『ターミネーター2』

自宅に眠っていた、『ターミネーター2』劇場公開前のプレスシート。
自宅に眠っていた、『ターミネーター2』劇場公開前のプレスシート。

原題:“Terminator 2 : Judgement Day” / 監督&製作:ジェームズ・キャメロン / 脚本:ジェームズ・キャメロン、ウィリアム・ウィッシャー / 製作総指揮:ゲイル・アン・ハード、マリオ・カサール / 撮影監督:アダム・グリーンバーグ / プロダクション・デザイナー:ジョセフ・ネメックIII世 / 編集:コンラッド・バフ、マーク・ゴールドブラット、リチャード・A・ハリス / 衣装:マーリーン・スチュワート / 特殊メイクアップ&ターミネーターボディ製作:スタン・ウィンストン / CGイメージ:インダストリアル・ライト&マジック / 視覚効果スーパーヴァイザー:デニス・ミューレン / キャスティング:マリ・フィン / 音楽:ブラッド・フィーデル / 主題歌:ガンズ・アンド・ローゼズ“You Could Be Mine” / 出演:アーノルド・シュワルツェネッガー、リンダ・ハミルトン、エドワード・ファーロング、ロバート・パトリック、アール・ボーエン、ジョー・モートン、S・エパサ・マーカーソン、カストゥーロ・グエラ、ダニー・クックセイ、ジャニット・ゴールドスタイン、ザンダー・バークレー、レスリー・ハミルトン・ギアーレン、ケン・ギベル、ロバート・ウィンリー、ピーター・シュラム、シェーン・ワイルダー、マイケル・エドワース、ジャネット・ラーンスベリー / パシフィック・ウェスタン製作 / 初公開時配給:東宝東和 / 映像ソフト最新盤発売元:KADOKAWA
1991年アメリカ作品 / 上映時間:2時間17分 / 日本語字幕:戸田奈津子 / PG112
1991年8月24日日本公開
午前十時の映画祭11(2021/04/02~2022/03/31開催)上映作品
2019年8月29日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD VideoBlu-ray 4Kレストア版Blu-ray 3D版4K ULTRA Blu-ray 2枚組]
NETFLIX作品ページ : https://www.netflix.com/watch/60028202
初見時期不明(劇場公開時に映画館にて)
TOHOシネマズ日本橋にて再鑑賞(2021/08/17)


[粗筋]
 サラ・コナー(リンダ・ハミルトン)がターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー)に襲撃を受けてから10年の月日が過ぎた。
 我が子ジョン(エドワード・ファーロング)を未来の指導者にするべく、各地を転々としていたサラダが、コンピューター工場の襲撃に失敗し逮捕、現在は警察病院の精神病棟に収用されている。ジョンはトッド(ザンダー・バークレー)・ジャネル(ジェニット・ゴールドスタイン)夫妻のもとに里子に出された。しかし、常軌を逸した幼少時代を過ごしたジョンは悪さばかり働き、里親の手を焼かせている。
 友人とともに、AtMを不正操作して入手した金を使いゲームセンターで遊んでいたジョンは、警察官が写真を手に自分を探していることを知り逃走を図る。そこへ、ショットガンを携えた大男が現れると、警察官を銃撃した。
 異様なことに、警察官も大男も銃弾では倒れない。ジョンは大男の助けも借りて、辛うじて警察官を振り切る。
 ジョンには大男の姿に心当たりがあった。母サラが幼少の頃から繰り返し語り聞かせた、ターミネーターの特徴そのものだったのだ。だが、このターミネーターは、未来のジョン自身がターミネーターのT-800モデルのプログラムを変更、現代のジョンを守るために送りこんだものらしい。一方のコンピューターは、液体金属で構成された最新型のターミネーター、T-1000(ロバート・パトリック)によってジョンの抹殺を画策した。T-1000はいちどでも触れた人物の姿をコピーして成り代わることが出来る。その代わり、入れ替わった相手は必ず殺される。
 念のために里親へと電話をかけたジョンは、既にふたりが殺されていることを知った。T-1000が次に罠を張るとすれば、恐らくサラに入れ替わるはずだ、とジョンは気づく。T-800がジョンの命令に絶対服従であるのを利用し、ジョンは危険を顧みず、母の救出に向かった――


TOHOシネマズ日本橋、エレベーター正面に掲示された『ターミネーター2』上映時の『午前十時の映画祭11』案内ポスター。
TOHOシネマズ日本橋、エレベーター正面に掲示された『ターミネーター2』上映時の『午前十時の映画祭11』案内ポスター。


[感想]
 アクション映画が好き、と言ってるひとのなかに本篇を観てないひとなんかいるのか? と思ってしまうくらい、もはや歴史的スタンダードとなった感のある傑作だ。
 単品でも充分鑑賞に耐えるが、しかしそれでも忘れてはいけないのは、本篇が“続篇”である、という点だろう。前作の成功があって本編が誕生した、というばかりでなく、構成的にも前作を踏まえ、映像表現としても、前作に観られた、制作上の制約があるが故の拙さを徹底して補っている。スタッフが、続篇として、前作の物語や世界観を破壊することなく、映画としてその“先”を目指した意識の高さが強烈に窺える。
 エンタテインメントとして完成された前作で、いちばん勿体なかったのは、骨格だけになったターミネーターの動きのぎこちなさだろう。あの状態でもまだ迫ってくる、という恐怖は描けているし、当時の技術、スタッフの技能からも最善を尽くしたのだろう、と評価は出来る。
 しかし、前作が大ヒットしたからこそ、大きな期待を背負った本編は、更に完成されたものであり、かつ前作を上回るものでならなければいけない。そういう強い意思は、プロローグである未来の描写と、新たな敵T-1000のキャラクター性、表現からも如実だ。
 前作から続けて観たひとは、恐らく冒頭でハッとするはずだ。いきなり骨格のみのターミネーター、T-800が登場するが、動作に不自然さ、ぎこちなさがまったくない。昨今のCG主体の映像にも劣らない、それどころか、限界まで実写を用いているからこそのリアリティは、CGが発展したあとてはなかなかお目にかかれない。
 その一方で、CGをふんだんに活用したと思しいT-1000の表現もまた圧巻なのだ。必要に応じて腕を巨大な刃物に変えたり、床に擬態して得物の背後から立ち上がってくる描写など、従来の特殊撮影では困難な表現を、1991年にして極めて高いクオリティで実現している。液体の身体を自在に変形させ、様々なシチュエーションで出没し、銃弾を受けても穴が開くだけであっさりと塞がる、という敵役は、前作のT-800を凌駕し、ホラー映画二も等しい恐怖をもたらす。 
 T-1000のこうした特色活かしたアクションの数々も素晴らしい。威力の強い銃弾を受けて体勢を崩しながらもサラたちに肉迫し、身体の一部を吹き飛ばされても、液体なので吸い付けることでもとに戻ってしまう。この特性を全力で活かしたクライマックスは、もはや一瞬たりとも目の離せないインパクトと面白さに彩られている。
 堅牢なT-800と、状況に応じて姿を変えるT-1000の戦いはそれだけでも充分すぎる見応えを生んでいるが、しかし本篇を傑作にしているのは、SFとしての緻密だ。
 それまではただ、いつか襲いかかってくる刺客に怯えながら、来たるべき終末に備えるよりほかなかったが、サラがいちど試みた無謀な抵抗が、未来のジョンが差し向けたT-800という心強い味方の登場で、実現の見込みが生まれる。そうして、ただ守りに徹する訳ではない、次のチャプターへと物語が発展していく。それまでが、前作の構成やイメージを踏襲していればこその内容であればこそ、このギアシフトは鮮烈だ。本篇の真価は、この反撃以降にある、と言えるかも知れない。
 また、このくだりと相前後して、ジョンと彼を護るT-800の関係性が発展していく描写が増える点も重要だ。学習型のAIであることを活かし、ジョンに教えられるスラングや、この世代のコミュニケーションを吸収していくT-800。いいところでバッチリとハマる台詞を繰り出す辺りにはいちいちニヤニヤさせられるが、それが同時にジョンとの絆の深まりを表現する。サラが終盤手前でいみじくも「ジョンを護る父親として相応しいのは彼かも知れない」とモノローグで語るように、その姿は少々世間に疎い武骨な父親のようで、だからこそジョンとのやり取りが微笑ましく、そしてクライマックスの感動と、語り草となる名場面へと繋がっていく。
 前作もその無駄のないエンタテインメントぶりに圧倒されたが、本篇はそれよりもゴージャスでありながら、更に整っている。
 本篇ののちも『ターミネーター』はキャメロン監督の手を離れながら続篇が撮られ、権利を取り戻したキャメロン監督自身の製作による正統的続篇も作られたが、それも含めて本篇を超えることは出来なかった。続きを作ってみたくなるのも理解の出来る設定と世界観の魅力は、しかし本篇以上に完璧に活かすことは困難だろう。大袈裟ではなく、映画史が続く限り、SFアクションの金字塔としと語り継がれるレベルの傑作なのだ、と思う。

 ところでわたしは、映画感想の記事をアップする際、鑑賞した劇場に掲示されたチラシやポスター、宣伝素材の写真を添えている。
 本篇でも午前十時の映画祭11での公開当時、館内に掲示されたポスターをアップしているが、ふと思い立ち、自宅を漁ってみた。そうして出てきたパンフレットらしきものを、今回はトップに掲げたわけである。
 ……実はこれ、パンフレットではなく、試写会などに訪れた関係者に配布されるプレスシートのほうらしい。
 公開当時、私の家は映画業界に若干関わりのある業務に携わっていたため、たまーに宣伝素材の類が出てきたりする。しかし、まさかプレスシートが残ってるとは思わなかった。
 当初勘違いしたのは、平綴じではあるがページ数が多く作りも凝っていたからだ。だが、よくよく内容を見ると、プロデューサーがプレスシートを手にした関係者に向けて、内容を極秘にするよう要請する文章が載っている。さすがに、販売されるパンフレットではまずあり得ないだろう。試しに“ターミネーター2 パンフレット”で検索をかけてみると、似て非なる画像がたくさん出てくる。販売されているパンフレットにはロゴになった邦題があしらわれているが、私の持つものには原題のロゴしかない。
 プレスシートの段階でここまで作り込んでいるあたりに、配給会社の期待ぶりが窺える。当時の雰囲気を知るうえでなかなか貴重な資料と言えよう――大事に保管しておかないと。


関連作品:
ターミネーター』/『ターミネーター3』/『ターミネーター4
エイリアン2 完全版』/『タイタニック』/『アバター』/『アリータ:バトル・エンジェル
トータル・リコール(1990・4Kデジタルリマスター)』/『グリーン・ホーネット』/『ヤギと男と男と壁と』/『ペイチェック 消された記憶』/『僕はラジオ』/『ルーキー(1990)
オズの魔法使』/『地球爆破作戦』/『ダーティハリー2』/『2001年宇宙の旅』/『シャイニング 北米公開版〈デジタル・リマスター版〉
マトリックス』/『ステルス』/『アイ,ロボット』/『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン

コメント

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