『ザ・フィースト』

原題:“Feast” / 監督:ジョン・ギャラガー / 脚本:パトリック・メルトン、マーカス・ダンスタン / 製作総指揮:ベン・アフレックマット・デイモンウェス・クレイヴン、クリス・ムーア / 撮影監督:トーマス・L・キャラウェイ / 音楽:スティーヴン・エドワーズ / 出演:バルサザール・ゲティ、ヘンリー・ロリンズ、ナヴィ・ラワット、ジュダ・フリードランド、ジョシュ・ザッカーマン、ジェイソン・ミューズ、ジェニー・ウェイド、クリスタ・アレン、クルー・ギャラガー、エリック・デイン、デュエイン・ウィテカー / ライヴプラネット製作 / 配給:Art Port

2006年アメリカ作品 / 上映時間:1時間26分 / 日本語字幕:雨宮健

2008年03月22日日本公開

公式サイト : http://www.feast-movie.jp/

シアターN渋谷にて初見(2008/03/22)



[粗筋]

 テキサスの片田舎、それぞれの事情を抱えて飲んだくれる者たちが蝟集する酒場に、突如モンスターが襲来する。様々な抵抗も虚しくひとり、またひとりと命を落とす人々――果たして彼らは無事、夜明けを迎えられるのだろうか……?

[感想]

 ……何だか多くのホラー映画にそのまんまつけても通用するんじゃないか、と思うくらい有り体かつ簡単な粗筋で恐縮だが、しかしこの作品はあまり粗筋など仕入れずに観に行ったほうがいい。というか、ぶっちゃけた話、人物名が実にてきとーで、そのくせやたら人が多いので、粗筋を書くのはけっこう面倒なのだが。

 とりあえず解っていればいいことは、これがホラー映画を非常に丹念に研究したうえで、そこに偏在する“お約束”を逆手にとりつつ、笑いを取り、意表をつくことで作りあげた、極めて積極的にB級たらんとした作品であるということだ。

 細かいことを書いてしまうと、観たときの楽しみが殺がれてしまうのでなるべく避けたいが、とりあえず“死ぬ順序が無茶苦茶”であることはまず触れておくべきだろう。こういう映画を機能させるためには普通こういうタイプの人間が必要で、また道義的にもこういう人物は残してこいつはとっとと消す、という定石がホラー映画にもあるわけだが、本編はそれをことごとく裏切る。裏切ることで、普通ならだれかねない中盤にも緊迫感を保ち、意外性に富んだ展開を繰り返す。“お約束”を解っているからこその特異な物語が構築されているわけだ。

 ただ個人的に惜しい、と思うのは、クリーチャーの行動理念が明らかにそういう意外性に奉仕するためだけに構築されていて、いまいち一貫性がないことと、閉所に追い詰められた人間達の極限状態を描きたいのか、ただひたすらに放恣なクリーチャーの暴虐に翻弄される人々の様を描きたいのか、やや統一が甘く、ために終盤での意表をついた展開における心理状態が少し浮いて映ってしまう点である。この辺りの一貫性が保たれていれば、ホラー映画のセルフパロディというだけではなく、一種文芸的な段階にまで上りつめていた可能性もあるだけにやや勿体なく感じたが、しかしそこを敢えてB級であることを貫いているとも取れるあたりが改めて潔い、と感じる。

 恐らく、どんなホラー映画でも素直に恐がれるという人なら、並大抵でない恐怖を味わえるだろう。しかし、その現実から遊離した部分から、ホラー映画に笑いを見出すことの出来るような人であっても、終始ニヤニヤしっぱなしにさせられるような作品であり、最後までのちのち語りたくなるようなネタに事欠かない、まさにおもちゃ箱のような映画と感じるはずである。よくよく検証すればあまりに勢い任せで破綻している箇所もあるが、なぁに、そういうところまで含めて、実に己を弁えた、完璧なB級映画と言えよう。

 なお、本編はベン・アフレックマット・デイモンが中心となって実施している企画『プロジェクト・グリーンライト』の第3回で優勝した脚本がもととなっている。本編の成功がきっかけとなって、脚本家の二人組は大ヒットシリーズの最新作『SAW4』の脚本に起用され、こちらも好評を博した。結果、今年は『SAW5』に『Feast2』『Feast3』と3本の制作に携わっているそうである。『SAW4』で、ジャンルではなくシリーズのお約束も踏まえた作品を生み出せると証明しただけに、いずれも公開が待たれるところだが……『SAW5』は兎も角、本編の続編はちゃんと日本に入ってくるのかどうか。

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