それでもあなたは儀式をするの?[レンタルDVD鑑賞日記その804]

 3月9日に、2022年12月リリースの『呪いの黙示録 第七章』を鑑賞。それぞれ異なる日時場所で行われた“ひとりかくれんぼ”の顛末を記録した《2008年7月23日 石川》《2017年4月18日 兵庫》《撮影日 不明》、異なるルールで儀式を行っていた女性への取材が壮絶な怪異の記録と悲しい結末を導き出す《ひとりかくれんぼ》《真夜中の降霊遊び》の全5篇を収録。
 初期は、怪奇映像やそのエピソード自体は面白いけど、スタッフ同士のやり取りとか言い争いが邪魔だなー、という印象の強かったこのシリーズ、しかしだんだんと匙加減が巧くなって、楽しみに出来るシリーズになってきた。そんななかでも今回は特に攻めていて興味深い。
 なにせモチーフは全篇“ひとりかくれんぼ”です。ネット由来の比較的新しい降霊術と呼ばれ、この手の怪奇ドキュメンタリーではしばしば登場する題材ですが、1巻まるまる、それに纏わる動画、というのは私の知る限り例がない。本篇中でも触れられているとおり、わりと最近登場してきた“儀式”で、媒体によって作法にも違いがあるうえ、映像として怖いけれどどうしても一本調子の展開になってしまう可能性があるので、こんなやり方をしないのでしょう。
 その点、本篇は前後篇に分けた長篇が、ビデオレターのやり取りだけをしていた友人が、“ひとりかくれんぼ”の様子を送ってきて以降音沙汰がない、というところから出発し、一風変わったルートからその背景を探り出す、という過程の面白さで十二分に魅せてしまう。長篇とは絡まない単発のエピソードが挿話的に挟まれることで、この儀式の忌まわしさが強調されるのも、長篇で描かれる行為の危うさを裏打ちする
 しかもこの話の主要登場人物が、妙に同情を誘うのも巧妙です。こんな胡乱な方法に頼らねばならぬ背景があって、実際に行動に及んでしまった。最後はなかなか剣呑な映像で締めくくられるのですが、そこにも怖さと同時に憐れさを感じさせる。そして、それを誘導した、とも思える悪意にも慄然とする。
 もしかしたらこのシリーズはもとより、私がこれまでに観た怪奇ドキュメンタリーでもトップクラスの傑作かも知れません。揺さぶる感情の豊かさ、という点では間違いなくダントツ。演出・寺内康太郎が各所で繰り返し掘り下げていたスタイルの最高峰だと思う。

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