春先に負傷して以来、目の調子が今ひとつ良くない、という理由で映画館に行くのを敬遠していた母が、そろそろ行く気になったようなので、一緒に出かけてきました。
その場合、かかっているならだいたい選ぶのはTOHOシネマズ上野です。この辺は親子共々地理には明るいし、駅から映画館までも特に近い部類になる。私らにはいちばん楽なのです。
鑑賞したのは、田村由美の人気コミックを菅田将暉主演で製作されたドラマの初となる劇場版、原作でも最大のエピソードである《広島編》をもとに、奇妙な遺産相続争いが大きな謎の解明へと繋がっていく『ミステリと言う勿れ』(東宝配給)。
実はこれ、連ドラ版は第1話からしっかり観てたのです。原作はタイトルと、ざっくりとした方向性だけ知ってる、という状態だったのですが、放送していたフジテレビ月曜9時の枠、確かこの前が『ラジエーションハウス』で、なぁんとなくチャンネルを合わせる習慣になってたため、そのまんま点けてたのです。結果としてまんまとハマってしまい、最終回までしっかりと楽しんでしまった。母も同様なので、母の久々の映画鑑賞にこれを選んだ次第。同日封切のポアロもいいんでないかな、と思ってたんですが、字幕がないほうが楽。
そして期待に違わぬ面白さ。舞台が異なるため、お馴染みの所轄の刑事達がオマケ程度にしか登場しないのは残念ですが、作品の軸である主人公・久能整の飄々としてとぼけた魅力は健在。日帰りで訪ねるだけのつもりだった広島でガッツリ騒動に巻き込まれ、困惑しながらも透徹した観察力と止まらないお喋りで謎も心のあやも解きほぐしていく快さがいい。
このエピソードにはきちんと原作にもあるようですが、映画として採り上げたのが納得のいくスケール感と、映画ファン、とりわけミステリ系が好きなひとの心を擽る作りになってる。もうあからさますぎるほどに『犬神家の一族』を想起させる遺言公開のシーンから、相続候補者に与えられた謎解き、そして彼らに起こる不穏な出来事。細かい謎解き、発見をいちいち整くんがフォローし、まさにミステリの醍醐味たっぷりに展開していきます。このタイトルなのに。
そして謎の大きさ、業の深さも映画ならではのスケール感がある。あまりにも過剰なので、現実としては無理があるんですが、フィクションだからこそこのくらい極端でもいい。しかも、シリーズキャラがもともと少なく、本篇のみで物語として成り立っているので、これが初見でも問題なく入り込める。単品で観ても良質のミステリ映画だと思います。
鑑賞後は、あれこれ考えるのも面倒なので、駅近くのケンタッキーフライドチキンでテイクアウトを購入していくことに。最近、どの店もしばらく来ないとシステムが一変していて、ここもレジはセルフ、発行された番号が呼ばれたら受け渡し口に行く、という仕組み。おととい訪れた新宿ピカデリーのコンセッションもほぼ同様の仕組みでしたが、正直なところ、メニューが多くオプションの選択肢が多い店には向いてない気がします。客が操作に慣れているか否かで列の進みが段違いになるし、列が伸びても従業員の目が行き届かず、所定の待機場所から客がはみ出しがちで、いささか雑然とした印象でした。加えて客も多く、支払の手続が済んだ時点で10組近く先客がいて、受け取るまでちょっと時間がかかってしまった……結果、昼食時に受け取れたので、ちょうどよかったのではあるが。
ところで今回足を運んだTOHOシネマズ上野、立地的にはもっと頻繁に立ち寄るようになる、と思っていたし、実際はじめはそうだったのですが、今年は足が遠のきがちです。今回でようやく5回目。
で、改めて記録を確認してみて、ちょっと変なことに気づいてしまった。
今年、上野ではスクリーン3しか観てない。
理由はなんとなく察しがつく。上野から足が遠のいていたのは、スケジュールがうまく噛み合わないこともあるのですが、言い換えると、訪れやすい時間に枠が取られている作品を選びがちなのです。上野ではスクリーン3がキャパでは最大のため、注目度の高い作品、上映規模の大きい作品は当初、まずスクリーン3に入る可能性が高い。今年、私がここで観たのはまさにそんな作品ばかりなので、必然的にスクリーン3ばかりになったわけです。
……まあ、別におんなじスクリーンばかりだからって、特に問題はないんですが。ようはそのくらい、今年は私の観たいものと噛み合ってない、という証明なのです。
コメント