普段は出かけない日曜日。しかし今日は、定期的な検査の1つを実施するべく、通っているクリニックの別院に向かった。
馴染みはある路線だけど、普段は向かわない方向の電車に乗る。乗客は少なく、座席に余裕があったので、距離は短いけど座ることにした。
せっかくなので、リュックの中から、持ってきた文庫本を取り出し、読み進めることにした。創元推理文庫のジョン・ディクスン・カー『悪魔のひじの家』。今まで他社でハードカバーとして刊行されたもの゛が文庫化されたので、優先的に読む……つもりでいたけど、作業や何やかやで進まなかったのです。いざ手をつけたものの停滞していたので、短時間でもページを繰りたい。
取り出したとき、何気なく正面を見ると、向かいに座る男性も紙の本を読んでいる。それが何か気づいて、ハッとなった。
小口や天地が黄色に塗られた特徴的な製本の、ハヤカワポケットミステリ。表紙に見える文字は、リチャード・オスマン『木曜殺人クラブ』。
見回しても、車内ではスマホを眺める乗客ばかりで、私とその男性以外に紙の本を読んでいる人はいない。その限られた人間が、国内翻訳ミステリの双頭とも呼べる出版社の書籍、しかも黄金時代に属する作家と、そのフォロワーの作家を呼んでる。
私は現在進行形で読んでいる本には、布製の汎用カバーをかけている。いっそのことこれを外して、向かいの乗客にもこの共犯者めいた感覚を味わってもらおうか、とも思いましたが、あまりにもわざとらしいし、気づかれないと独り相撲の感覚が強まる。
ゆえに、ここでこっそりネタにしたわけです。今度、『木曜殺人クラブ』買ってこようかな……。
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