経済成長の闇に魔物はいた。

 今週末も観たい映画が封切られてます。ただ時期は年末。今ぐらいにかかる映画は“お正月映画”扱いなので、だいたい1月中旬くらいまではかかる傾向にある。さすがに年始は少し余裕を設けるつもりで、少なくとも年末に現れる気になる映画は月明けにでも押さえられる、と信じ、ひとまずは残っている宿題のフォローを優先することに。
 本日の映画館はTOHOシネマズ上野。今日の作品も、かかっている劇場はまだ多いのですが、今年はいつもより利用頻度が下がっているのであえてここをチョイス。オープンした当初はもっと頻繁に足を運ぶことになると思ってたのに、あんまし立ち寄れてないのが心苦しかったのだ。
 鑑賞したのは、水木しげる生誕100周年記念作品でありテレビアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』第6期の前日譚、山中の奥地に存在した村で繰り広げられる因襲のドラマを大人向けホラーのタッチで描き出した鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(東映配給)
 これも気にはなっていたけど、公開後の評判がやたらといいので、早く押さえたくなってしまった。上映回数は減っていても、集客は向上しているとかで、私が鑑賞した回も、上野では大きいほうのスクリーンなのに、かなりの埋まり具合でした。
 しかし、なるほど面白い。横溝正史のミステリを彷彿とさせる因襲の蔓延る集落で起きる陰惨な殺人、そこに容喙していく復員兵上がりの企業戦士・水木が目撃する、妖異の世界。水木の過去とも絡みあって、舞台となる昭和三十年代の日本を象徴するような要素が凝縮されている。高度経済成長時代に突入しつつある異様な熱気と、戦争という壮絶な体験を未だ振り切れない懊悩、それと並行して地方の共同体を縛る閉塞感をも描いていて、描写が分厚い。
 それでいて物語はきちんと、妖怪を巡るホラーなのです。視点人物となる水木が《ゲゲ郎》と呼ぶようになる謎の男が登場すると、次第に事態の背後に蠢いている異界の存在が姿を現していく。その上で明かされていく人間の欲望の罪深さと哀しさ。きちんと『ゲゲゲの鬼太郎』の世界観を踏襲しているのに、あまりにも闇の深い物語は、確かに強烈に引き込まれてしまう。
 現代的な高いクオリティを維持した作画で、さながら昭和三十年代の映画を思わせるトーンを再現しているのも好感が高い。行間まで読み解けることの出来る大人だからこそ楽しめる濃密な物語。
 ……であるがゆえに、私が座っていた席の斜め後ろあたりに、ローティーンくらいの男の子が母親とともに来ていたんですが、果たしてあの子が楽しんでいたのか、ちょっと心配になりました。禅定とか川上の2000本安打とか佐田啓二とか、たぶんあの子の親世代でもピンと来ない単語も出てきたけど、大丈夫だっただろうか。

 鑑賞後は久しぶりに丸亀製麺の店内で食事を摂る……つもりでいたのですが、土曜日の上野の人出は凄いことになっていた。冷静に考えればいまは師走、アメ横の人出も増えている。こんなときに並ばずに食事を摂ろうなんて、どだい無理な話で、上野駅まで歩いて行って、アトレのラーメン店がことごとく行列になっているのを見て、現地での昼食は断念しました。自宅の最寄り駅まで戻り、近所のコンビニでラーメンを買い、自宅で食べて済ませたのでした。

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