『ブレイド(1998)』


『ブレイド(1998・字幕)』Amazon Prime Video版。

原題:“Blade” / 原作:マーヴ・ウォルフマン、ジーン・コラン / 監督:スティーブン・ノリントン / 脚本:デヴィッド・S・ゴイヤー / 製作:ロバート・エンゲルマン、ピーター・フランクフルト、ウェズリー・スナイプス / 製作総指揮:アヴィ・アラド、ジョセフ・カラマリ、マイケル・デ・ルカ、リン・ハリス、スタン・リー / 撮影監督:テオ・デ・ヴァン・サンテ / プロダクション・デザイナー:カーク・M・ペトルッチェリ / 編集:ポール・ルベル / 衣装:サーニャ・ミコルヴィック・ヘイズ / キャスティング:レイチェル・エイブロムズ、ジョン・ウェイツ / 音楽:マーク・アイシャム / 出演:ウェズリー・スナイプス、スティーブン・ドーフ、クリス・クリストファーソン、ウンブッシュ・ライト、ドナル・ローグ、ウド・キアー、アーリー・ジョヴァー、トレイシー・ローズ、ケヴィン・パトリック・ウォールズ、ティム・ギニー / アメン・ラー・フィルムズ製作 / 初公開時配給:日本ヘラルド / 映像ソフト発売元:Warner Bros. Home Entertainment
1998年アメリカ作品 / 上映時間:2時間 / 日本語字幕:? / PG12
1999年5月22日日本公開
2012年12月19日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD VideoBlu-ray DiscAmazon Prime Video]
Amazon Prime Videoにて初見(2021/3/9)


[粗筋]
 世界の闇から人間社会に影響を及ぼし、密かに人間達を捕食する種・吸血鬼。しかし彼らには、天敵と呼ぶべき存在がある。
 病理学者であるカレン・ジェイソン(ウンブッシュ・ライト)は、勤務先の病院に担ぎ込まれた遺体の血液に異常を見つける。普通の人間には決してあり得ない成分に関心を持ったカレンは、同僚で元恋人のカーティス(ティム・ギニー)に頼んで遺体を検分した。だがその途中、全身丸焼けになっていたはずの男が蘇り、カーティスに食らいついた。逃げ出したカレンも、喉に噛みつかれてしまう。
 そこへ、武装した黒人の男が現れ、蘇った屍体と闘い始めた。やがて屍体は逃げていったが、黒人の男もまた警察による激しい攻撃を受ける。黒人の男は、瀕死の状態となったカレンを抱えて、病院を脱出した。
 自動車工場のような場所に連れこまれたカレンは、ウィスラー(クリス・クリストファーソン)という壮年の男によって注射を打たれた。彼らが言うには、カレンは吸血鬼に襲われたのだ、という。ウィスラーが打った血清が利かなければ、3日後にはカレンは吸血鬼へと変貌してしまう。
 カレンを救った男の名は、ブレイド(ウェズリー・スナイプス)。彼の母親は、彼を身籠もっているときに吸血鬼によって襲われた。ブレイドは医師達によって取り上げられたが、彼の遺伝子は変容し、吸血鬼と同様の身体能力と回復力を備えながら、吸血鬼にとっての弱点である日光や銀、ニンニクの成分を浴びても耐えられる肉体となって生まれた。長じてブレイドは、吸血鬼に妻子を奪われたウィスラーに救われ、ウィスラーの開発する武器を駆使して吸血鬼を狩るヴァンパイアハンターとなったのだ。
 恐らく吸血鬼たちは、ブレイドが連れ去ったカレンに目をつける。ブレイドはしばらく街から離れるようカレンに諭して彼女を解放した。
 このときはまだ、カレンは知らなかった――彼女はとうに、吸血鬼と《ヴァンパイアハンター》ブレイドの闘いに巻き込まれていたことに。


『ブレイド(1998)』予告篇映像より引用。
『ブレイド(1998)』予告篇映像より引用。


[感想]
 本篇の発表は1998年。“映像革命”と呼ばれた『マトリックス』はまだ世に出ておらず、『バイオハザード』や『アンダーワールド(2003)』も、或いは企画の準備は進んでいたかも知れないが、明確なかたちを為していなかった。そしてアメコミ原作の映画においても、ブレイクスルーとなった『X-MEN』、『スパイダーマン』も完成していない。
 その後陸続と同系統の作品が発表され成功に至った背景には、そうした作品が望まれ、実現可能な環境が整った、ということもあるのだろうが、結果的に、とはいえ本篇が先駆的な1篇になったことは間違いなさそうだ。
 往時のアクション大作に似た大味さも留めているものの、本篇のアクション描写には一種の美学めいたものがちらつき、スタイリッシュだ。洋剣ではなく、日本刀に似たブレイドの得物に合わせたかのように、どこか歌舞伎の見得めいた所作を挿入したアクションは、パワーも感じさせるが映像的に鮮やかで見応えがある。
 恐らく本篇を際立った作品に感じさせるのは、意識して常識の裏を突いた選択をしたり、不似合いなアイテムを洗濯した点にある、と思う。たとえば、今でこそそこまで凝り固まったイメージで捉えられることも減ったが、かつては吸血鬼といえば白人だった。そもそもヨーロッパの君主にまつわるエピソードを土台にしているため致し方のないところだが、そういう約束があればこそ、黒人にして吸血鬼の特性を持ったヴァンパイアハンター、という設定が優れた着眼となっている。しかも、そんな彼が妖刀ではなく日本刀に近いデザインの刀を携え、自らのアジトには神棚と思しい祭壇を置いている。吸血鬼たちが秘密のクラブにこぞってパーティを繰り広げていたり、銀や紫外線を用いた様々な武器など、設定を踏まえての漫画的な発想の飛躍、ユニークなアイテムも事欠かない。
 そうしたひとつひとつの要素を抜き出せば風変わりで突飛に映るが、本篇は設定や人物描写に芯を通しているので、統一感が生まれ、見事に独自の世界を構築している。鑑賞した当時は斬新でスタイリッシュを窮めていたように映った『アンダーワールド』も、こうして見ると、本質的には本篇の追随であり、本篇なくしては作られなかったのかも知れない――そのくらい本篇は、ヴァンパイアというテーマを巧みにバージョンアップさせた印象だった。
 警察の動きをはじめ、一部に見られる非合理性や、ブレイドと対峙する吸血鬼の組織があまりにも軽率に映る点など、往年のハリウッド大作にしばしば覗く粗さもあるが、洗練されたヴィジュアルや、ダーティな側面を持つストーリー展開に、その後のハリウッド産アクション大作、とりわけアメコミを原作とする映画の潮流に繋がっていく要素を一歩先取りした、里程標として評価すべき作品だろう。なにせ、本篇の主題やトーンに、本来の出自であるマーヴェルのみならず、クリストファー・ノーラン監督による《ダークナイト・トリロジー》で示されたDCのダーク路線の萌芽さえ見てとれるのだから侮れない。


関連作品:
リーグ・オブ・レジェンド 時空を超えた戦い
ザ・ファン』/『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』/『スティール』/『PLANET OF THE APES/猿の惑星』/『ザ・エージェント』/『ドッグヴィル』/『クローン』/
エイリアン2 完全版』/『マトリックス』/『スパイダーマン』/『バイオハザード』/『バットマン・ビギンズ』/『スーサイド・スクワッド
アンダーワールド(2003)』/『ツインズ・エフェクト』/『トワイライト~初恋~』/『30デイズ・ナイト』/『ぼくのエリ 200歳の少女』/『デイブレイカー』/『ブラッディ・パーティ』/『リンカーン/秘密の書』/『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』/『ヘルボーイ(2019)

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