『地獄少女 二籠』第十九話 湯けむり地獄、旅の宿

 太閤秀吉の時代、峠で朽ちた車輪の変化――輪入道は、そこで閻魔あいと巡り逢う。彼女に誘われるままに赴いた温泉地で、輪入道はあいの陰惨な“仕事”を目の当たりにした。そして現代、同じ温泉地にふたたびあいは招かれた……

 しばらく前に描かれた輪入道“誕生”に続いて、あいとの出逢いを題材にした1話。地獄送りの動機やその趣向ではなく、因果そのものを描こうとした、いつもとはちょっと異なる切り口は面白い――のですが、序盤はその狙いが解りにくく、現代と過去がやたら切り替わる散漫さが気になりました。

 そして狙いはいいのですが、何故輪入道があいに仕えるようになったのか、その心理的な裏付けがないのは若干不満でした。まあ、世の中何もかも動機があればいいってものでもなく、こういう成り行きであっても構わないのですけれど。

 話としての完成度はいまいちな一方、久々にサービスだけは盛り沢山でした。舞台が舞台とはいえオープニングから入浴シーンばっかりですし、地獄送りの場面も久々に“地獄コント”のふたつ名が相応しい展開。最後、のぼせたきくりを運ぶ輪入道のあんまりなやり方まで含めて、楽しめる描写に欠かなかったのは良し。

 ただ今回、過去も現代も、地獄送り以降の描写が従来のルールから外れているのは問題。地獄送りにされた人間は現世から消えて、所在が確認できなくなるというのが通例だったはずで、屍体が残ったり、“消えた”という事実があっさりと認定されてしまうのはおかしい。……まあ、昔からその辺の不統一はあったことなんですけどね。後者はちょっと連絡が取れなくなっただけで「何か起きた」と判断するせっかちがいた、と捉えればいいわけですし。

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