原題:“Iron Man 2” / 監督:ジョン・ファヴロー / 脚本:ジャスティン・セロー / キャラクター創造:スタン・リー、ドン・ヘック、ラリー・リーバー、ジャック・カービー / 製作:ケヴィン・フェイグ / 製作総指揮:アラン・ファイン、スタン・リー、デヴィッド・メイゼル、デニス・L・スチュアート、ルイス・デスポジート、ジョン・ファヴロー、スーザン・ダウニー / 撮影監督:マシュー・リバティーク,ASC / プロダクション・デザイナー:J・マイケル・リーヴァ / 編集:リチャード・ピアソン,A.C.E.、ダン・レーベンタール,A.C.E. / 衣装:メアリー・ゾフレス / 音楽:ジョン・デブニー / 音楽監修:デイヴ・ジョーダン / 出演:ロバート・ダウニーJr.、グウィネス・パルトロウ、ドン・チードル、スカーレット・ヨハンソン、サム・ロックウェル、ミッキー・ローク、サミュエル・L・ジャクソン、ジョン・ファヴロー / 配給:Paramount Pictures Japan
2010年アメリカ作品 / 上映時間:2時間4分 / 日本語字幕:松崎広幸
2010年6月11日日本公開
公式サイト : http://www.ironman2.jp/
TOHOシネマズスカラ座にて初見(2010/06/11)
[粗筋]
スターク社の最高責任者であるトニー・スターク(ロバート・ダウニーJr.)が、自らが“アイアンマン”であることを告白した、そのあとの物語。
兵器の開発をやめながらも、この“アイアンマン”フィーバーによってトニーと彼の会社は時代の寵児となり、彼は父の時代からの念願であった、スターク・エキスポの開催に漕ぎつけた。
だが、状況は決して順風満帆ではない。まず、政府がトニーの開発したアイアンマン・スーツを、個人が所有するには危険極まりない兵器と位置づけ、政府への譲渡を要求してきた。公聴会ではライヴァル企業ハマー社のジャスティン・ハマー(サム・ロックウェル)が熱弁を振るい、アイアンマン・スーツの危険性を訴える。トニーはハマーの話を逆手に取って、未だスーツが自分にしか開発出来ず、自分以外に利用出来るものがいないことを証明、この場はどうにか言いくるめたものの、軍部は諦めず、トニーと親交のある軍幹部ローディ(ドン・チードル)に工作を命じる。
その矢先、モナコ公国で開催されたF−1レースで、事件が起きた。ドライバーを押しのけ自ら出走したトニーを、奇妙なスーツと、電流の迸る鞭を携えた男が襲撃してきたのだ。秘書のペッパー・ポッツ(グウィネス・パルトロウ)がギリギリで運んできたスーツを装着、辛うじて退けることに成功はしたが、トニーを襲撃した男――イワン・ヴァンコ(ミッキー・ローク)の装着していたスーツのエネルギー源が、トニーの開発したアーク・リアクターと同じものであったことが、事態を紛糾させる。
アイアンマン・スーツを巡っての駆け引きが激化する中、だがトニーは密かにもうひとつ、深刻な問題を抱えていた。彼がアイアンマンになるきっかけになった事件の過程で、心臓代わりとして埋め込んでいたアーク・リアクターが、トニーの身体に毒素を蔓延させ、じわじわと彼の心身を蝕んでいたのである……
[感想]
『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』でのアカデミー賞ノミネート、そして世界的にその名を知られた名探偵役に抜擢された『シャーロック・ホームズ』と近年活躍目覚ましいロバート・ダウニーJr.であるが、一時期は薬物に手を出し、表舞台からだいぶ退いていた過去がある。そんな彼の復活の狼煙を上げたのが、前作『アイアンマン』だった。
危険人物扱いされていたとはいえ、演技力に定評のあった彼は、薬物依存の治療を受けたあとも脇役を中心に出演は続いていたのだが、『アイアンマン』で復活の印象を鮮やかに齎したのは、作品自体が優れたエンタテインメントであったことこそ大きな理由だろう。ここ数年、ハリウッドで製作される大作映画の多くを占めるようになったアメコミ原作による作品のなかでも異彩を放つ、大人を対象に練られた洒脱なストーリーと、大作映画ならではの凝ったヴィジュアルが高く評価されたのだ。
好評を受け、当然のように製作されたこの続篇においても、大人の観客を視野に入れたリアルで洒脱なストーリー性、大作アクションならではの派手な見せ場の投入、といった良さはきちんと踏襲されている。前作からして、ツボを弁えた作りが受け入れられた格好だが、そのセンスは本篇でも健在だ。
だが、なまじ好評を博した前作があるせいで気負いが著しかったのか、あまりに盛り沢山にしすぎて、整理整頓が行き届いていない嫌いがあるのが惜しまれる。トニー・スタークに彼とのロマンスの気配を漂わせるペッパー・ポッツ、トニーの親友であるローディにマーヴェル・コミック全体に絡んでくる黒幕ニック・フューリーといった継続出演のキャラクターに加え、今回の敵役ウィップラッシュことイワン・ヴァンコ、スターク社への敵対心から暗躍するジャスティン・ハマー、そしてフューリーの部下で謎多き女ナタリー・ラッシュマンと、ストーリー的にもマーヴェル・コミックの世界観的にもインパクトのあるキャラクターが新たに投入されているが、それぞれに見せ場や物語での重要性をきちんと用意しようとするあまりに、どうもまとまりがよくない。特にナタリー・ラッシュマンというキャラクターがかなり浮いている、という印象を免れていなかった。ごく普通の、他のシリーズものと世界観が絡まないような作品であれば、彼女はトニー・スタークとペッパー・ポッツの微妙な関係に介入していくべき役回り、という立ち位置なのだが、彼女の活躍の仕方はそれ自体かなり奇妙だった。
第1作であらかた失われてしまったように映るモチベーションを、人物像を掘り下げることで種子を見つけ出し、新たに育てたのは見事だが、しかし見た目の派手さに対していささか陳腐で、少々御都合主義が過ぎる感がある。トニー・スタークの父親がどんな仕掛けをしたのかは、すれっからしなら見抜くことが出来るし、その後の経緯はやはり出来過ぎだ。前作も本質的には御都合主義であったが、ユーモアの彩りが優れていたので洒脱な印象を添えていたが、本篇は陳腐な組み立てのほうが際立ってしまった。
とはいえ、やはり一般的なヒーローものとは異なる、大人であるからこその悩みや滑稽さを強調した語り口は魅力的だし、前作以上にふんだんに盛り込まれたアクションシーンは見応えに富んでいる。盛大な空中戦と、大量の自動操縦タイプ・スーツとタッグで戦うくだりなどはアクション好きならば血が沸騰するような感覚を味わえるはずだ。
しかし本篇で何よりも見応えがあるのは、ロバート・ダウニーJr.とミッキー・ロークとの対決である。ミッキー・ロークはその美貌で高い人気を博しながら、独善的な行動などが原因で一気に凋落、一部の支持者の計らいで脇役として活動していたが、自らの境遇をそのまま反映したような人物像を演じた『レスラー』にて復活を遂げた。似たような経緯を辿ったふたりの共演は、それだけでも新鮮な話題性があるし、双方オスカー候補にも挙がるほどの演技派でもあり、直接対決のくだりはアクションの面でも演技の面でも迫力充分だ。
やや雑然としてしまった感は否めないが、表現の洒脱さは健在だし、アクションにしても配役にしても贅沢な趣向が堪能出来る、コクのある大作である。……でも続篇ではもう少し、ナタリー・ラッシュマンことブラック・ウィドーに存在意義を付与してあげてください。
関連作品:
『アイアンマン』
『レスラー』
コメント
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