今日なにを観に行くか今朝方まで決めかねてました。当初はあのリメイク逆輸入ものか主演が稲垣吾郎に見えて仕方ないアレのどちらかを観に行くつもりでいたのですが、他のいずれ観ておくつもりだった作品の舞台挨拶が珍しい劇場で行われると知って、無性に駆けつけたくなったのです。しかし整理券を配布するやり方だったらもう間に合わないような気がして、しかし場所が場所だけに舞台挨拶があると思われないだけにそんなに混み合わないのでは、という予感が入り乱れて判断がつかず、そろそろ家を出ねばならない時間が近づいたところで、兎に角いったん現地入りして、駄目だったら電車に乗り直して当初観るつもりだった作品に切り替えればいい、と腹を決めて出発。
問題の劇場は上野スタームービー。だいぶ数の少なくなった上野の劇場のなかでも、特に解りにくい立地条件にある。路地の奥で、しかも路地の入口と隣には成人向け映画専門の劇場があるという、お子様連れでは立ち寄りにくい場所にも拘わらず、不思議なことにたまーに『モンスターズ・インク』とかアニメ作品とかが掛かる、なかなか憎い劇場であります。かなり変わった場所柄ながら設備は悪くないので好きな劇場なのですが、他のよく行く劇場と作品が被ることも多くかなりご無沙汰してました。どのくらいかと思って調べてみたら……三年前に『千年女優』を観て以来でした。そんなに来てなかったか……。
到着したのは上映約五十分前。案の定並んではいましたが、両手で数えられる程度で、充分余裕で鑑賞できそう。十時の開場後、席でパンフレットに目を通したり本を読んだりして時間を潰していましたが、せいぜい六割程度の人の入りでした。やっぱり、盲点だった模様。
作品は、映画版『半落ち』で日本アカデミー賞を湧かせた佐々部清監督が『チルソクの夏』『四日間の奇蹟』に続いて出身地・下関を舞台に撮影した、日本映画の最盛期に劇場の幕間に歌や形態模写を披露していた“幕間芸人”の行方を追うドラマ『カーテンコール』(COMSTOCK・配給)。奇しくも先週の『ALWAYS 三丁目の夕日』同様に昭和三十年代の日本を描いていますが、手法も方向性も正反対です。観終わった時点では幾分首を傾げていたのですが、このあとの舞台挨拶や多少の考察を経ると、だいぶ印象が変わりました。方向は違えど、これもまた現代なりの優れた日本映画だと思います。詳しい感想は、「なんで井上尭之に『花の首飾り』を歌わせなかった?!」からどうぞ。
舞台挨拶は上映終了後に開始。予定表に明記されていたのは主役格の伊藤歩に、劇場の従業員として語り手代わりを務めた藤村志保、それに“幕間芸人”のその後を演じた井上尭之のお三方でしたが、更に現代編での劇場支配人役を務めた田村三郎も登場。日本テレビアナウンサーの司会でそれぞれに撮影中の想い出や作品への意気込みを語りましたが、何と言っても素晴らしかったのは井上尭之。「実は昔はこの曲、嫌いだったんです」と言いながら、作品に関わっていくうちに良さを理解したという、物語のテーマ曲的な扱いを受けている『いつでも夢を』を、「ご一緒に歌いましょう」と呼びかけたあと、アカペラでワンコーラス歌ってくれたのです。みんな遠慮しながらでしたが、歌い終わったあとの場内は何とも言えぬ暖かな空気に包まれていました。この場面に立ち会えただけでも今日来た甲斐があったというものです。
終了後、ゆっくり身支度を済ませて劇場を出てみると、出演者や関係者を乗せていると思しいバスが劇場前の路地に駐まっており、いましも出ようとしているところでした。しかしこの路地はほんとーに狭いうえ、出口の付近が地下駐車場の工事などのためにやたらと見通しが悪い。この初日、出演者はシネスイッチ銀座初回上映前→上野スタームービー初回上映後→新宿シネマミラノ初回上映後と都内の主要公開館を行脚しており、最後の舞台である新宿まで急がねばいけないところのはずなのに、なかなか出られず往生している様子でした。私も思わず、移動の邪魔にならないようにとしばし劇場前で車が動くのを待ってしまったり。
その後は劇場そばでちょっとだけ買い物を済ませて帰宅、母と昼食を摂りに出かけたあとはひたすらダラダラ。風邪のほうはどうやら八割方治ったようで、劇場にいるあいだはほとんど咳も出ず、鼻水もおさまってきました。来週の徹夜イベントまでには完治してるといいなあ。
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