『悪魔が来りて笛を吹く』

 昨年に続き正月に登場した、稲垣吾郎主演による金田一耕助シリーズ第4作は、奇しくも個人的に市川版金田一が新たに作られるならこれを、と切望していた傑作。大量毒殺事件の犯人のモンタージュに酷似した顔を持つ元華族の死を皮切りに、退廃に満ちた豪邸内を死が満たしていく――

 石坂浩二とも古谷一行とも違う、コミカルな金田一耕助像を明確にしたかったのかも知れませんが、今回はちょっとふざけすぎ。毎度鉢合わせる橘署長(塩見三省)*1と同行するのはいいにしても、美禰子(国仲涼子)までが終始同道しているのはさすがに変です。全般にユーモアを押し出しすぎたせいで、独自性は強まりましたがどうも全体が浮ついていたのは残念。

 で、最後は40分近い尺を費やしての犯人の独白。犯人役の俳優の見せ場に、ちゃんと金田一も存在感を出させていたのは巧い。でも長い。けっきょく金田一よりも犯人のほうが強まってしまったのは、謎解きもののサガとは言い条、どうにかならなかったものか。

 個人的には稲垣版金田一も「これはこれで」好きなのですが、今回は採り入れたカラーを強調しすぎてちと鼻についた印象でした。ま、楽しかったのでいいんですが。

 ……でもやっぱり、これを市川崑×石坂浩二で観てみたいよなあ。本当にやってくれないかなあ。岩井俊二も今度は純粋にサポートとして手を貸すかたちで。

*1:今度の転勤ではさすがに署長ではなくなったようですが。

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