まだ色々と落ち着かない状況で、映画鑑賞はおおむね後回しになっております。しかしそれでも、午前十時の映画祭15だけは押さえねばならない。ここまで続けてコンプリートをしてきたのですから、向こうがやめるか、こちらが出かけられなくなるまでフォローを続けるのです。
目的地はいつもどおりのTOHOシネマズ日本橋、鑑賞したのは、“サイコ・サスペンス”というジャンルを映画界に定着させた伝説の傑作、FBIの新人捜査官が独房の天才犯罪者の知恵を借りて、猟奇連続殺人の犯人を追う『羊たちの沈黙』(Warner Bros.初公開時配給)。
私にとっても極めて重要な1本で、当然ほぼほぼ展開は覚えてます――ただ、冒頭だけは毎回、どんな感じだったっけ? と首を傾げてしまう。要するに、他のシーンがほとんど強烈なインパクトを備えている一方、クラリスが行動科学課の主任クロフォードに呼び出され、学生にして臨時の捜査官に任命され、ハンニバル・レクター博士の聴取に赴くこのくだりがいちばん地味だからでしょう。いきなりレクターの存在感凄いし。
そして、何回も観て、内容を知っていようと、目の離せないインパクトとストーリーテリングの巧さにただただ魅せられてしまいます。思わせぶりなレクターの、彼の論理の中では筋の通った行動と、未熟でいささか気負いがちながらも、レクターに対しても果敢に臨み、物語を動かししていくクラリスのキャラクター性。並行して進む、連続殺人犯の新たな犯行が、終盤に至って絶妙な構成により優れたサスペンスに昇華する。
本篇のあと、世界中で様々なフォロワーが生まれていますが、ほとんどのものは未だ、本篇に及ぶことも出来ていない。エポックメイキングにして、揺るぎない高峰です――個人的に、『セブン』だけはこのラインを踏まえながら突き抜けることに成功した、と思ってますが、あれはあれで“禁じ手”とも言えるからねえ。
鑑賞後は例によって例のごとく日本橋ふくしま館へ。今日、イートインに出店しているのは、最近は老麺まるやに並ぶお気に入りである坂新です。ここが来てるときも、なるべく合わせて日本橋を訪れるようにしてます。
注文したのは、これも私のお気に入りである肉そば。脂身のバランスが絶妙なチャーシューがいっぱい楽しめる幸せ。
……それにしても、ふくしま館の店内を眺めると、やっぱり先月末からの激変を思わずにいられません。メンバー全員のものだけでなく、個別に分かれた素材もあったお陰で、リーダーと松岡のポスターはきちんと飾られていたけれど、当然、あの人の姿はない。
TOHOシネマズ日本橋、スクリーン3入口脇に掲示された『羊たちの沈黙』午前十時の映画祭15上映当時の紹介記事と上映時間案内。
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