『嘘解きレトリック 第1話』

 珍しく、不安を抱きながらも楽しみにしていた月9ドラマです。何せ、原作の読者で、出来たらアニメにならんかな、とは思ってました。まさか実写ドラマが来るとは思ってませんでしたが、まあ観ないわけにはいかないでしょう。
 ……すげえ、ほぼ原作通りだ。
 漫画にせよ小説にせよ、ドラマ化されると大抵どこかしら設定がいじられてしまう。人物関係、キャラクターの性別、挙句は国籍まで変わってしまう場合もある。こちらも多少は覚悟して観始めたんですが、びっくりするくらい、原作を丁寧に実写再現している。
 特に感心したのは美術です。私がこの作品を映像化するならアニメだろう、と考えていたのは、昭和初期の時代設定通りのセットを組むのが一苦労だろう、と思ったからなんですが、これをかなり丁寧に再現している。だいぶ圧縮はされてますけど、探偵事務所にお食事処、さらにはオリジナルの地元名物《つくもやき》の屋台も、原作のヴィジュアルを可能な限り再現している。何なら私はこの辺、感動しながら観てました。
 ストーリー展開も完璧な原作準拠。プロローグ部分、鹿乃子の過去の描写がやや省略はされてますし、ここでちょっとはっきりと描きすぎかな、という印象はありましたが、メインの舞台である九十九夜町が登場してからの展開はもう原作そのまんま台本にしました、に等しい。もちろん、生身の人間が台詞とする上で細かい調整は入ってますが、原作読者として不平を言っちゃバチが当たるくらいに、原作に対して真摯で誠実な作り。
 だから、原作の持つ人間ドラマとしての良さ、ミステリとしての巧みさもちゃんと再現されてる。細かな伏線、それを回収することで明白になっていく、貧乏だけど確かに“名探偵”な祝左右馬の才能、それが解き明かす事件の驚き。何せ思い入れがあるもんで、流れはほとんど把握してますから、この部分では私はもはや冷静に批評するのは無理なんですけど、この特殊なキャラクター設定を絶妙に活かしたミステリとなってる、と思う。
 最も原作と違っていた点は、次回への引きとなるエピローグ、なんですが、採り上げられるエピソードは味のあるサブキャラとなるお嬢様初登場のくだりなので、あえて前倒しにしたのは脚色として十二分にあり。原作読者としては今のところ、安心して計測視聴できそうです。個人的に偏愛する、原作3巻まるまる1冊使った長篇エピソード《人形殺人事件》はどこまで再現してくれるのかどうか。鹿乃子や左右馬の過去に関わるエピソードを重視しちゃうと、飛ばされる可能性があるので、そこはまだ心配してはいる。

 ……にしても、ここまで見事に原作を再現したのは、やっぱりあの件が関係しているのだろうか。私としては素直に、原作の魅力に理解を示したからこその仕上がり、と信じたいところですが。原作やその作り手に不誠実なメディア化はあってはならない、と思う一方で、認められるところでは自由に解釈するのもまた創作性だ、と考えているので、不承不承の“原作通り”ではないことを願いたいのです。
 少なくとも、本篇の出来映えにはちゃんと原作への敬意、愛情が籠もっていた、と今のところは思えるので、とりあえずは考えないことにする。

嘘解きレトリック - フジテレビ
嘘解きレトリック - オフィシャルサイト。毎週月曜よる9時放送。鈴鹿央士、松本穂香

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