最終回は《嘘だらけの女》篇。大家さんの命令で、新たな同居人を迎え入れることになった祝探偵事務所。しかし、青木麗子はその名前含め、自身の経歴全てで嘘をついていた。麗子と名乗った彼女の行動から、左右馬たちは麗子の身許を探り当てるが――
自分自身のことは徹底して嘘をつく、という、嘘の聞こえる鹿乃子にとって厄介な相手が最後のゲスト。しかし、それでもこのシリーズは最後まで繊細で心優しい。嘘をつき、他人を翻弄するようなことを口にしながら、鹿乃子たちがくら田に頼まれた栗の皮剥きを、ふたりが寝ている間に片付けてしまったりするし、隣の太郎と遊んでいる姿は人の好さが出ている。
そうして解き明かされる麗子の秘密は、この時代にはあまりに特殊で、けれどとても現代的です。恐らく当時は極めて抵抗の強かったはずなのに、それも気遣える左右馬はちょっとファンタジックなくらい柔軟――だけど、フィクションだからこそ快い。そして、それでも世間的には受け入れられないことを承知しているし、何より本当の想いを口にすることで誰かを傷つけたくないから嘘をつく、ということだってある。嘘によって傷つけられてきた鹿乃子に、新しい視点をもたらす、彼女の物語の一区切りとして意味のあるエピソードです。
しかし、このエピソードを最終回に持ってきたのは、それに加えて、終盤の台詞があったからでしょう。しかも、この瞬間に鹿乃子自身が気づく感じが、まさにこの設定ならではで、とてもいい。実は、序盤にもおんなじやり取りがあるせいで、余計に際立つんですよ。ある意味、麗子は功労者です。
最終話らしく、原作では登場しないレギュラーや重要人物を、わざわざ機会を作って出番を与えているのが、ご都合主義ではあるけれどちょっと粋です。特に雅は、未映像化のエピソードでまた活躍する場はありますが、今回のドラマ化で採り上げられた範囲内ではあれっきりのはずだったので、彼女らしい出番を与えてくれたのは嬉しい……たぶん、このドラマ版しか知らない人が気になってるであろう第9話のあの人については、どうしようもなかったみたいですけど。第2クールが実現するなら、あの人の背景も描かれるんですけどね。
第2クールの予告はおろか、スペシャルや総集編といったフリもなかったあたり、復活は現段階では厳しそうな気配ですが、実写化としてはたぶんこれ以上ない理想的な仕上がりだったので、出来れば期待したいところ。ミステリとして手の込んだエピソードも、まだ残ってることだし。
『嘘解きレトリック 最終話』
嘘解きレトリック - フジテレビ
嘘解きレトリック - オフィシャルサイト。毎週月曜よる9時放送。鈴鹿央士、松本穂香
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