親子が他人のふりして一緒に車に乗ってる。

 今週末にも新作映画の封切りが相次ぎ、ようやく作品数は揃ってきた感じ。とはいえ、劇場との比ではまだ十分でないのか、本来予定していなかった新作をかけてるところも多く、どこも似たようなラインナップになってしまってることも否めない。なので現在、映画を観に行くときは、「どこの映画館を訪れるか」を基準にしてしまってます。
 ただし、今日はわりと選択の余地はなかった。先週鑑賞した『男はつらいよ』が思ってた以上に私のツボだったので、コロナ禍を乗り切るべく企画されている特集上映に乗じて、何作か観ておこう、という気になっていた。上映予定で作品を確認し、“男はつらいよ”公式サイトで内容を調べて、気になるものを鑑賞しておくことに。今回は、特集の中で第1作とともに採り上げられたもので、今日いっぱいで最寄りの劇場では終わってしまうため、もう迷ってる余裕はない。また上映時間の都合がいいのも、TOHOシネマズ錦糸町 楽天地だけだったので、スケジュールを考えている段階でもうきょう足を運ぶことは確定してました。
 錦糸町は、個人的には安価で楽なルートがひとつある。ただ、やや時間がかかるのが玉に瑕。今朝も今朝とて、ちょっとゆとりがあるから『Fit Boxing』ちゃんとこなしていこう――と始めたら、やや出るのが遅れてしまって、いつもの移動手段ではギリギリの時間になっていた。
 ただ今回は前夜から、「バイクで行くのもいいんじゃないか?」と考え、予め駐車場の所在も調べてあった。楽天地ではないですが、オリナス地下の駐車場が使いやすそうだったので、そちらを目指して出発――不安は、果たして天気予報通りに夕方まで保ってくれるか、でしたが、もう最悪濡れるのは覚悟で。
 途中でマスクを持って行くのを忘れたのに気づき、駐車場から映画館までの道中でコンビニに立ち寄るも見つからず、もし入場を断られたら大人しく帰る、という覚悟まで決める羽目になりましたが、有り難いことに劇場からマスクを提供してもらったので、無事に鑑賞することが出来ました……心苦しいから、今度からは鞄に使い捨てを1枚くらい仕込んでおくことにしよう。
 鑑賞したのは1976年発表の“寅さん”シリーズ第17作、偶然知り合った日本画との交流を中心に描いた『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』(松竹配給)
 こちらもしっかりツボに入りました。このテンポと空気感がいいなあ。既に17作目、私も知識として持っていたシリーズのベースは出来ていて、安定感がただ事ではない。寅さんはそのまんまですが、受け止める方がそれにけっこう慣れている、というのも大きい気がします。この、あるべき場所にある、という感覚こそこのシリーズの幹なのかも知れません。
 今回のマドンナは太地喜和子、ですがストーリーの軸は序盤で知り合う日本画の大家を演じた宇野重吉。最初はほんとに無一文の孤独な老人風なのに、場面で佇まいが一変する重厚さもさりながら、老人の地位をちゃっかり利用しようとする小狡さを見せつつも、基本的な態度を変えない寅さんの“公平さ”が非常に印象的。今回、旅に出る先は兵庫県たつの市だけなんですが、古い家並みの佇まいも美しく、ヴィジュアル的な味わいも深い。
 ひとつ驚いたのは、マドンナの立ち位置です。この展開、私の知ってる定番とはちょっと違ってるんですが、これは意識的な破調だったんでしょうか。人柄的にも寅さんと異常なくらいウマが合っていて、普通ならここでハッピーエンドになっても良さそうなものですが、しかしシリーズはこのあとまだ33作、渥美清の生前に限っても30本続くのでした。
 なお、この作品には宇野重吉の息子である寺尾聰も出演してます。何の血縁関係もない、龍野の役所の人間として、しれっと同じ車に乗ってて、その事実に思わず笑ってしまうのでした。

 鑑賞後は、これまで3回ほど訪ねたことのある双麺というお店で昼食。
 既に13時も半ばを回っていたせいか、入店したとき他に客の姿はなかった。お店には申し訳ないけど気兼ねなく食べられるな、と思ってたら、直後に年配の男性がやって来た。
 このお店は先に食券を購入するスタイルなのですが、この方、すぐにカウンターについて、「ビールある?」と店員に訊ねている。あります、食券を購入してください、と店員が促すと、「買い方が解らないからイヤ」と返す。たぶん他に客が私しかいなかったから、というのもあるのでしょう、店員は食後の精算を受け入れてしまった。
 そのあともこの方、居酒屋よろしく「生で」と言い張るし、メニューにない“冷たいラーメン”を注文して店員を困らせてるし。途中で気に食わない、と怒り出すんじゃないか、とかしれっとした顔で食い逃げするんじゃないか、とヒヤヒヤしながら眺めてたんですが、最終的には食事をきっちり済ませ、お金も支払って帰って行きました。どうするのか、と思ってたら、店員さんが受け取ったお金で自ら食券を購入して済ませてた。
 ……別に、最後まで観察するために居残ってたわけではありません。私は健啖家からはほど遠いけれど、出てきた料理は可能な限り食べきらないと気が済まないたちなのです。ひとのこと気にしながら食事していたせいで、余計に遅くなってしまったのよ。
 食事のあと、バイクにて帰宅。ちなみに、今回の駐車料金は50円でした。安っ。私が映画鑑賞の際に利用してる駐車場の中でも飛び抜けて安っ。錦糸町の劇場、もうちょっとこまめに利用しようかしら。

コメント

  1. […] 原作&監督:山田洋次 / 脚本:山田洋次、朝間義隆 /  […]

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