9月4日に、2021年11月リリースの『心霊曼邪羅32』を鑑賞。寺社巡りをしていたカップルを襲う怪異を記録した《消えた婚約者》、古い庭園内を散策する際の映像に不気味なものが紛れ込む《業禍の名残》、ある占い師とかつての相談者の面談を隠し撮りした映像が、スタッフの記憶に残る過去の出来事と結びつく《逆怨み》など、全7篇を収録。
どうやら継続的な“悪役”が登場したようです。関係のない投稿で、不審な行動をする人物が、実は30巻に登場して、スタッフに対して悪意のある行動をしていた人物と同じだった、という展開があり、スタッフはふたたびこの人物と対峙する、という展開。オカルト・スリラーみたいな趣が出てきて、そういう意味ではちょっと見応えが生まれて来た。
……が、どうもリアリティが乏しんだよなー。
問題の人物がスタッフに打ち明けた動機が身勝手なのはまあいい――良くないけど、こういう作品で悪役として現れるのは大抵そんな感じなので、別にどうでもいい。問題はむしろ、このエピソードの関係者や、行動を理解するために呼び出した専門家の言動が不自然なことです。
まず、《逆怨み》の映像を投稿した人物の態度がどうもしっくり来ない。経緯を考えると、もう少し深黒さや心痛が垣間見えていいと思うのに、まるでたまたま通りかかって目撃した事故についてメディアに嬉々として語る野次馬みたいな振る舞いなのです。映像の中で、当事者として登場し、ある人物を気遣っていた様子なのに、スタッフに取材を受けている場面ではそれがほとんど感じられないのです。内容的に、面白半分に投稿するものではないし、立場的にわざわざ投稿するなら狙いがありそうなものなのに、言及もないのも気になります。だいたいこの人、家族が警察官、と言っているくらいなのに、よくこんな行動としてグレーな投稿をやるものだと思う。
もっと引っかかるのが、随所に登場する“呪い返し”という表現です。普通、その字面通り、仕掛けられた呪いを相手に跳ね返す、という、オカルトの概念なんですが、本篇の“悪役”が言う“呪い返し”には、そもそも始まりの“呪い”がない。虚ろな呪いを返してどんな効果があるのか? と、オカルト思考のうえでもしっくり来ない。加えて、この作品の登場人物の誰ひとりとして、“のろい”と“まじない”が本質的には同一(漢字も同じ“呪い”です)、という、それこそオカルトでは常識の範疇にあることを知らずに喋っているのがあまりにもお粗末。
後編で本人を探し出し、直接対峙した女性スタッフが「警察に突き出しましょう」と言い出すのも、“呪いによる犯行”を警察でどのように納得させるのか? という、わりとオカルトでは初等レベルの疑問を一顧だにしていない幼稚さ。こんなんで、本当にヤバい奴を相手には出来ない――というか、そもそも今後、戦いとして見応えがあるものになる気がしません。この巻のリリースは5年前、この間にこの“悪役”は再登場して、何らかの決着がついているのかも知れませんが、あんましそこには期待が持てません。むしろ、もう掘り下げない方がいいかも、と断念してたほうがマシかも。
単発ものについてはそんなに言うことはない……っていうか、そもそも変なことが起きているだけ、という映像なら、これ合成だなー、とか、せめて消える前後まで捉えてくれてたらなー、くらいしかない。稚拙だな、とは思うけれど、不気味ならそれでいい、とも言える。
ただ冒頭の《消えた婚約者》はやっぱりちょっと良くない。これは取材パートがあり、掘り下げているのですが、こっちも投稿者や、いちばん直接的な関係者の行動がどうも違和感がある。
たとえば、投稿者は映像に映る男性の妹、ということですが、だとすれば映っている男性の婚約者だった、という女性についても交流はあった可能性が高い。たとえ親しくなくても接点はあったはずで、そんな人をスタッフの前で“婚約者”という表現にするだろうか。そして、不幸な顛末に終わったこの映像を、何故わざわざこのシリーズに投稿したのか、も謎。教えられて、と言うけれど、似たようなシリーズが数多あるのに、誰かが推薦してくれるほど大したこと出来てないぞ。
あと、のちに取材に応えた、映像に登場する男性が、既に別の人と結婚している、というのにもモヤッとしています。そういうことがないとは言わないし、忘れたい出来事を振り切って新たな人生を歩きだす、という考え方もあるでしょう。ただこの作品、リリースが2021年。映像の中に登場する男性と婚約者は揃ってマスクをしているところから、恐らくコロナ禍の出来事、という設定だと思われますが――行方不明になって1年足らずで、消えた婚約者を忘れて、別の人と結婚する、ってそんな簡単に割り切れます? なんなら、はじめから乗り気ではなかった、という印象すら出ちゃってますよ? 実際、そういう人だった、という設定にして撮っていたとしても、その印象をそのまんま残してしまうスタッフの姿勢に疑問符がつく。
……簡単にしておこうと思ったのに、無駄に長くなってしまった。映画感想もそうですが、ツッコみどころが多いもののほうが感想は長くなってしまいます。発表ペースの速さや、ちょっとずつだけど見応えのあるものにしようとアップデートをしているらしいことは評価出来るけど、まだまだすぎる。
かけられてない“呪い”って返せるの?[レンタルDVD鑑賞日記その961]
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