ユナイテッド・シネマ豊洲が入っているららぽーと豊洲入口脇の足場の壁に掲示された『スター☆トゥインクルプリキュア 星のうたに想いをこめて』ポスター。
原作:東堂いづみ / 監督:田中裕太 / 脚本:田中仁 / 総作画監督&キャラクターデザイン:小松こずえ / 作画監督:松浦仁美、中谷友紀子 / 美術監督:今井美紀 / CGディレクター:大曾根悠介 / 色彩設計:竹澤聡 / 撮影監督:高橋賢司 / 製作担当:澤守洸、井桁啓介 / 音楽:林ゆうき、橘麻美 / 主題歌:『Twinkle Stars』 / 声の出演:成瀬瑛美、小原好美、安野希世乃、小松未可子、上坂すみれ、木野日菜、吉野裕行、知念里奈、咲野俊介、石川由依、濱津隆之、片桐仁、駒木根隆介 / 配給:東映 / 映像ソフト発売元:東映ビデオ
2019年日本作品 / 上映時間:1時間11分
2019年10月19日日本公開
2020年2月19日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD通常版:amazon|DVD特装版:amazon|Blu-ray特装版:amazon]
公式サイト : http://www.precure-movie.com/
ユナイテッド・シネマ豊洲にて初見(2019/10/19)
[粗筋]
宇宙空間で戦っていたキュアスターこと星奈ひかる(成瀬瑛美)たちスター☆トゥインクルプリキュアは、星空警察の刑事メリー・アン(知念里奈)の助けもあってどうにかテンジョウとノットレイたちを退ける。が、もともと“宇宙怪盗ブルーキャット”として暗躍していたキュアコスモことユニ(上坂すみれ)に目をつけていたメリー・アンはユニを追い始めた。ユニはプルンス(吉野裕行)に操縦させた宇宙船で逃亡を図り、メリー・アンともども行ってしまった。
地球での住居代わりに宇宙船を使っていたキュアミルキーこと羽衣ララ(小原好美)は寝る場所がなくなってしまった。キュアソレイユこと天宮えれな(安野希世乃)とキュアセレーネこと香久矢まどか(小松未可子)は修学旅行で沖縄に発ってしまうため、やむなくひかるの部屋に泊まったララだが、夜遅くまでミステリー・スポットやUMAの話に夢中になったあまり、寝坊してしまう。
このときひかるとララは、宇宙での戦闘のさなかに、くっついてきたものがあったことに初めて気づく。星のかたちをした小さな生き物だった。金平糖に似ているためにひかるが危うく食べてしまいそうになり怯えさせてしまうが、ひかるが宥めると、すぐに懐いた。
しかもこの小さな生き物には不思議な力があった。戦闘のあとで拾ったミラクルライトを持って願えば、どこにでも好きなところに飛ばしてくれるのである。そうとは知らず、えれなたちのことを考えてしまったひかるとララは、気づけば沖縄にいた。
ひかるは無邪気に喜ぶが、ララは胸中穏やかではない。まだ宇宙に広がる世界を知らない人々ばかりの地球で、無防備に行動する小さな生き物に危なっかしく感じていたのだ。小さな生き物もそれを知ってか、ララに対して警戒を解かない。そんななか、小さな生き物は沖縄ではぐれてしまう――
[感想]
この“プリキュア”シリーズ、既に16シーズンに及んでいるが、毎回様々な工夫や試行錯誤を重ねている。テレビシリーズ自体も、ファッションやスイーツを軸にしてみたり、と様々な世界観を組み立ててきたが、劇場版はこのうえで更に、パリを舞台にしてみたり、ミュージカル的な趣向を取り入れたり、と手を変え品を変え、続けて鑑賞し続ける大人をも唸らせるような工夫を凝らしてきた。2018年の『HUGっと!プリキュア』など、15作目を記念して、原点である『ふたりはプリキュア Max Heart』のチームを復活させる、という、本来の対象年齢ではなく親世代の方が喜びそうなサーヴィスまで仕掛けてきた。
だが、シリーズ原点を蘇らせた2018年の作品以上に、本篇こそ、これまでプリキュアシリーズが劇場版の集大成と言える内容になっている。
冒頭のアクションシーンは、テレビシリーズの延長で展開する。お馴染みの敵キャラ相手に、いつもよりもちょっと派手な戦いを繰り広げて、テレビシリーズを観ている幼い観客を入りやすくした格好だ。
プリキュア劇場版はたいてい異世界を舞台にすることで、テレビシリーズのストーリーと距離を取りながら、映画ならではの特異性や豪華さを添える趣向を用いている。しかしこの『スター☆トゥインクルプリキュア』はテレビシリーズそのもので宇宙という“異世界”を採り上げており、しかも登場するほかの惑星やその住人たちのキャラクターは、SF的なモチーフを盛り込みつつもファンタジー要素が色濃かった。そのため、劇場オリジナルの異世界を設定するのは容易かったが、一方で映画版ならではの豪華さを演出しにくい嫌味もあった。だが本篇はそれすら逆手に取って、えれなとまどかの修学旅行先として選んだ沖縄を筆頭に、世界各国の神秘的なスポットを採り上げて、映画ならではの広がり、特別感をプラスした。
1時間ちょっとの限られた尺の中でこうした特別感を盛り込むために、従来の劇場版では時としてストーリー面が疎かになることもままあったが、本篇はその点でもそつがない。プリキュア5人すべてに見せ場を作って散漫になることを避け、序盤はひかるとララを中心に展開、途中からは小さな生き物に対して複雑な想いを抱くララを軸に、彼女の設定を巧みに活かしたドラマを組み立てていく。
軸となる筋立てをくっきりと際立たせれば、自然と近しいキャラクター達の立ち居振る舞いも、それぞれの個性やララとの関係性に沿ったものになり、結果としてこちらも引き立つ。人一倍の好奇心とお人好しぶりで話を牽引していくひかるは、当初、宇宙からやって来た小さな生き物に厳しく接するララに代わって、生き物を地球の魅力へと導いていく。年長組のえれなとまどかは、その位置づけに相応しく、やもすると暴走しがちなひかるとララをサポートする。序盤でララの寝床を逃亡に使って行ってしまうユニは、宇宙の側から説明を補う役割を担うかたちだが、ララと異なり宇宙盗賊として飛び回っていた彼女としては正しい役回りだ。
そして、軸である、自分たちとは異なる世界から来た“ともだち”との交流と事件、という流れも、プリキュア劇場版ではお馴染みだ。しかも今回はそれがシリーズ全体の題材とも結びつき、かつ、展開されるドラマまでが共鳴している。感想に着手するタイミングを逸してしまったため、これを書いている時点で既にテレビシリーズ本放送は完結しているのだが、そちらで繰り広げられるクライマックスは、本篇での出来事を思い浮かべると更に胸に響くものだった――これも劇場版の不文律のようなもので、テレビシリーズでは積極的に劇場版の出来事に言及しないのだが、だからこそ尚更にテレビシリーズの主題をより豊かにするような作りを狙っていたとしたら、完璧と言うほかない。
劇場版のプリキュアにおいては、一般的な手書きによるアニメーションだけではなく、3DCGも積極的に用いていた。初期は作画カロリーの高い、複雑な動きをするボスキャラや幻想的なガジェットに流用されるのみだったが、テレビシリーズでも恒例となったエンディングのダンスを3DCGに統一、じわじわと表現の改良を重ねていった結果、近年は劇場版最大の見せ場で、まったく違和感なく劇中に填め込まれるようになった。そしてそれは本篇、恒例のダンスパートをそのままクライマックスの見せ場に融合する、という趣向で、最高に感動的なひと幕を演出するために活用している。タイトルにもある“うた”に焦点を合わせた作品と言えば、プリキュアシリーズの蓄積を活かし、もう少し上の年齢層にアピールしようとしたものの振るわなかった『ポッピンQ』を思い出すが、本篇の構成にはその再挑戦めいた趣も感じてしまう。
このように本篇は、プリキュアシリーズが劇場版を続けていくうえで試みた挑戦、洗練させてきた表現がほとんど詰め込まれ、最高の仕上がりでまとめられている。ポップなイメージに統一された宇宙のガジェット、子供向けらしい設定とカタルシスの解りやすさで、やもすると安易に組み立てられたような印象も受けてしまうが、しかしそう感じてしまうのもまた、本篇かその意図を明確に全うしている証明だろう。2018年の『HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』は、ストーリーとして洗練させながら、もう一方で試行錯誤を重ねてきた観客参加型の表現を完成させたひとつの頂点であったが、本篇はそれ以外の様々な趣向も総括した、現時点での集大成となる傑作だと思う、
関連作品:
『魔法つかいプリキュア! 奇跡の変身! キュアモフルン!』
『劇場版 ふたりはプリキュア Max Heart』/『劇場版 ふたりはプリキュア Max Heart 2 雪空のともだち』/『ふたりはプリキュア Splash Star チクタク危機一髪!』/『Yes!プリキュア5 鏡の国のミラクル大冒険!』/『Yes! プリキュア5 GoGo! お菓子の国のハッピーバースディ♪』/『フレッシュプリキュア! おもちゃの国は秘密がいっぱい!?』/『ハートキャッチプリキュア! 花の都でファッションショー…ですか!?』/『スイートプリキュア♪ とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪』/『スマイルプリキュア! 絵本の中はみんなチグハグ!』/『ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!? 未来につなぐ希望のドレス』/『ハピネスチャージプリキュア! 人形の国のバレリーナ』/『Go!プリンセスプリキュア Go!Go!!豪華3本立て!!!』/『キラキラ☆プリキュアアラモード パリッと! 想い出のミルフィーユ!』/『HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』
『プリキュアオールスターズDX/みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!』/『プリキュアオールスターズDX2/希望の光☆レインボージュエルを守れ!』/『プリキュアオールスターズDX3/未来にとどけ! 世界をつなぐ☆虹色の花』/『プリキュアオールスターズ New Stage/みらいのともだち』/『プリキュアオールスターズ New Stage2/こころのともだち』/『プリキュアオールスターズ New Stage3/永遠のともだち』/『プリキュアオールスターズ 春のカーニバル♪』/『プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪ 奇跡の魔法!』/『プリキュアドリームスターズ!』/『プリキュアスーパースターズ!』/『プリキュアミラクルユニバース』
『ポッピンQ』
『若おかみは小学生!』/『夜は短し歩けよ乙女』/『テッド』/『聲の形』/『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン 』/『カメラを止めるな!』/『UDON』/『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』
『E.T. 20周年アニバーサリー特別版』/『SUPER8/スーパーエイト』
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