常磐の味をぎゅーっと。

 12月12日の映画鑑賞のあとの話。

 しばらくはなかなか巡り逢えないラーメン目当てに新宿に通い詰めていましたが、イベントが終了したので、またあちこちの映画館を彷徨い、ついでにラーメンを食べる日々に戻ります。とはいえ、基本は保守的なたちゆえ、お気に入りの店を巡るのが中心にはなるのでしょうが、たまには新しいお店や味を開拓するつもりです。
 この日、訪れたのは日本橋ふくしま館のイートイン。福島県の店舗が入れ替わり立ち替わりやって来て食事を提供するスタイルゆえ、定期的にサイトで出店をチェックしている。このところ、ラーメン店は同じところがだいたい月イチか2ヶ月にいちどくらいのペースで回っていてあんまり新発見はないのですが、1店舗だけ、ほぼ毎回新しいメニューを用意してくるところがあって、この日はそこが来ている。下調べしたところ、今回も見たことのないメニューを用意していたので、訪れてみました。

創作麺 やま鳶の贅沢ないわきサンシャインラーメン、トッピングは味玉。

 いただいたのは創作麺 やま鳶の贅沢ないわきサンシャインラーメン、トッピングは味玉です。
 どうもこの《いわきサンシャインラーメン》という料理、いわき市とともに、ご当地食材のみで開発されたもので、本店では継続的に提供しているらしい。今回、ふくしま館で提供していたのは、名前通りにこの贅沢版。通常は添えられていない豚肉と鶏胸肉のローストと思しいチャーシューがそれぞれ2枚ずつが乗り、本家にはある刻みタマネギがない代わりに柚子の皮を刻んだものが散らしてある。他、ワカメとメヒカリをかたどったカマボコ、それにカラフルなあられを散らしているのは本家と同じ模様。
 ポイントは何と言っても出汁です。カナガシラという、頭も骨も硬く、採れても使用されない魚で出汁を取っている。他のものはあえて使っていないようで、澄んだ品のある味わいになっている。スープだけでも美味しい。
 麺も特注品で、加水の際にいわき湯本温泉の源泉を加えているらしい。ナトリウムと硫酸塩温泉を含んでいるのでたぶん水分の吸収率が良く、ストレートの細麺ながら食感がもちもちしている。品のいいスープを吸い過ぎず、しかし絶妙に吸いあげるので、麺の味わいと食感に、スープの旨味が適度に調和して口に入る。
 具材は全般にあっさりしてます。大きめだけど薄切りの豚肉、鶏胸肉いずれも脂っぽさは抑えめで、ムチムチとした肉の歯応えも楽しめるけれどクドくない。ワカメもそうですが、出汁のバランスを崩してません。
 ただ個人的には、メヒカリを模したというカマボコは、もうちょっと個性が立っていてもいい気がします。これだけ主張抑えめの食材を揃えているなら、出汁と反発しない程度に主張のある味がもうひとつあってもいいと思うのですが、たぶんそれが可能なのはこのカマボコくらいのはず。この弾力はラーメンではなかなかない食感ですが、もうちょっとインパクトが欲しかったかも。また、彩りとして鏤められた細かなあられが、食感としてはほぼゼロだったのが残念。
 千切られたゆずの皮は残すべきか悩みつつ、スープや麺と一緒に啜ってしまった。ちょっとした苦みと酸味は、上品とはいえ少し強い味わいに疲れた口のなかを程よくリフレッシュしてくれます。ここのラーメンは全般にスープの量控えめなので、飲みやすい飲みやすい、と言ってるうちに飲み干してしまいました。ちょっと苦言も加えてしまいましたが、基本的には美味しい。
 やま鳶は毎回色々な新作、特別メニューを用意してきてくれますが、その中でもいちばん個性的で、個人的には好みの1杯。これならレギュラーとして次回も持ってきて欲しい……しかし、イートインの厨房はやや狭く、ここで複数のメニューを提供するのはちょっと厳しそう。次にこのラーメンに巡り会えるのはだいぶ先かも……。

日本橋ふくしま館 MIDETTE入口前の柱に掲示された、創作麺 やま鳶によるイートインのメニュー紹介。
日本橋ふくしま館 MIDETTE入口前の柱に掲示された、創作麺 やま鳶によるイートインのメニュー紹介。

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