TOHOシネマズ新宿、5階ロビーに展示された『MEG ザ・モンスターズ2』ポスター。
原題:“Meg 2 : The Trench” / 原作:スティーヴ・オルタン『The Trench』 / 監督:ベン・ウィートリー / 脚本:ジョン・ホーバー、エリック・ホーバー、ディーン・ジョーガリス / 製作:ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ、ベル・エイヴリー / 製作総指揮:ジェイソン・ステイサム、ケイト・アダムス、リー・ルイガン、キャサリン・シュージュン・イン、ウー・ジン、E・ベネット・ウォルシュ、エリック・ハウサム、ジェラルド・R・モレン、ランディ・グリーンバーグ / 撮影監督:ハリス・ザンバーラウコス / プロダクション・デザイナー:クリス・ロウ / 編集:ジョナサン・エイモス / 衣装:リンジー・ピュー / 音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ / 出演:ジェイソン・ステイサム、ウー・ジン、ソフィア・ツァイ、クリフ・カーティス、ページ・ケネディ、セルジオ・ペリス=メンチェータ、スカイラー・サミュエルズ、メリサンティ・マフート、キラン・ソニア・ソウアー、フェリックス・メイヤー、シエンナ・ギロリー / 配給&映像ソフト発売元:Warner Bros.
2023年アメリカ、中国合作 / 上映時間:1時間56分 / 日本語字幕:アンゼたかし
2023年8月25日日本公開
2023年12月20日映像ソフト日本盤発売 [Blu-ray + DVD|Blu-ray + DVD Amazon.co.jp限定仕様|4K ULTRA HD + Blu-ray|4K ULTRA HD + Blu-ray Amazon.co.jp限定仕様]
公式サイト : http://www.megthemonsters.jp/
TOHOシネマズ新宿にて初見(2023/8/31)
[粗筋]
超深海潜水のエキスパートであり、海洋汚染を監視する事業でも辣腕を振るうジョナス・テイラー(ジェイソン・ステイサム)は、海洋研究所の創建10周年を記念するパーティへと招かれた。かつて深海に潜む巨大生物・メガロドン=MEGの襲撃により甚大な被害を受け、多くの人材を失った研究所は、しかしその後、前所長の息子ジウミン・ジャン(ウー・ジン)の手で再建され、深海の研究を続けていた。ジウミンの妹であり、かつての事件でジョナスと共に戦ったスーインは既に亡くなったが、彼女の遺児メイイン(ソフィア・ツァイ)と共にジョナスも交流を続けている。
研究所がMEGと共存可能と判断して、偶然に捕獲した幼体を《ハイチ》と名付け飼育していることには、ジョナスは批判的だったが、新たに開発された潜水艇と耐水圧スーツを用いての調査には協力することになった。ジウミンも含む研究所のクルーに、こっそりとメイインが紛れ込んでいたが、調査はそのまま始められた。
潜航した一同は、深海に謎の海底ステーションが存在するのを発見した。研究所が関知しない3匹のMEGと遭遇する。うち1匹は、どういうことか、研究所で飼育している《ハイチ》と思われた。襲撃を警戒して調査チームが息を潜めるなか、何かが爆発し、損傷と乗員の過剰により浮上できなくなったチームは、耐水圧スーツを装着し海底ステーションへと移動する方法を選択する。
ジョナスたちが想定外の事態に遭遇するなか、研究所でもまた別の事態が進行していた――
[感想]
前作は色んな意味で衝撃だった。もはやB級・C級映画の格好のネタでしかなかったサメ映画に、まだ大作映画として市場を賑わせるだけのポテンシャルがある、と証明したこと。そして、ジェイソン・ステイサムがほぼ何にでも勝てる、現代最強の俳優である、と証明してしまったこと。
前作の大ヒットを受けて製作された本篇は、それでもまだパニック映画らしい群像劇の性質を多少なりとも帯びていた前作に対し、のっけからステイサムの見せ場があり、以降もノンストップで活躍する。前作以上に、ステイサムが人間側の主役となり、太古から蘇ったモンスターとの対決を描いた映画、という色彩を強めた。
一方で、前作で構築した世界観を膨らませ、新たな“災厄”もきちんと組み立てられている。前作で提示されたジェイソン・ステイサム演じるキャラクター、深海の隔てられた層で密かに繁殖し続けていた巨大生物の生態と、そこに陰謀を絡め、大きな事件へと発展させる。前作のエッセンスを受け継いだ冒険とサスペンスを盛り込む一方、あまりにもお約束すぎるクライマックスの趣向も忘れない。方向性の的確な踏襲と拡張っぷりは天晴れなほどだ。
ただし、それゆえに前作が背負っていた欠点もほぼそのまま残っているのも事実だ。こと、本篇が全世界で封切られる少し前に発生した、沈没した豪華客船タイタニックを間近に巡るツアーに出ていた民間企業の潜水艇タイタン号の事故は、人類が深海に挑むときの危険性を世界中に知らしめてしまった。あの出来事のあとでは、本篇の描写の荒唐無稽ぶりが明白になってしまう。耐圧服の僅かな亀裂が広がり“圧壊”する、という描写の生々しさは増した一方で、現実の事件でこの現象がどれほど恐ろしいか知ってしまったあとでは、さすがに陳腐な印象を禁じ得ない。どれほど高度な技術があったところで、人間が深海で活動可能になるようなスーツは開発が困難だし、完成したとしても、果たして本篇のようなアクション、サスペンスは成立するかどうか。
しかし、こういう大作映画の魅力は、そういう正確さを求める意識を、娯楽性の高さで「だからどうしたぁぁぁ」と押し潰しにかかる、その荒々しさ、パワーにこそある、とも言える。往年の大ヒット作『アルマゲドン』がまさにその好例で、科学的な考証の正しさが面白さ、魅力の核ではなく、その荒唐無稽さと積極的に戯れ、魅力を引き出すことで、作品は成功することもあるのだ。いまとなっては押しも押されもせぬ娯楽映画の傑作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作だって、SF的に疑問の余地はいくらでもあるのだ。むしろ、前作の世界観と結びついた魅力を素直に踏襲した判断は正しい。
むろん――という言い方も失礼だが――大作の続篇ものにありがちな粗さ、不自然さは随所にある。前作の重要なキャラクターがドラマ的な必然性も不明瞭なままに退場していること、展開の鍵を握る裏切り行為の安易さ、そしてあまりにも綺麗にお約束のパニック展開が、最終的には『ジュラシック・パーク』風味の怪獣大集合みたいな雰囲気になってしまう。こうしてみるとさすがに乱暴すぎないか? という気もしてくるが、大の大人が金にものを言わせて遊びまくっている図は正直、観ていて楽しいのも事実なのだ――それを悪趣味とか低俗とか感じる人はそもそもお呼びではない、と割り切った作り方でもある。
さんざっぱら大風呂敷を広げた挙句、ある意味本篇の結論は前作とまったく同じである。スケールアップはしているが、決して進歩もしていない。だが、それもまた大作映画の魅力であり、続篇ものとしては正しい方向性だろう。重厚で上質なものを求めるならお呼びではないが、過剰さも荒々しさも娯楽として受け入れられるなら、間違いなく極上の1本である。何はともあれ、今回もジェイソン・ステイサム無双が堪能出来るのは確実である。
内容的には続篇としてほぼ文句のない仕上がりだが、1つだけ残念なのは、前作の主要登場人物で、劇中で生き延びたにも拘わらず、本篇では死んだことにされてしまったキャラクターがいる点だ。
粗筋にも記しているのではっきり書いてしまうが、それはメイインの母スーインである。彼女が退場に至ったのは、契約上の都合か、好意的に考えればスケジュールの都合がつかなかった、などの事情によるものだろう。大作映画では、それなりに著名なキャストが集い、本篇においても、日本ではそこまで知られていなくても、それぞれの出身地や拠点とする国で活躍している俳優ばかりだから、こういうことは時として起こりうる。
だが、少々憐れに思えるのは、この降板に起因すると考えられる設定が、前作を観た人間からすると妙に頷けてしまうせいだ――なにせ前作はこのスーインが下手に動いていなければ、もうちょっと問題がシンプルになっていた、という場面が何箇所かある。予め伏線が張ってあるのに、わざわざ危険な方へ飛び込んでいく彼女は、むしろよく前作のあいだ無事だった、と感心するくらいなのだ。いっそ不憫でさえある。
成績的には決して悪くなかったようだが、果たして第3作にまで結実するか、は私がこれを書いている2023年11月時点ではまだ解っていない。もし第3作があるとして、何らかの方法でスーインか、彼女を演じたリー・ビンビンが再登場する可能性もゼロではない。ただ、いま私が心配しているのは、本篇で母親の影響を露骨に示したメイインだ――スーインや演じた俳優が復活しないのと同様、メイインまでが同じ理由で退場していないことを願いたい。せめて、ただ出番がないだけでいてくれ。切なすぎるから。
関連作品:
『MEG ザ・モンスター』
『キャッシュトラック』/『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』/『クライマーズ(2019)』/『エアベンダー』/『バイオハザードIV アフターライフ』/『バイオハザードV:リトリビューション』
『JAWS/ジョーズ』/『オープン・ウォーター』/『ロスト・バケーション』/『ジュラシック・パーク』/『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』/『ジュラシック・パークIII』/『ジュラシック・ワールド』
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