背筋『目が』

背筋『目が』(Amazon.co.jp商品ページにリンク) 『目が』
背筋
判型:A6変形判
版元:ポプラ社
発行:2026年6月25日
isbn:9784591190203
価格:715円
商品ページ:[amazon楽天BOOK☆WALKER(電子書籍)]
2026年7月28日読了

 通常の文庫の半分程度、という特殊な造本と、コンパクトながら意外性のある恐怖を描いて話題を呼んだ『口に関するアンケート』と同じ体裁にて刊行された、背筋の単行本第4作。“視線”にまつわる研究と、奇怪なアルバイトにまつわる怪談、そしてある恋人の奇妙なエピソード、その先にあるものとは。
 尺としては短篇程度のため、サクッと読めル。あまりにも軽く読めるので、ちょっとコストパフォーマンスが悪いようにも思えてしまう――価格には、エンボス加工を施した表紙や、専用の意匠も用いられた文字組も反映されているはずで、この造本も含めて手に取ること自体が本書の楽しみではあるのだが、そう捉えられないとお高く感じてしまう。
 作品としては、短い怪談を積み重ねたような構成となっている。冒頭は“視線”というものの科学的な検証が導き出した不可解な事実を採り上げた掌篇で、これだけでも興味深いが、続くエピソードで、まったく違った切り口で展開してくる。一体どのような繋がりをするのか、という疑問に、各篇の不気味さ、おぞましさが積み上がって、終幕で昇華される。驚きと、尾を引く薄気味悪さのある結末は、『口に~』にも近い余韻がある。
 ただ、『口に~』ほどの充実感は得にくいかも知れない。今回も、小さいながらに様々な工夫を凝らした造本だが、前作ほど仕掛けと製本の細工が、もうひとつリンクしていない印象を受ける。実はきっちりと、本文のアイディアが取り込まれているのだが、前作以上の衝撃には繋がらなかった。
 この発表の仕方は、昨今の出版不況において、なかなか興味深いものだと思う。本文そのものはちょっと長めの短篇小説程度だが、この尺を発表する媒体が減ったいま、著名な作家が追随すると、面白いことになるかも知れない――そこまで考えての体裁ではない気がするし、たとえそれで人気作家が同様の体裁で発表しても、もっと評価されていい才能が売れるかどうかは未知数で、なかなか難しい。
 本書のような体裁で作品を発表出来ることが、著者に対する期待、信頼感があることの如実な証明だ。造本や文字組にも趣向を凝らして、この作品をこの体裁で発表する意義を添えているのは、詳細をほとんど書かずに《カクヨム》に発表することで話題を攫い、その名を知らしめた『近畿地方のある場所について』の著者ならではのこだわりだろう。所有することそれ自体がひとつの楽しみになる作品である。


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