日暮里の新店、とんこつ 昇をけっこう早々と訪ねてみた。

 わけあって伏せる先日の話……っても、条件で絞り込めるんですけどね。

 昨年の10月に初めて訪問した麺菜酒家こころですが、現在はもうありません。あの近くにはときどき立ち寄るのですが、あるとき、気配がなくなっているのに気づいて愕然としました。決して悪くない、と思い、そのうち再訪するつもりでいたのに、叶わないままなくなってしまった。
 なにせあんまりあっさりと消滅してしまったため、なんとなく空いたテナントのその後に注視していたら、案の定、ほぼ居抜き、看板などだけ変更したかたちで新しいお店が入っていた。店名は《とんこつ 昇》、オープンは9月29日。こういうのに遭遇することもそんなにないので、訪ねてみました。

とんこつ 昇の豚骨らーめん 醤油。

 まったく情報を持ち合わせないラーメン店を初めて訪ねる場合、とりあえずは基本となりそうなメニューを選ぶのが鉄則です。ゆえに注文したのは、店名にもある豚骨らーめん。
 博多ラーメンの影響もあって、豚骨をメインとするお店では麺の茹で方を指定することが可能、ということが多いですが、このお店は茹で具合だけでなく油の量、更には味の濃さまで指定出来る。これも情報はまったくないので、すべて普通を指定しました。あとで調べたら、実はタレも塩か醤油が選べるみたいでしたが、特に指定しなかったら醤油が来ました……っていうか、カウンターの向こうにいる店員さんから茹で具合などを問われた際、聞き取りにくかったところに含まれていたかも知れない。こっちもはじめからカスタマイズはぜんぶ普通で通すつもりでいたので、あんまりちゃんと聞いてなかったし。次回は気をつけよう……。
 料理が出てきて驚いたのは、匂いに生臭さをまったく感じないこと。豚骨は炊き方次第で色々な味が出せますが、豪快なところ、粗いところだと生臭さが強まりがちです。匂いにクセがないのは、丁寧に炊いていることの証明。この時点で既に好感を覚えます。
 麺は中太のストレート。これはちょっと意外でした。硬さの調整が出来る、ということから、豚骨に多い細麺かと思っていた。しかも普通に指定した麺は、芯の強さを留めつつも適度な弾力のある柔らかさで、存在感が強い。濃いめのスープの絡み方が弱いので、麺を啜る量やスープとの兼ね合いで、味わいはけっこう変化がつけられる。スープのパンチは強めですが、けっこう懐の深い作りになってる。
 具材はチャーシュー1枚に海苔1枚、それから茹でたほうれん草。刻みネギもありますが、こちらはスープの中でだいぶ潜んでいる。正直に言えば見た目は寂しいものの、味付玉子やもやしなどトッピングもある。まずは基本、にこだわるあまり、トッピングに考えが及ばなかった私が悪い。
 ただ、種類は少ないけど基本の具材としてはけっこういい選択。チャーシューは肉ならではのムチムチ感、ジューシーさをちゃんと留めながらクドくないので、濃厚なスープと馴染みつつアクセントを添えている。特に絶妙なのがほうれん草です。茹でてあるので歯応えは柔らかく、しかし食感と、爽やかな苦みがある。味の変化がつけやすいとは言い条、やっぱり口の中が濃さに倦んでくるのを、ほうれん草の苦みと爽やかさがリセットをかけてくれます。最近の豚骨らーめんではあまり見たことのない具材ですが、少なくともこのお店の具材として基本に据えられるのも納得。
 シンプルですが濃厚、なおかつ食べやすいので、けっこうなペースで箸が進み、あっという間に具材は完食。スープも残り少なかった。私は持病の関係で、ラーメンを食べるのはいいとしてもスープの完飲はなるべくしない方針ですが、ここのお店のなら飲み干せそうでした。我慢したけど。
 同じところに入っていた前のお店も美味しかったと思う一方、あまりにもまとまりすぎてインパクトも個性も感じにくい、という欠点があった。しかしこちらは、ちゃんと豚骨としての風味をしっかり堪能させながら、かなり食べやすい。豚骨を基本にしつつ、辛味噌や担々麺、油そばも用意していて、味のカスタマイズやトッピングも合わせると、繰り返し訪れる楽しみもある。オープンしたばかりで気合いが入っていた、というのもあるでしょうが、店員の方も感じはよかったので、この様子ならけっこう支持されるのではなかろうか。少なくとも私は、そんなに遠くない時期に再訪できないか、もう考えはじめてます。

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