昨年9月リリースの『呪いの黙示録 第四章』を鑑賞。ベランダから見える、覗き込む顔を探りに行った一部始終“顔”、大雪でキャンプの予定をキャンセルした大学生の映像に怪異が映り込む“予定中止”、帰省した際に撮った何気ない映像が恐怖を生む“夏休み”、他のシリーズで不採用となった映像を掘り下げていく連作“ボツネタ”、“こっくりさん”の全5篇を収録。
比較的レベルの高いものをリリースし続けている寺内康太郎演出によるシリーズ第4作です。今回も相変わらず、基本的には安定している。
……ただ、スタッフが登場するエピソードに雑音が多くて集中しづらい。スタッフのキャラクターを強調するのはいいんだけど、取り扱う怪奇映像やそれに関連する現象を巡る範囲で表現して欲しいのです。ほんとうは『XXX』のチームに入りたかった、とか意見の相違で揉める、とかあんまし見せなくていいから。
特に気になるのが、第一章以来の登場となった真田怜臣という演出補。第一章での登場時、なんか妙に引っかかる人物像なのに、具体的な説明がなくて終始モヤモヤさせられていたのに、第二章でいきなり休んでる。新シリーズなのに2本目で既に休んでる、ってどういうこと? 1本限りだったの? と思ったら、しれ、っと復帰してるし。
調べたところ、どうやら女優としても活動するトランスジェンダーとのこと。いや、それ自体は別にどっちでもいいんですが、彼女についてひたすら引っかかるのは第一章にて、ネット経由である人物に連絡を取る際、「女性の名前のほうが返信しやすいだろうし」という理由で自分の名前を使わせていたこと。……名前、女性っぽいか? むしろ、この発言のせいでこのひとの性自認がよく解らなくなってしまい、本筋が頭に入ってこなくなったのです。事実、まあまあ出来がよかったはずの第一章の展開、そこしか覚えてないし。
基本的には面白いし、他の怪奇ドキュメンタリーとして異様に濃くて、微妙に不協和音を奏でるやり取りは、それ自体を楽しむのもアリだとは思う。ただ、個人的にはもーちょっと抑えて欲しい。気になりすぎるから。
……肝心の怪奇映像や展開について触れてないな。とにかく寺内演出作品は、内容的にありそうもない、と感じても、映像そのものの違和感が少ないのが特徴。そして、スタッフが出張らないものについては、語り口や関連するエピソードが巧みに不気味さを際立たせていて、真偽はともかくホラーとして面白い。
とりわけ、“ボツネタ”と“こっくりさん”の2章に跨がる長篇は、この手の怪奇ドキュメンタリーで私がいちばん好きな類のエピソード。他のシリーズに投稿されたもののボツとなったネタに興味を抱き掘り下げていくことで浮かび上がる、投稿者の母とその友人の謎。スタッフのやり取りが少々鬱陶しい、とは思うものの、取材の行き詰まりから何とか進んだ先で巡り逢う、おぞましくも虚しい終幕まで、なかなかに見事。まさに、「フェイクだとしても面白い」、私がいちばん求めている類の仕上がり。
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