『世界で一番怖い答え』

『世界で一番怖い答え』
判型:四六判ソフト
版元:宝島社
発行:2023年9月1日
isbn:9784299044747
定価:1580円(本体:1436円)
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2023年8月17日読了

 2019年からフジテレビ系列の深夜枠で不定期に放送され、一部でカルト的人気を博していた同題番組の第5回放送に合わせて刊行された初の書籍版。番組内で出た問題に書き下ろしも加えた全51問を収録。
 内容的には、ネットの一部で愛好家のいる“意味が解ると怖い話”と同様だが、こちらは問題を『放送禁止』シリーズを手懸けた長江俊和、YouTubeチャンネルで恐怖のエピソードを採り上げる都市ボーイズらが構想、ちょっとした着眼や意識の転換によって見方がガラッと変わる問題としてまとめ、正解が出たときに恐怖を感じさせる趣向を貫いている。テレビ番組としては、監視カメラやウェアラブルカメラの映像、ドラマ形式の再現なども採り入れて、回答者が「その着眼点はなかった」と司会・有田哲平を唸らせる回答を出してきた場合はそれも評価する、といったシステムで、怖さと笑いを巧みに織り交ぜ、深夜だからこそより効果を上げる作りになっている。
 確かに本書はその問題文を流用、新たな問題も同じようなテイストで盛り込んで膨らませているが、深夜に動きと効果音、そして出演者のリアクションまでが揃った環境で眺めるのに比べると、やっぱりちょっと物足りなく感じてしまう。新作と思しい問題も、「これが映像だったらな-」とちょっと考えてしまうのだ。私は第2回からの視聴者で、もうちょっと間隔を短く放送してくれないかな、と思う一方、問題のクオリティを下げて欲しくもないので、こういう本の形にして新作を入れるなら、それを放送用のアイディアとしてストックしておいてくれなかったか、と思ってしまう。
 ただし、放送版を知らない人なら、答を知るたびに戦慄する、なかなかに濃密なホラーが楽しめると思う。放送版もそうだが、この作品の問題は短い文章、映像の中にきちんと手懸かりが仕込まれている。そのちょっとした違和感を紐解いていくと、考えたくない正解が見えてくるこの感覚は、人によっては確実にクセになるはずだ。
 基本的には文章題だが、放送版での映像から流用した写真付きの問題も数点盛り込まれている。文章では表現出来にくいからこその判断だが、惜しむらくはほとんどが写真の形では解りにくい。特に《監視カメラ2》は、動画でもよく見ないと解りにくい手懸かりなので、写真で抜き出しただけでは解りにくい。
 基本的には放送版を楽しんだひとが手を出す書籍だろうが、もし気まぐれで本書を先に読んでしまったなら、是非とも放送版をご覧いただきたい。もし2023年8月18日か19日時点でここをご覧になっているなら、19日深夜の第5回放送をリアルタイムで体験出来る。一定期間のあいだならTVerでも見逃し配信がされているはずだし、FODでは過去の分も配信しているはずだ――私はFODまでは契約していないので、どこまで遡れるかは不明だが。どの機会でも見逃してしまったタイミングの悪い方は、是非とも私と一緒に、第6回の放送があることを祈っていただきたい。

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