『まんが日本昔ばなし』第二十七回

  • 猫とネズミ

 小さな畑を作って細々と暮らしていたおじいさんとおばあさん。ある日、畑仕事のさなかに雨に追われたおじいさんは帰り道、濡れて蹲った子猫を拾う。ほかに家族もないおじいさんとおばあさんは子猫を我が子のように可愛がる……

 猫は喋れないのにネズミは平然とおじいさん・おばあさんと会話しているのはいったい何事。優しい行いは報われる、という如何にも昔話らしい昔話ですが、どうも意思疎通能力の境界線が時々不思議でなりませんです、はい。

 相変わらず美術としての実験性は健在で、オーソドックスなアニメ絵もクレヨンのようなタッチで構成した背景に乗せることで独特の世界を演出しております。

  • 蛙の恩返し

 井戸端で蛇に襲われかかっていた蛙を助けたおじいさん。代わりに娘を嫁に寄越せ、と言われ、所詮蛇だと高を括って承諾したが、蛇は若い男に変化して訪れ、約束の履行を要求する……

 線を強調した絵柄が特徴的な話。先の『猫とネズミ』は背景とキャラクターの作りをまるっきり違えることで独特の雰囲気を作っていましたが、こちらはべったりとした背景に、ひょろりとしたキャラクターを乗せて、背景とのあいだに統一感をもたらしています。

 内容的には、蛙も蛇も喋っているぶん、まだ不思議な印象はなく筋は通っています。ただ、ふつう異種が人間を連れ去る時は食べることを目的にしていると思われるのですが、この話に限らず、民話の中では本当に嫁にしようとしているのがちょっと興味を惹かれます。理解を超えた異形に対して敬意を示す、というよりは魔物として見下している意識のようなものなのか。

 まあ、そんなことは関係なく、心静かに楽しめる名品です。しかしあの娘、すぐに家を出て正解だったと思う。

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