないので、味を正確に記憶しているわけじゃありません。でもやっぱり美味しい。量的には少なめですが、そば湯まで執拗に頂いて堪能してきました。……体調が悪いにしても、さすがにちょっとさっぱり済ませすぎた感はありましたが。月見ぐらいにしても良かったかも。
食事してもまだ余裕があったので、更に秋葉原まで赴いて大急ぎでお買い物をし、ふたたび日本橋に舞い戻る。鑑賞した本日２本目は、タイで大ヒットを遂げた、３人の監督の共作によるホラー映画、若き女優の死から始まる悲劇の連鎖を描いた『ラスト・サマー』(日本配給未定)。
『ラスト・サマー』といえば同題のアメリカ映画があまりに有名ですが、本篇の出だしはそれにちょっと近いながらも、作りは日本のホラー映画に近い。しかも、わざとらしさや無理をほとんど感じさせない、優秀な仕上がりになってます。いくつか説明不足や、伏線が無駄になっている箇所はあれど、トータルでは日本人にも心地よく、そして下手な日本産ホラーより格段に折り目正しい仕上がり。本国ではヒットした作品だそうで、そう聞くとなーんとなく軽い作りを想像してしまうんですが、これは優秀でした。日本公開の予定はないようですが、どこか来年の夏に向けて動いてくれないかしら。
『壊れた心』は本篇のみでしたが、こちらはヒロインのひとりミーンを演じたスタッター・ウドムシンと、プロデューサーのルタイワン・ウォンシラサワットが登壇してのＱ＆Ａつきでした。
製作中にお祓いを受けたりしたのか、であったり、３人の監督を起用した理由やそれぞれの違い、など色々と質問があったなかで、しかし会場がいちばんざわついたのは、スタッター嬢が実は現在17歳、撮影当時は15歳だった、という話が出たときでした。大人っぽい、というのもありますが、彼女が演じたのはいまの実年齢に近いキャラクターです。何その違和感のなさ。
それにしても……今回の東京国際映画祭、とにかく気になったものの中から、スケジュールと相談して選んだものなのですが、なぜだかアジアの映画が多い。あと１本購入してあるのは中東です――一般上映では欧米か、日本の作品をどうしても選んでしまいがちなので、それもまたこういう国際映画祭の面白いところではあります。そしてうち２本が行きすぎたアート作品で、あと２本が反対にキャッチーな方向性を備えた青春もの、と妙に筋が通ってしまったのも一興。最後に観る作品はたぶんちょっと趣が違いますが、詳しいことは当日また触れます。
……書いている途中で、10年近くにわたって育て上げたiTunesのライブラリが、ファイルにアクセス出来なくなり崩壊する、という悲劇に見舞われて、しばし呆然としておりました。危うく日付が変わるところだった……。
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