ドリパス企画初参加・丸山明宏主演『黒蜥蜴』(1968年作品)。

 大きな山を越えるまであと一歩。が、こればっかりは観逃すわけには行かない。ちょーど出かけようとした矢先に取引先から連絡があって「すみませんこれだけは勘弁してー!」と訴えつつ赴いたのは、今年元日以来となる銀座テアトルシネマ――しかし実は3月上旬にいちど訪れている。そのときは、週末に催されるはずだったイベント上映の座席指定券を確保しに行ったのです。上映予定日は、3月12日でした――が、ご存知の通りの事情で、上映中止。そして本日は、その仕切り直しなのです。

 作品は、江戸川乱歩の代表作を三島由紀夫が脚色、戯曲として上演されていたものを、丸山明宏(現・美輪明宏)主演&深作欣二監督で映画化した『黒蜥蜴』(松竹配給)

 現在に至ってもなお美輪明宏が大事に上演しているような作品なのでストーリーは完成されているのだろう、と思ってましたが、これは想像以上にすごかった。乱歩の原作の面白さ、潜んでいたテーマ性を的確に抽出し、グロテスクさも留めながら洒脱な演出でうまく和らげ見事に完成させている。何より丸山明宏(と敢えて呼ぼう)の美しいこと! ただの美女が演じたのでは決して表現出来ない色気をまとっていて、完璧すぎるくらいのはまり役でした。

 と、映画自体は素晴らしかったんですが、いまひとつイベントとしての演出や配慮がなかったのがちょっと残念。ポスターの掲示も、待機中に主題歌を流すような工夫もなかったし、直前の上映が押していたようなのに安易に客を入れてしまってだいぶ混雑していたし――と、主催者側も劇場側も、ごくごくルーティンでやっているような雰囲気があって、年がら年中映画館を訪れている私のような人間にはどうも物足りなかった。映画自体は素晴らしかったんですけど、サッパリしすぎじゃなかろーか。

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