『きんいろモザイク Thank you!!』

TOHOシネマズ上野、スクリーン2入口脇に掲示された『きんいろモザイク Thank you!!』チラシと、入場者プレゼントに関するご案内。
TOHOシネマズ上野、スクリーン2入口脇に掲示された『きんいろモザイク Thank you!!』チラシと、入場者プレゼントに関するご案内。

原作:原悠衣(竹書房・刊) / 監督:名和宗則 / 副監督:山本天志 / 脚本:綾奈ゆにこ / キャラクターデザイン:植田和幸 / 総作画監督:植田和幸、小関雅、山内尚樹 / メインプロップデザイン:コレサワシゲユキ、灯夢、小高みちる(デジタルノイズ)、小関雅、中田知里 / 美術監督:柴田千佳子 / 色彩設計:村口冬仁 / 色彩設計監修:歌川律子 / 撮影監督:山本聖 / 音響監督:明田川仁 / 編集:武宮むつみ / 音楽:川田瑠夏 / 歌:Rhodanthe* / 声の出演:西明日香、田中真奈美、種田梨沙、内山夕実、東山奈央、田村ゆかり、諏訪彩花、中津真莉、佐藤聡美、大西沙織、潘めぐみ、村川梨衣、高橋美佳子、大原さやか、木村亜希子、川澄綾子、奥井ゆうこ / アニメーション制作:Studio五組、AXsiZ / 配給:Showgate
2021年日本作品 / 上映時間:1時間22分
2021年8月21日日本公開
公式サイト : http://www.kinmosa.com/
TOHOシネマズ上野にて初見(2021/8/26)


[粗筋]
 アリス・カータレット(田中真奈美)の来日から始まった、大宮忍(西明日香)、小路綾(種田梨沙)、猪熊陽子(内山夕実)、九条カレン(東山奈央)の高校生活も、終わりが迫っていた。
 奈良と京都を巡る修学旅行を済ませると、いよいよ卒業後の進路を決めねばならなくなる。陽子は女子大を志望、彼女に想いを寄せる綾も同じ大学を目指すことは決まっている。そしてアリスは、祖国イギリスのカレッジへの進学を考えていた。
 残るふたり、忍とカレンはなかなか進路をはっきりと示さなかったが、いよいよ気持ちを固めねばならない時期が近づいてきた。最終的にふたりが決めた、彼女たちの未来とは――


[感想]
 原悠衣の4コマ漫画シリーズをもとに、2013年よりテレビシリーズが放映、2シーズンにわたって放映されたのち2016年に劇場版が製作された『きんいろモザイク』シリーズの最新作であり、恐らくは完結篇である。原作は本編と同様、アリスや忍の高校卒業に至った11巻で完結を遂げているので、まだ映像化されていないエピソードや、特別に番外篇が設けられる、ということがない限り、本当にこれが最後と思われる。
 残念ではあるが、しかしその一方、これはこれで素晴らしいことなのだ。1クールごとに数十本と新たなシリーズがリリースされる盛況のアニメ業界だが、理想的な着地に辿り着く作品はごく少ない。クオリティが理想に遠く及ばないのは論外だが、師事を集めた作品でも、十分な利益を上げられなければ続篇が製作されることはない。たとえ続篇に結びついても、製作期間が長くなればなるほど継続には様々な困難がつきまとう。原作と同じフィナーレを迎えられること自体が、既に幸福であり、賞賛すべき到達点と言えるのだ。
 ただ、映画として出来がいいか、と問われると、躊躇してしまう。
 もともと、4コマ漫画をストーリーとして再構成するのは難しい。全体では大きなストーリーを構成する、というのがもはや普通になっているとは言い条、多くの4コマ漫画は、4コマでひとつの話やネタに区切りをつけるように考えられている。それを長篇としてまとめようとすると、よほど緻密に一本化しない限り、細かいエピソードやオチを際限なく羅列するかたちになり、どうしても全体に散漫な印象を生んでしまう。本篇が1話あたり20分ちょっとで決着するテレビシリーズならそれでも楽しめるが、1時間以上に及ぶ長篇では、散漫さがより印象づけられてしまう。
 こと本篇は、夏休み前の修学旅行から進路への悩み、そして卒業までをすべて網羅している。時間の跳躍が多いので、エピソードが細分化されていることは省略しやすさにも繋がっているが、原作では7巻後半から11巻までのエピソードから抽出、構成しているので、断片化、圧縮がどうしても感じられてしまう。4コマのネタをなるべくそのままの構成で映像化して羅列するスタイルは、うまく組み立てればテンポが生まれる反面、単調さや全篇での間延び感を与えがちだ。本篇の中盤あたりまでは、まさにこの弊害で、悪い意味で長い印象を受けてしまう。このキャラクター、世界観が好きなら、その間延びしたテンポにも浸っていられるが、愛着がないとそうはいかない。テレビシリーズの雰囲気を留めた作りは、ファンへの配慮としては正しいが、それ故に単独の映画としては評価しづらい。
 だが、単独の映画としてのこうした難点は、あくまでテレビシリーズから追ってきた観客を最優先する、という観点に立てば、すべて美点に転じる。
 キャラクターの魅力を可能な限りフォローした構成、シナリオ、原作の4コマの味わいを残したままアニメーションにする安定感安心感。忙しない作りだが、しばしば休みなく繰り出される天然ボケとツッコミのテンポは、それこそコミックのなかから飛び出してきたようでファンには快い。
 それでいて終盤は、それぞれの人生の転機に直面した戸惑いや不安、それでも変わらずにある彼女たちの絆を丁寧に紡いでいて、胸に響く。常に予想の斜め上を行く忍の意外と真面目な展望や、いつもの調子にも弱気を露わにするカレンな姿など、この時期にいる彼女たちだからこその表現が、全篇にある、ふざけているようでいて向き合うべき問題には真摯、というテレビシリーズからのスタンスとも一致する。制作の時間は開いてしまっても作品の本質は地続きだ、と感じさせ、それ故に少しためすぎで大袈裟なフィナーレもしっくり来る。
 初見に解りやすい、馴染みやすい作品とはとうてい言えず、単品の映画として観ても歪な作りだが、テレビシリーズから紡がれた物語を締めくくる1本としては文句がない。ファンはもちろん、そこまで行かずとも初期からほとんど観ているようなひとは必見だと思う。彼女たちの高校最後の数ヶ月と、その後の姿を見届けて欲しい。


関連作品:
きんいろモザイク Pretty Days
ドキドキ!プリキュア マナ結婚!!? 未来につなぐ希望のドレス』/『バースデー・ワンダーランド』/『HUGっと!プリキュア・ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ』/『映画 けいおん!』/『サイダーのように言葉が湧き上がる』/『のんのんびより ばけーしょん』/『銀魂』/『ARIA The CREPUSCOLO』/『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン
リズと青い鳥』/『空の青さを知る人よ』/『魔女見習いをさがして

コメント

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