「弩」怖い話4 Visit Invisible

「弩」怖い話4 Visit Invisible 「弩」怖い話4 Visit Invisible』

加藤一

判型:文庫判

レーベル : 竹書房文庫

版元:竹書房

発行:2007年4月6日

isbn:9784812430488

本体価格:552円

商品ページ:[bk1amazon]

「超」怖い話』シリーズではしない試みを実践する、という意図のもとに企画された姉妹編『「弩」怖い話』の最新第4巻は、いわゆる“視える人”の体験談に照準を絞っている。普段から“怪異”を身近にする人々は、どのように恐怖を感じるのか、という観点から綴った、実話怪談のジャンルでも比較的珍しい切り口を採用している。幼少時から“視える”母の薫陶を受けた圭一という人物の体験を綴った連作や、時間差で怪異が再現する『ブロード攻撃』、特にそんな才能もなかった人物が思わぬきっかけで能力を開花させた『それが日常』など全34篇を収録する。

 毎回変わった切り口で楽しませてくれる本シリーズだが、今回は正直、読みながらさほど本筋である『「超」怖い話』との違いをあまり感じなかった。“視える人”の体験談に絞り、そこに感じる恐怖を抽出しようとした試みは意欲的だが、しかし仕上がったものをいざ並べてみると、手触りは『「超」〜』と大差ない、という結果に陥ってしまったようだ。

 考えてみれば当然で、普段からそういうものを目にしているからこそ感じる恐怖を抽出しようが、唐突に怪異に遭遇したことで感じる恐怖を羅列しようが、現れてくるものはあくまで同じ“恐怖”なのである。最大でも20ページ程度の短い話主体で綴られた本書は、構成的にも『「超」〜』との差別化が成立せず、結果的には『「弩」〜』の名を冠して出した理由が解りにくい作りになってしまった。

 エピソードをそれぞれ検証してみても、さほど印象的なものはない。唯一、最長の『罪と罰』があまりに意外な結末であるために記憶に留まるものの、あとは怪談として凡庸な出来としか思えなかった。一般に、怪談になりにくい“視える人”の体験から、きちんと恐怖を抽出して怪談に仕立て上げる職人技には感銘を受けるものの、それを売り物にするのはちょっと違うのではなかろうか。

 怪談読みとしてその切り口と完成度には敬意を表するものの、読み物として、純粋に“実話怪談集”の仕上がりを評価すると、あまりいい出来とは言い難い。これなら普通に『「超」怖い話』本編に、適宜分散して収録したほうが良かったのでは、というのが正直な印象だった。

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