ご当地ものはリサーチ必須。

 今期、私が観ているアニメのうち、舞台を明確にしている作品が3つあります。
 ひとつは『僕の心のヤバイやつ』。原作が非常にお気に入りで、アニメ版を楽しみにしつつも、不安も抱いていた1本でしたが、仕上がりはほぼ文句なし。原作の構成を少し変えて、エピソードを綺麗にひと続きの物語にしていることや、やたらと丁寧な作画と演出で、リアルだけど繊細な世界を描いている、というだけで大満足なんですが、ちゃんと洗足界隈の光景をうまく取り込んでいるのにも好感が持てます。駅や有名な土地ばかりでなく、主人公たちがいる住宅の表現も、東京として違和感がないのがいい。
 2つ目は『江戸前エルフ』。これは原作未読、放送開始時もチェックはしてなかったのですが、作業のBGVを配信サイトで探しているときに発見して流していたら、思いっきりツボに入ってしまった。特に、舞台となる月島の地理がかなり現実に近い格好で描かれているのがいい。儀式のために地元を練り歩くくだりなど、距離感も自然です。架空の場所である高耳神社がどこにあるのか解らない、くらいはご愛敬。
 3つ目が『おとなりに銀河』……なのですが、これがちょっと残念なのです。
 こちらは原作を読んでいるから知っているのですが、明言していないものの、谷根千界隈が舞台となっている。原作ではヒロインの初登場シーンに、お出かけに向かう駅など、明らかにこの界隈を参考にしていますし、劇中に登場する墓地は谷根千の域内にある谷中霊園、子供たちと出かける公園、動物園もすぐそこの上野に当て嵌められる。明確にはしていなくても、多少現地を知っていれば読み取れるようになっている。
 が、アニメ版はその面影が、観光ガイドでもお馴染みの谷中銀座入口と、手前の階段くらいしかない。原作にはある、東京の下町を舞台にしていればこその住宅の佇まいも、なんだか『サザエさん』を現代に持ち込んだような不自然さで、ご当地感がほぼほぼ奪われている。
 実のところ、アニメとしての仕上がりに納得がいくのなら、こういう“ご当地感”は必須ではないので、消え失せていても構わないのです……が、この作品はキャラ作画の綺麗さ以外、あんまり納得がいっていない。演出のテンポは悪いし、声の演技のつけ方もいまひとつしっくり来ないし、不自然さが先に立つ。スタッフロールを見ると、背景はかなりを海外のスタジオに発注していると思しく、それで雰囲気が巧く再現出来ずにいるのでは……と理解を示してあげたくても、前述2作でも背景スタッフに海外の名前が並んでいるので、あんまし言い訳にはならない。
 原作は好きなので、途中で観るのをやめる気はないんですが……なまじ、きちんとした取材を窺わせる作品を並行してチェックしているせいで、よけい残念で仕方ないのでした。

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