福井県立図書館『100万回死んだねこ 覚え間違いタイトル集』

福井県立図書館『100万回死んだねこ 覚え間違いタイトル集』(Amazon.co.jp商品ページにリンク) 『100万回死んだねこ 覚え間違いタイトル集』
福井県立図書館
判型:文庫判
レーベル:講談社文庫
版元:講談社
発行:2024年10月16日
isbn:9784065369630
価格:825円
商品ページ:[amazon楽天BOOK☆WALKER(電子書籍)]
2025年1月4日読了

 図書館に本を探しに来る人たちは、みんながみんなタイトルを正確に覚えている訳ではない。福井図書館のレファレンスサービスが、今後の業務の補助とするべく収集していた問い合わせ内容から、ちょっと笑いを誘う覚え間違いや、絶妙な誤解の混ざったものなど、印象深いものを紹介した書籍の文庫化。
 詳しいことはだいたい本書の中に記されているが、もともとはあまり世間に知られていない図書館のレファレンスサービスの業務内容を周知するべく、長年に亘って蓄積したデータからインパクトのある問い合わせをWebで紹介したのが始まりだという。人気コンテンツとなった結果、書籍として纏められるに至ったわけだ。
 だからこの書籍の本懐は実のところ、《はじめに》と《おわりに》、そしてタイトル集のあとに添えられた、文庫版で20ページ近い《そもそもレファレンスって? 司書の仕事って?》という文章そのものだろう。誰しも正確な知識を持って図書館へ赴くわけではないし、蔵書を管理する司書、利用者を手助けするレファレンスサービスは必須のものだが、その必要性を部外者が知る機会は少ない。笑いを誘う覚え間違いタイトル集、という看板は、それこそ書籍にきちんと関心を持っている読者に、司書やレファレンスサービスの業務とその意義を知り、関心を持ってもらうための餌だ。
 何となく悪し様に受け取れる表現をしてしまったが、もちろんその意義はあると思うし、充分に役目を果たしている。実際、これだけたくさんの記憶違い、取り違えを起こしている利用者が、正しく目的の本に辿り着くのを手助けするためには、そうした手違いを記録しておくのが確実だ。そんな中から拾い集められた、微笑ましい覚え間違いの数々は、読者をニヤリとさせつつ、同様の誤解を減らす役に立つ。
 ……と書いてみたものの、記憶間違いを減らす、という点では、本書は逆効果かも知れない。そもそも本書のタイトル自体、好評を博したことが災いして、元ネタとなった『100万回生きたねこ』と混同する弊害を既に招いている。何より、絶妙すぎる誤解の数々は、読者の頭の片隅に残る。記憶力の高い人であったり、各々の作品に愛着の強いひとならともかく、本書の記憶があるせいで同様の間違いを犯すひとが出てきてしまうこともあるのではなかろうか。
 まあ、それはそれで一興だと思う。自分が恥ずかしい思いをしても、誰かが面白がってくれるかも知れないし、もしかしたら、本書の中身を知っているひとは、同好の士が現れたことを喜んでくれるかも知れない。


コメント

タイトルとURLをコピーしました