無垢な暗殺者→エロ馬鹿な犠牲者ルート。

 ときどき、ずっと観たい観たいと思っていた作品が、まったく同じ日に封切られて困ることがあります。ハシゴ出来る時間割であり、気持ちにも余裕があれば一気に観てしまいますが、そううまく行くとは限らない。片方が単館だったり上映館が少なかったりすると、移動時間を考慮に入れたらもう駄目、ということがままある。そういうときはもう、より観たい方を選んでそちらを優先し、あとは何とか平日に時間を作って残りを押さえるしかない。

 しかし今日は、そんな悠長なことは言えないレベルでした。何せ、待っていた作品が、4本も封切られてしまったのです。

 既に公開済の作品のなかにも観たいものは多々残っている。うっかりすると、予定の隙間にねじ込むことさえ難しい。予定が発表され始めた先週末ぐらいから色々と検討を重ね、とにかく土曜日に2本、日曜日にも大成龍祭2011のついでに1本押さえる方向で予定を組んでみた――正直あまり乗り気でないのは、封切り日でもわたしがふだん利用する朝一番の回であれば、さほど極端な混雑に遭遇せずに済みますが、しかしハシゴする場合はどうしても夕方近くになる。この時間帯はどこの劇場も人出が多く、しかも選択した作品の都合上、土曜日という今日に新宿、渋谷という日本屈指の繁華街を渡り歩くかたちになってしまった。どちらの劇場も混雑が予想されるため、そもそも座席を押さえられるかも厳しい――利用している割引システムの都合上、基本的に窓口でないと購入できない私は、こういうときに困る。

 しかしあれこれ悩んでいても始まりません。一人客である私は、複数で訪れる人より座席を押さえやすいのですし、万一座席が埋まってしまっても別の作品に素速く切り替えよれるよう次善策を頭のなかで練りつつ、とにもかくにも出発。相変わらず不穏な空模様であることにも加え、ハシゴする距離が長いので、今日も移動は電車です。

 まずは新宿へ。訪れたのは2年振りとなる新宿ピカデリーです。前回来たのは2年前――奇しくも、あの日もハシゴでありました。あのときは同じピカデリーのなかでのハシゴゆえ苦労はありませんでしたが。

 ここは週末、常に混雑していることで有名な劇場ですが、今日もなかなかの人出。折からの節電運動のために、まーロビーの暑いこと。とはいえ、やや早めに到着するようにしていたお陰か、目当ての作品、狙っていた回は、だいぶ席が埋まっていたものの、無事に確保出来ました。

 本日の1作目は、『つぐない』のジョー・ライト監督&シアーシャ・ローナンが、小さい頃から殺人術を仕込まれて育った少女の戦いを描いたハンナ』(Sony Pictures Entertainment配給)

 偏愛する作品のコンビが、一転してアクション映画を撮る、というのに驚きと期待を覚えて日本公開を待ちわびていた作品です。出来映えは――満足。このコンビですから単純明快なアクションではないのですが、描写の奥行きもさることながら、タイトルロールのハンナが実に魅力的。電気の実態すら知らないので、初めて触れる電化製品に戸惑ったり、同年配の少女との交流に瞳を輝かせたり、という姿と、ほとんど熱を感じさせずに人を殺していく姿の対比が見事。そして何より、ラストの台詞が実にいい――素直にすべてを説明していないのでカタルシスに乏しく、つまらない、と感じる人もいるでしょうが、私はもう断然評価します。

 観終わると早足で駅に赴き、渋谷へ。電車だとそんなに時間がかからないのは有り難い。そして劇場も、渋谷駅から比較的近いので、次の作品も無事にチケットが確保出来ました。

 劇場は、TOHOシネマズ渋谷――先月に渋東シネタワーから改称、改装オープンしたばかりです。この前渋谷に来たときに場所と雰囲気は確認してありましたが、ちゃんと中に入るのはこれが初めて。とりあえず、ブログの感想に利用する写真を撮ろうと、鑑賞予定の作品のポスターを撮影しようとしたら、実はポスター部分はモニターになっていて、一定間隔で別の作品のポスターや動画に切り替わる仕組みで、シャッターを押そうとiPhoneを覗きこんだら別の作品になってました。劇場側としては張り替える手間がなくていいんでしょうが、私みたいに撮影しようとする人間にはひじょーにやりづらい。まあいいけど。

 本日の2作品目は、伝説の動物パニック・ホラーを『ヒルズ・ハブ・アイズ』などスプラッタ描写に定評のあるアレクサンドル・アジャ監督が3Dでリメイクした、ピラニア3D(吹替)』(Broadmedia Studios配給)

 なんでわざわざ渋谷まで来てこれを観たのかというと――都内では吹替で上映しているのがここ1館だったから。話題性を求めてやたらタレントやアイドルといった非専業の声優を使いたがる他の洋画と一線を画し、この作品では専業、或いは経験豊富な声優ばかりを起用している。しかもその中にはジャック・バウアー小山力也や、個人的にすごーく声が好きな白石涼子なんてのもいるので、ふだんはオリジナルの音響を優先して字幕で観るようにしている私も吹替で鑑賞したかったのです。

 先に観た『ハンナ』が説明を最小限にして奥行きのある作りにしているのとこちらはまったく対照的で、とにかく人がピラニアに食われまくる、ただそれだけと言っていい。しかし食われてもザマミロと思いたくなるような馬鹿ばっかり、かついっそ笑いたくなるほど徹底したエログロぶりで、怖いといや怖いのですが、最後には爽快感すら覚える仕上がり。まさに下劣なC級作品なんですが、だからこそ愉しい、と言える代物でした。『ハンナ』とは別のベクトルで大好きと言い切れる。

 ちなみにこのTOHOシネマズ渋谷、当初はオープン後なるべく早く訪れるつもりでいたのですが、ある理由から二の足を踏んでいた。最初に観ようと考えていたのは同じ3D作品の『カーズ2』だったのですが、実はこの劇場、他のTOHOシネマズ系列館と、3D上映の方式が違っている。そのために100円とは言い条、最初はやや値段が余分にかかるのと、他のシステムではだいぶ採用されてきた、普通の眼鏡着用者のためのクリップ式の3D眼鏡が、ここのシステムでは用意していない。いわゆる眼鏡on眼鏡スタイルの安定感の悪さを経験した私には、どーも利用する気が起きない。

 とはいえ、この『ピラニア3D』はどうしても吹替で鑑賞したかったですし、これまで利用したことのない方式ならいちど試してみてもいいだろう、と思い、いざとなったら多少不便でも他社のクリップ式眼鏡を使えばいいや、と考えて、敢えて臨んでみた。

 ……意外にも、使い心地が良かった。

 デザインは一般の配布するタイプの3D眼鏡そのまんまなんですが、どうもフレームの一部に少しだけ突起を作ったことが幸いして、普通の眼鏡にうまく引っ掛かり、多少頭を動かした程度では落ちない。クリップオンタイプに比べるとやっぱり少し焦点が狂って、線がブレる印象がありますが、それほど目に負担はかからない。上映システムの質がいいせいなのかも知れませんが、抵抗を覚えていた自分を恥じたくなるくらいに観やすかった。他のTOHOシネマズで用いている配布式の眼鏡でもそんなに問題なく立体感が味わえるので、今後はここでも遠慮なく3D映画を愉しめそう――渋谷地区にTOHOシネマズ系列館が出来ると、この界隈の単館作品とロードショー作品とのハシゴがしやすくなる、と思っていただけに、これは有り難い誤算でした。

 ……ともあれ、何とか2本、無事に消化。明日は六本木でハシゴに挑む予定です――ただ、こちらも座席を押さえられるか少々微妙なところなので、出かける前に空席状況を確認して、難しいようなら1本だけにするかも。

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