依然として『鬼滅の刃』特需が続く映画館は、タイムテーブルが明らかにふだんと違ってます。相変わらず鬼滅の回数多いわ、可能な限り詰め込もうとしたせいなのか8時台から始まる映画が多いわ、そしてこの月末から月頭にかけては人出が多いのも予想されるので、この週末も出かけるかだいぶ迷いました……が、サボってるあいだにまた外したくないものが増えてきたのと、やっぱり間隔を長めに開けるとストレスが蓄積してくみたいなので、足を運ぶことに。
今週末封切り作品の大本命は、思うところあって平日にしたかったので、次の候補をチョイス……これもやっぱり8時50分と、ふだん8時前に起きてる私にはまあまあ厳しい時間割でしたが、いつもより早めに布団を出て、どうにか間に合わせました。自宅からいちばん近い映画館であるTOHOシネマズ上野だったし。
鑑賞したのは、塩田武士の小説を『麒麟の翼』などを手懸けた土井裕泰監督、小栗旬と星野源のダブル主演で映画化、80年代を代表する未解決事件にふたたびメスを入れた新聞記者と、その事件に幼い自分の“声”が使われていた事実を知った男性が、真相と対峙する社会派サスペンス『罪の声』(東宝配給)。
これは期待以上に良かった。モデルとなった事件は、当時子供だった私にも(むしろ、子供だからこそ)インパクトが強かった出来事でしたが、そこに巧みな脚色と整合性のある仮説を加え、その土台の上で実に重厚なドラマを展開していく。序盤は小栗演じる新聞記者と、星野演じる声を利用された男性が別々に事件を掘り下げていくのですが、関係者を順繰りに辿っていく、ドキュメンタリーのようでも正統派ハードボイルドのようでもある語り口から、次第に事件によって闇に落とされていったひとびとの姿が浮き彫りになっていく凄み。やがて別の“声”の主に辿り着いた星野が覚える罪悪感や、メディアに携わる者としての小栗の葛藤など、こういう事件であればこそ描きうるドラマをうまく盛り込んでいる。個人的にはクライマックス、事件に深く関わった人間と対峙するくだりで、こちらが長年感じていたことを直接突きつける小栗の気迫が痛快でした。極めて重い題材ながら、こうして描かれることこそが救いになるのだ、という信念と願いを籠めた結末が清々しく、非常に良質の社会派ミステリでした。ええもんを観た。
2時間半近い、やや長めの尺ですが、始まったのは8時50分だから、観終わってもまだお昼には早い。母がこのあいだ脚を痛めて、何度も出歩くのが億劫そうなので、ファストフードにて母の分も昼食を買って帰宅しました。
コメント
[…] 原作:塩田武士(講談社文庫・刊) / 監督:土井裕泰 / 脚本:野木亜紀子 / […]