松江怪喜宴8前半、松江怪談談義9 at 興雲閣。

興雲閣1階に掲示された松江怪談談義9ポスター。
興雲閣1階に掲示された松江怪談談義9ポスター。

 というわけで、前項の続き、松江怪談談義本番です。
 会場は2階。1階の喫茶室を出て向かおうとしたら、ちょうど木原さんの姿が見えた。引き留めるのも悪いので会釈だけしたら、通り過ぎるときに笑顔で「同じホテルだったね!」と言われました。……すみませんこっちは気づいてませんでした。いつすれ違いました? と確認するのは忘れてしまった。ホントにどこで気づかれたのだろう。
 イベントが始まる前に、顔見知りの方にお会いしつつ物販を覗く。今回はTシャツの新作などはなかったようなので、買うものないかな、と思ってたら、気づいたら口車に乗せられて小物類を買っていた。マルチケースとブックカバー。これ以上乗ってしまわぬよう、確保した席に戻るのであった。

 さて、いよいよイベント本番です。
 登壇するのはもちろん、小泉八雲の曾孫であり、松江で小泉八雲記念館の館長を務めながら民俗学などの分野で活躍する小泉凡氏と、『新耳袋』『九十九怪談』などを著す怪異蒐集家であり、アニメや特撮の分野で様々な企画やイベントに携わる木原浩勝氏。
 ただまあ、話題としてはまず触れないわけにはいかないことがまずある。来年秋期スタートのNHK朝ドラ『ばけばけ』です。小泉八雲の妻である小泉セツをモデルとした作品ということで、松江市の盛り上がりは勿論のこと、やはり直系の子孫であり、小泉八雲記念館館長として造詣も深い凡氏は当然のごとく多忙を極めているそうです。それまでは取材に個別対応していたのに、製作発表後の依頼が多すぎて、記念館として初めて記者会見を実施したそうです。
 そんなわけで、とりあえずは小泉セツに絡む話が多くなる。そもそも、近年は八雲だけでなくセツにも着目した小説が相次いで刊行されたり、そもそも小泉八雲記念館としても、朝ドラの企画とは関係なく、今年初夏から始まった、小泉セツに焦点を当てた企画展示の準備を長いこと進めていたそうです。
 そして、そもそも今年は、小泉八雲が『怪談』を刊行して120年。この記念すべき年に絡めて、松江市ではイベントやグッズ展開を推進している……グッズでは《雪女》と《河童》が圧倒的に人気のようですが。一方では世界各地で『怪談』やその世界をモチーフとしたイベント、表現が試みられており、未だに世界中に新たなインスピレーションをもたらしている、というのを実感する状況なのだとか。
 話の中では、このところ海外での講演活動が増えている木原氏の報告も多々あって、怪談ではないけれど神秘的な話があるかと思えば、ここで意外な縁が判明する一幕も。『天空の城ラピュタ』で、ロボット兵が暴れるあの要塞、モデルとなったカーナーヴォン城城には幼い頃の小泉八雲、というかラフカディオ・ハーンも乳母に連れられてたびたび訪ねていて、それこそ最大の見せ場に用いられる塔にはラフカディオもよく登っていたのだとか。つまり、小泉八雲と宮崎駿は確実に同じ場所に立っている。
 他にも、ロンドンで舞台化された『となりのトトロ』についての話など、スライドで用意した画像を元にしつつ、休憩を挟んでたっぷり2時間、様々な話を聞くことが出来ました……「これはネットに書いちゃ駄目」と釘を刺された部分も結構あって、いちおうその辺は解らないようぼかしたつもりですが……大丈夫かな。いちおうメモは取って、確認しながら書いてますが、何せ話が止まらないので、急いで書き留めたメモは自分でも読みにくいのです。

 終了後は恒例のサイン会。今回は、予め八雲記念館で購入してあった、企画展示の図録と、先月に記念館のみで復刻販売の始まった小泉セツの『思ひ出の記』にサインをいただきました。木原氏は、正直私はご著書のほとんどにサインをもらってしまって、さすがにこのために同じ本を追加するのもどうかと思い、今回はもらわずにおこうか、と考えていたのですが、前に並んだ方が『思ひ出の記』の後ろ側空白にサインをお願いしているのを見て、真似してしまいました。
 ちなみに、関係者の方に伺ったのですが、小泉セツの企画展示の図録、むちゃくちゃ労作だそうです。展示したものはすべて載せているのですが、折角図録にするのだから、手紙類も内容が理解できるようにしたい。その読み下しが膨大で、なおかつデザイナーが、それを紙面に収めるのにずいぶん苦心されたのだとか。ここの企画展示の図録としてはやや割高になっていますが、資料としての充実度が素晴らしいので、訪問した方は買ってあげてね。現地に行けなくても、通信販売もしてくれます。詳しくは小泉八雲記念館の公式サイトをご確認ください。

イベント最後のフォトセッションにて、なぜかハグをリクエストされた小泉凡氏と木原浩勝氏。相撲を取ろうとしているようにも映る。"
イベント最後のフォトセッションにて、なぜかハグをリクエストされた小泉凡氏と木原浩勝氏。相撲を取ろうとしているようにも映る。

 折しも松江は、松江城下の道に灯籠を並べて暗い夜道を彩る水燈路と、街のあちこちで巨大な太鼓=“鼕(どう)”を打ち鳴らす松江祭鼕行列の一環、鼕まつりが行われている。どぅん、どぅん、という重い響きを感じながら、灯籠で照らされた道を歩くのはかなり神秘的な体験でした。
 ……まあ、そんなにもあちこち歩く羽目になったのは、イベント後に夕食を摂ろうと立ち寄った麪家ひばりがスープ切れにより営業を終えており、食べるところを探して遠回りしたからなんですが。代わりに訪れた店も美味しかったし、結果オーライ。

興雲閣前の広場に並んだ灯籠。
興雲閣前の広場に並んだ灯籠。

濠そばの通りに飾られた灯籠。カメラの性能が良すぎてやたら明るく撮れてますけど、実際には本当に暗い中に灯ってます。
濠そばの通りに飾られた灯籠。カメラの性能が良すぎてやたら明るく撮れてますけど、実際には本当に暗い中に灯ってます。

橋の上に設けた屋台で鼕を打ち鳴らす人々。当夜は、こんな光景があちこちで見られました。
橋の上に設けた屋台で鼕を打ち鳴らす人々。当夜は、こんな光景があちこちで見られました。

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