折原一氏が近年積極的に蒐集している画家・石田黙の作品を、一週間限定で一般公開するという話はだいぶ前から氏のホームページで拝見していて、楽しみにしていました。本当なら仕事の目処が立ってから行きたいところでしたが、後半になると混む恐れがありますし、どうせ行くなら早いうちのほうが良かろう、と覚悟を決めて夕方に出発。
やって来たのは銀座にある文藝春秋画廊、地下にあるザ・セラーという小さな展示室。十畳ぐらいの部屋で、脇にはバーカウンターが設えてある、ちょっと変わった作り。その四方と、隣接する小部屋に黒を基調とした絵が並んでいる様が実に圧巻です。
この石田黙の絵は折原氏の『被告A』、『チェーンレター』、『偽りの館』の装画に使用され、長篇『黙の部屋』や短篇『黙の家』で全面的に採り上げられているので、折原作品の読者なら目にする機会は多いのですが、実物を見るとやはり印象が違う。もっと暗いトーンなのかと思っていたら、照明をうまく加減しているせいもあるのでしょうが、意外と画面に光沢があって、陰気なモチーフながらも不思議と鬱とは感じない。また、印刷では伝わらない、油彩ならではの立体的な塗り方や、細かな描き込み、そして統一されたモチーフの不思議さ等々、一挙に陳列されているからこそ解る部分も多い。これは無理をして足を運んだ甲斐がありました。
ちゃんと先日購入した『疑惑』を持ってきていたので、折原氏にサインを頂戴し、アンケートにもきちんと記入してから離脱。会期中にもう一回ぐらい来られるようなら覗いてみようかしら。余談ですが、私は『被告A』で初めて石田黙という名前とその絵を見たとき、折原氏の変名では、と疑いました。未だに5%ぐらい疑ってます。と、アンケートに書いてきました。
その後、近くの書店でだらだらと時間を潰してから、地下鉄で六本木に移動。更に30分ほど軽い腹拵えをしたりして暇を埋めたのち、シネマート六本木にて映画を鑑賞。先日冗談で軽く触れたパン兄弟の最新作が先週土曜日から劇場公開されており、いちおう日本公開された作品をほとんどフォローしている身としては観ておかねばなるまい、と、石田黙展と同時に観に行くことはこのあいだから心に決めていたのです。『the EYE』のアンジェリカ・リーをふたたび主演に迎えた、ちょっと幻想物語的なアプローチを施したホラー『リサイクル−死界−』(UIP Japan・配給)。しかしやたら宣伝規模が小さいな、と思っていたら、プログラム制作してないし、そもそも観客が私を含めて片手の指にも余ったような……。
肝心の出来のほうは、序盤は異常なくらい正統派の心霊ホラーに見えたものが途中から明後日に進み、しかし伏線は見え見えなので話としては微妙、けれど狂ったヴィジュアル・センスは見応えがあるからまあいいかな、という感想だったのですが――ラストで度胆を抜かれました。いや、確かにそういう結末を予見させる描写はあって、見抜けても良かったのですが、あの流れ、あのタイミング、そしてそれ以上語ることなくきっちり落とした潔さは秀逸。あとになって細部を再検証するほどに、駄目な部分もあるからこそ却って評価が高まってます。同意を得られるとは思いませんが、個人的には好きな仕上がり。詳しい感想は後日――今週いつ書けるか解りませんけどー。
さて、サボったぶんこれから少しでも取り戻さねば。
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