『プロメア<前日譚つき>(爆音上映)』

ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場、スクリーン1入口脇に掲示された『プロメア』チラシ。
ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場、スクリーン1入口脇に掲示された『プロメア』チラシ。

原作:TRIGGER×中島かずき / 監督:今石洋之 / 脚本:中島かずき / クリエイティヴディレクター:若林広海 / アニメーションプロデューサー:舛本和也 / キャラクターデザイン:コヤマシゲト / 美術:でほぎゃらりー / 美術監督:久保友孝 / 撮影監督:池田新助 / 色彩設計:垣田由紀子 / 3DCG制作:サンジゲン / 3Dディレクター:石川真平 / 編集:植松淳一 / タイトルロゴデザイン:市古斉史 / 音響監督:えびなやすのり / 音楽:澤野弘之 / 主題歌:Superfly『覚醒』『氷に閉じこめて』 / 声の出演:松山ケンイチ、早乙女太一、堺雅人、佐倉綾音、小山力也、吉野裕行、稲田徹、新谷真弓、ケンドーコバヤシ、檜山修之、小西克幸、楠大典、小清水亜美、柚木涼香 / アニメーション制作:TRIGGER / XFLAG製作 / 配給:東宝映像事業部 / 映像ソフト発売元:Aniplex
2019年日本作品 / 上映時間:1時間51分
2019年5月24日日本公開
2020年2月5日映像ソフト日本盤発売 [DVD完全生産限定版DVD通常版Blu-ray完全生産限定版Blu-ray通常版]
公式サイト : https://promare-movie.com/
ユナイテッド・シネマ アクアシティお台場にて初見(2019/11/02) ※爆音映画祭
TOHOシネマズ上野にて再鑑賞にて初見(2022/6/4) ※公開3周年記念復活上映


[粗筋]
 30年前、突然に身体から炎を発する者が現れはじめる。同時多発的に出没した彼ら《バーニッシュ》によって世界は半分近くが消失してしまった。
 現在、都市には高度な消火施設が整備されたが、隔離された《バーニッシュ》は一部が暴徒化、《マッドバーニッシュ》を名乗り、放火を繰り返している。彼らに対処するため、ぷプロメポリスには高機動救命消防隊《バーニングレスキュー》が組織されていた。
 この《バーニングレスキュー》に最近、新人が加わった。プロメポリスの司政官クレイ・フォーサイト(堺雅人)に救出されて以来、自らも救命士になることを夢見てきたガロ・ティモス(松山ケンイチ)である。ガロの無鉄砲な振る舞いは周囲をしばしば振り回したが、隊長イグニス・エクス(小山力也)の的確な起用と仲間たちのサポートもあって、救命活動に確実に功績を残していた。
 そしてガロは遂に、《マッドバーニッシュ》のリーダー格リオ・フォーティア(早乙女太一)と対峙する。炎を意のままに操り、防具や乗物にも作り替えることの出来る《バーニッシュ》のなかでも突出した能力を持つリオはガロを翻弄するが、ガロは《バーニングレスキュー》の仲間たちとの連携でリオの確保に成功する。
 功績を横取りするかのように、リオの身柄は《バーニッシュ》の犯罪捜査を統括する《フリーズフォース》のヴァルカン・ヘイストス大佐(楠大典)に奪われたが、ガロの活躍を目撃していた世間は彼を賞賛、クレイからも勲章を授与される。
 だが実は、リオはわざと捕まっていた。リオと、彼と共に捕らえられたゲーラ(檜山修之)、メイス(小西克幸)の狙いは、捕らえられた《バーニッシュ》たちを救出することにあった――


[感想]
 冒頭から、熱量が凄まじい。
 扱っているのが、突然変異により体内から火を放つようになった人びと《バーニッシュ》による犯罪、という点にもあやかっているのだろうが、序盤で中心として描かれているのが火を消す側の《バーニングレスキュー》なのだから、そのねじれ具合がまずカッ飛んでいる。災害現場の狂騒を緊迫感も演出しながら、キャラクターたちの際立つ個性を惜しみなく見せてくる。
 そして、このテンションの高さが、全篇まったく落ちることがない。紆余曲折に富んだ物語を、やたらと“熱い”キャラクターが衝突しあい、或いは手を取りあって猛スピードで牽引していく。終始鳴り響いている印象のあるBGMも、大事なところでは昂揚感の強烈なヴォーカル曲を反復して用いて、緩急とリズムを加えており、切れ目のないハイテンションが続くのに倦む暇すら与えない――あまりにもテンションが上がりすぎて、観終わる頃にはどっと疲れが湧いてくるほどだ。
 熱くさせるのはストーリー展開や語り口ばかりではない。絵の作り方がいちいち格好いい。CGで作成し、立体的な動きを組み立てやすくする便宜のためもあるのだろうが、都市の直線的なデザインと、グラデーションよりも陰影を際立たせたマットな塗りは画面をやたらシャープに見せている。各キャラ初登場のシーンでは止め絵と、統一されたフォーマットで名前で表記され、人物の存在を印象づけながら語り口にリズムも生んでいる。やもすると野暮ったくなりそうなこうした表現も、物語のスピード感や熱気と相俟ってやたらに格好いい。ある意味、アクが強い、とも言えるので、ここで乗れないと最後までハマることは難しいだろうが、魅せられたら最後、結末まで昂揚感に浸ることが出来る。
 実のところ、物語の展開は随所に強引さ、御都合主義が見える。いちおう序盤では計算されたエピソードや伏線の配置があり、それが終盤の盛り上がりを演出しているのも確かなのだが、クライマックスは勢い任せの中で急に現れるものが多い。設定を考慮するといちおう裏打ちはされているのだけど、全般に色々な意味で話がでかくなりすぎて、見ようによってはもはや笑いの領域にまで達している。
 しかし、その荒々しさ、豪快さもまた、本篇の魅力だ。序盤から描かれるキャラクター達の個性の強さ、情熱の激しさに魅せられている者には、更なる熱狂を齎す。乗れなければそれまでだが、乗せられてしまえば、まるでお祭り騒ぎのなかに放り込まれたような興奮を味わえる。
 もう一つ特筆すべきは、キャラクターデザインと肉付けの絶妙さだ。バカ呼ばわりされるほどの熱血漢ガロ・ティモスに、ちょっとツンデレの味付けもされたヒロイン格のアイナ・アルデビット(佐倉綾音)ら《バーニングレスキュー》の少年漫画の王道を掻き集めたような構成が楽しい。そして格別に印象を残すのは、リオ・フォーティアだ。昇華する側でありながら火のつきそうなほどの熱血漢であるガロに対し、体内から火を放つ《バーニッシュ》でありながらクールな容姿と振る舞いをするリオ。しかもデザインも、筋骨隆々で髪も漫画的に鋭く突き立ったガロに対し、リオは女性と見紛うほどに華奢で美しい。デザインに反し、言動は勇ましいが、あえて可愛いリアクションを抽出したり、一部の腐った観客を狙い撃ちにしたようなシーンを挟むあたり、あざといほどだが、こちらも物語の勢いにキャラクターがマッチしているので、それが魅力として自然に受け入れられる。
 デザイン、設定、演出、すべてが見事に噛み合った、圧倒的な一体感が堪能出来る、まさに“快作”と呼ぶに相応しい1本だ。ちょうど感想が書きづらかったタイミングに鑑賞したため、仕上げるために復習する必要はあったとはいえ、それにあえて劇場での再上映を選んでも惜しくなかったほどに、私もけっこうハマっている。


関連作品:
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