いよいよ今月いっぱいで、銀座テアトルシネマが閉館となります。ここは映画道楽にハマった最初期から訪れ、記憶に残る作品を多くかけてくださったので、なるべく最後までお付き合いしたい……と思いつつも、昨年末から色々とバタバタしていてなかなか足を運べませんでした。最後の半月ほど、さよなら興行第2期と銘打って、以前にここでかけて評価の高かった作品を再上映する企画が告知されていたので、予めチケットを確保しておきました。早めに夕食を摂って、だいぶ日没が遅くなったとは言い条、さすがにもう暗くなった道を自転車で銀座へ。早めに行動したので、20時15分には到着。開映予定の40分まで充分余裕がある、とのんびりホールを眺める。
……なかなか開場しない。
通常、開映の10分前には開場し、客を入れ始めるものですが、なかなか扉が開かない。そのあいだにも本日の上映を観に来た客がやって来て、狭いロビーは移動もしづらくなっていく。
このあたりから私が苛立ってきたのは、35分ぐらいになれば、開場が遅れている旨のお詫びと、開映が遅れることについてのアナウンスがあってもいいはずなのに、何もないこと。別にアナウンスする暇がない、というわけではなく、もぎりを請け負う男性が、ずっと「開場までいましばらくロビーでお待ちください」と呼びかけ続けているのに、遅れていることにはまったく言及しない。
時計が38分を示したあたりで、さすがに苛立って、アナウンスのマイクを握る男性に、いったい何分開場で何分開映なのか、と訊ねました。が、明瞭な答がない。場内清掃とテスト上映に手間取って開場が遅れている、というのは聞けたのですが、で結局いつ開映なのかがはっきりしないまま、40分頃にようやく開場。その頃になってやっと、客が着席したら上映を始める、と言い出した。
さほど映画館に親しみのないひとならともかく、年がら年中通っていると、これがどれほど気の利かない振る舞いか、察していただけるのではないでしょうか。座ったら上映開始、と言われても、観客にだって準備はある。既に本来の開映時刻を過ぎて、大半の観客が詰めかけているなかで一気に着席する、というのも大変ですが、座ってからでも、たとえば携帯電話の電源を切ったり、ひとによっては目薬を点したり、と準備はある。一歩譲って着席を確認後すぐ上映、というのは許しても、そうする旨はちゃんとアナウンスしてくれなければ観客側だって判断に困ります。
そして、ひとがこういうことを訊ねようとしても、ちゃんと筋道立てて話せず、あまりの手際の悪さに責任者を呼ぼうとしても、支配人は閉館を控えた連日の勤務が続いたため既に帰宅していて、現在の責任者は上映に携わっていて席を離れられない。そういう事情は理解できます、が、だったらなおさら現場の人間が臨機応変にならないと困る。まして、開場の遅れを詫びて、上映開始のタイミングを告知する、なんて“臨機応変”などという表現を用いる以前の常識的な、そしてすごーく簡単な対処のはずなのに、そこに思い至る人間が現場にひとりもいない。
これが映画館での勤務に慣れていないスタッフばかりの、まだ開業間もない映画館ならともかく、もうじき営業を終了する、しかも27年も続いてきた劇場のさよなら興行での振る舞いですから納得いかない。普通のひとは「手際が悪いな〜」で済ませることでしょうし、せっかくの特別上映なんですから我慢して観るほうが良かったのでしょうが、最後の上映を飾ろうとするなら、もう少しストレスを減らすことを考慮してほしい。ミニシアターの古株であり、しかも多くのミニシアターを経営する東京テアトルにとって、重要な意味のある劇場なのですから。
もはや映画を観る気分でなくなってしまったので、きっちり文句を言わせてもらったあと、払い戻しを受けて帰宅しました――いつもなら、払い戻ししてもらった時点で腹に収めるのですが、もしかしたら最後の訪問となるかも知れない機会にやってくれたのがどうも我慢出来ず、吐きだすことにしました。些細なことだけど、タイミングゆえに些細とは言いたくないのです。
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