この上なく不運で、理不尽で、それでもハッピーな映画。

 ようやく空模様が落ち着いてきました。長距離輸送はまだ混乱してそうですが、都内を、それもバイクで移動する分には問題ない。というわけで、1週間ぶりの映画鑑賞に出かけてきました。
 そろそろど・みそで食べたくなってきた頃合いなので、劇場は当然のようにユナイテッド・シネマ豊洲……実は有楽町でも日本橋でも、ちょっと多めに歩く余裕があれば、京橋の本店に着くのが解ったので、必ずしも豊洲でなくてもいいのですが、使い慣れてますし、何より目と鼻の先なので、やっぱし格段に利用しやすいのです。バイクにも乗りたかったし。
 鑑賞したのは、グレタ・カーウィグ監督がマーゴット・ロビーを主演に招き、長年愛されるドールをモチーフにして描いたファンタジー、完璧で不変の暮らしに起きた異変に対処すべく、ドールたちが境界を越えて現実世界にやって来るバービー(2023・字幕)』(Warner Bros.配給)
 ……なんで観るつもりになったか、って? そりゃあ、『レディ・バード』と『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』のグレタ・ガーウィグ監督作品だからです。だから、昨年くらいには存在を知ってましたし、北米ではまったく毛色の異なる『オッペンハイマー』と同日公開となって、相乗効果で劇場を賑わせてたところまでは喜んでたんですよ。だから、騒動の原因がワーナーのTwitter担当(しっくり来ないからしばらくは現名称で呼んでやんない)がただ調子に乗っただけ、とはなっから思ってたのです。昔から親しまれていたドールを、女性をテーマにした物語を紡ぐことに優れたグレタ・ガーウィグ監督が映画にするんだから、そもそも本篇に戦争との関わりは皆無、なんてことは解ってるんです。騒動がただただ気の毒で仕方なかったから、公開直後にお盆と台風が来てなかったら、もっと早く駆けつけてましたよ。私に言わせれば、ネットミームに便乗したに過ぎない軽率なパロディを作る人びとと、それぞれの作品が別個に製作されたこと、たまたま封切が同時になったこと、などの事情も考慮せずに批判している人びとは大差ありません。
 ……熱くなってしまいましたが、その辺はやっぱり作品と関係ないので脇に置いといて。
 作品は期待通り、なおかつ期待以上に面白かった。きちんと《バービー》というドールの設定、歴史を取り込みながら、ジェンダー、多様性といった問題をかなり巧みなバランスで、自然に描いている……っていうか、世界館自体が不自然であることに自分で言及してネタにしちゃってるから、もう文句をつけられないのです。
 実のところ私は冒頭5分で心を鷲づかみにされました。だってまるっきり某名作映画のパロディなんだもの。そのあとも往年の映画好きにチクッとくるような描写、メタフィクションめいた趣向やギャグも随所にあって、猛襲し楽しくて仕方ない。
 そのぶん締め括りも難しい内容ながら、ここの発想、まとめ方もいい。個人的に特に評価したいのは、ケンの扱いです。こういう表現が根本的に孕む問題を巧みに突いていて、唸らされてしまった。そしてその上での結末の選択、描き方もまた現代的、なおかつユーモアが利いていて憎い。
 たぶん人によっては、もっとこうすればいいのに、と思うポイントや、しっくり来ない部分もありそうですが、モチーフへの理解に遊び心を加え、現代社会の世相すら巧みに織り込んだ快作でした。そしてやっぱり原爆問題とか何の関係もありません――戦争そのものについてもちょこっと皮肉めいた描写はあるけれど、その辺は気にせず、楽しめる作品です。だから宣伝のやらかしなんか忘れて観て。

 鑑賞後は予定通り、ど・みそにて昼食をいただいたあと、ららぽーとの別棟に入っている有隣堂へ。明日発売するはずの本が入ってないかしら、と試しに覗いたのですが、案の定売っていた。明日、わざわざこれのためだけに外出するつもりでしたが、折角見つかったのだし、と購入して帰宅。

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