間に合うように出かけたのに。

 フリーパス有効期限はあと1週間ほど。まだあんまり活かしておらず、かつ明日は観たい映画が異常にたくさん封切られるので、取り急ぎひとつ押さえに出かけました。初めて出かける場所ゆえ、いつもより移動時間に余裕を持って出発。

 ……その余裕を、電車の遅延で食い潰されました。

 確かに人身事故が起きやすい、と言われている路線ではある。そのために、算出された移動時間より20分は余計に見繕って出かけたのに、その20分ほぼぴったり消費する、ってどういうこと?

 どうも正確には人身事故ではなく、妙な物音がしたために確認を行っていたようです。しかしその正体が判明しないので、なかなか動かなかったらしい。

 携帯電話の時計と何度も睨めっこしました。路線を替えて途中下車すれば、別のTOHOシネマズがあるので、とりあえず映画は観られる。ただ、そこの一画で観られるなかで、一番押さえたい作品はスタートまで一時間以上空いてしまう。ちょうどいい頃合いにスタートする作品もありますが、今日はいまいち気の乗らない作品だった。

 乗換の駅でひたすら悩み、これ以上遅くなるようだったら帰るか、それともとりあえず現地入りして、次の回を鑑賞するか……しかしこの作品、行く予定の映画館では1日2回しかかけておらず、観るつもりだった回を逃すと、次は2時間後になる。ならハシゴをすれば、という考えもありますが、明日、明後日となるべく封切り作品を押さるべく余力を残したいので、今日は1本だけ観て早く帰りたい……

 悩んでいるうちに、この駅を発たねば間に合わない、という時刻が近づいたまさにそのとき、運行が再開、電車が滑り込んできた。ええいままよ、と乗り込み、あとは成り行きに委ねました。そしてその途中、ほとんど目と鼻の先で雷が落ちた――さっきの電車を止めさせた物音といい、なんでこんな不気味な雰囲気なのだ。人がこれから観に行くのがホラー映画だからか?!

 そうして滑り込んだのは、神奈川県の川崎駅。人が駅を出た途端に雨が降り始め、折りたたみ傘を指して、駅の近くにあるDICEという複合施設へ小走りで飛び込む。7階にあるTOHOシネマズ川崎のチケットカウンターに到着したとき、ちょうど目当ての作品が上映開始の時間を迎えたのでした――ブルーレイを用いて上映している都合で予告篇がなく、あとでプログラムを確認したところ、やっぱり冒頭2、3分ぐらい見落としてしまったようです。とほ。

 ともあれ、すったもんだの挙句なんとか鑑賞出来たのは、『怪談新耳袋』シリーズの脚本や『ほんとにあった怖い話』シリーズの演出で知られる、本邦ホラーブーム陰の立て役者のひとりである三宅隆太監督最新作、少女の失踪事件を題材にしたホラー七つまでは神のうち』(S・D・P配給)

 もともとも三宅隆太監督オリジナルということで楽しみにしていたうえに、公開前後ぐらいに“サプライズがある”というのをちらっと耳にして、早めに観ようと思っていたのです。都内ではシアターN渋谷で上映されてますが、言っちゃなんですが正直のびのびと鑑賞するには問題の多い劇場ですし、TOHOシネマズ川崎ならさほど遠くなく、増えた電車賃を考慮してもフリーパスを利用したほうが安上がりなので、わざわざ川崎で鑑賞することを選んだのです。

 正直、サプライズの部分は、観る側の姿勢によって衝撃が違いすぎ、あまり効果を上げていない印象。しかし、長年国産ホラーに携わってきたがゆえの巧みな物語構成、恐怖演出は堂に入っている。作中ですべてを語らず、掘り下げるところも意識的に残してあるので、質は高い。……正直、ちょうどこの前夜、テレビで観たホラーオムニバスドラマがあまりに酷い出来だったので、ホラー愛好家としてのモヤモヤをいい感じに吹き飛ばしてくれたのは有り難い。

 しかし劇場を出ると、外は相変わらずのどんよりとした空模様。余計なところに立ち寄ることはせず、まっすぐ帰ることにしたのでありました。

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