先週末ぐらいに、体調回復の見込みが立ってきた辺りで、既に計画は練ってました。状態によっては断念やむなし、とも考えてましたが、どうやら普通の食事が出来るくらいには恢復して体力は戻ってきた、心配していた陽気も安定している。それでも、不安があればすぐに切り上げてくる、と決めて、バイクにてお出かけ。
訪れたのはTOHOシネマズ西新井。まずはチケットの確保です。何度か触れているとおり、無料で鑑賞出来る枠が1回の上映ごとに定められているので、到着した時点で目当ての作品が取れない危険も考慮し、スケジュールは4種類ほど考えてありました。しかし、幸いにすべて第1候補が押さえられました。
本日1本目は、近年のディズニー・アニメ最大のヒット作の続篇、エルサにだけ魔法の力が宿った理由を知るため姉妹が冒険に赴く『アナと雪の女王2(吹替・2D)』(Walt Disney Japan配給)。……実は個人的に、1作目は評価しつつも思い入れがあんましなかったのです。とはいえここまでヒットしてしまうと観ておかない訳にもいかないので、遅ればせながら押さえてきた。
1作目で漏れていたポイントをうまく押さえて続篇を組み立ててます……が、やっぱり第1作は超えてない、というのが正直なところ。なにせ前作は『Let It Go』というキラーチューンがあったので、あれだけで押し通した感すらあり、今回はそれに比肩する楽曲とミュージカル・シーンを作り出そうと努力していることは窺えるけれど、どうしても一歩及ばず。とはいえ、前作の魅力は踏襲しているので、前作を単品として評価する、というより、その世界観やキャラクターに惹かれたひとなら満足出来るはず。
鑑賞後はいったん劇場を離脱、行きつけの蕎麦屋までバイクで移動し昼食。混んでたり、注文が出るのが遅いとちょっとマズい空き時間しかなかったんですが、幸いにすべてスムーズに運んだため、理想的な時間に劇場に戻ることが出来ました。
2本目は、『マイティ・ソー バトルロイヤル』のタイカ・ワイティティ監督作品、第二次大戦末期、ナチスに憧れているけれど臆病な少年が、思わぬ出逢いから体験するドラマを描き、アカデミー賞候補にも列せられた『ジョジョ・ラビット』(Walt Disney Japan配給)。
これは素晴らしかった。子供の目線で、決して陰鬱に陥ることなく描き出された異色の戦争ドラマ。冷静に眺めると苦難の連続なんですが、子供ならではの純粋な眼差しと思考、そして何より、彼自身が気づかない周囲のひとびとの優しさが、ほとんどの映画で惨たらしく描かれる時代に新しい光を注いでいる。この上なく気の利いたラストシーンもいいんですが、やっぱり出色は主人公渾身の鉄拳制裁と、サム・ロックウェル演じるキャプテンKのあまりにも粋な去り際です。
映画館の入っているアリオ西新井をしばしばウロウロし、軽く買い物をしたあとに観た3本目は、『殺人の追憶』のポン・ジュノ監督最新作にしてカンヌ映画祭パルム・ドール受賞作、全員失業中の貧しい一家が、あるセレブ一家の生活に次第に入り込んでいくさまをコミカルに、そしてサスペンスフルに描く『パラサイト 半地下の家族』(Bitters End配給)。
こちらも評判に違わぬ凄まじさ。金持ちの鷹揚さ、寛容さにつけこんで、彼らの懐に入り込んでいく家族のしたたかさ。ずーっと話がどう転がるか解らないまま引きずり回され、やがて一種のカオスとなり、名状しがたい余韻を残す終幕へと辿り着く。こんなことが起きるのではないか、という予感も随所で漂わせつつ、それをひたすらに上回ってくるゾクゾクがつきまとう強烈なストーリーテリング。この作品の興味深いところは、やがて劇的な行動に及ぶひとびとのトリガーも、それを許す一線の設定にも意外性がある、という点だと思う。人間の感情を動かすのは、決して単純な打算ではない、と囁いているとも取れる。娯楽性に秀でながら一筋縄でいかない傑作。そりゃあ、海外でも高く評価されて当然だと思う。
このあたりで疲れが強かったら帰るのも仕方ない、と思ってましたが、思いのほか余裕があったので、そのまんま4本目へとなだれ込みました。本日ラストの1本は、福本伸行の人気漫画の映画化にして怪優・藤原竜也の代表作久々の第3作、オリンピック後に訪れた大恐慌に対する政府の強硬策を止めるため、伊藤カイジが最後の大勝負に挑む『カイジ ファイナルゲーム』(東宝配給)。
正直なところ、振り切れてる藤原竜也が観たかった、というのが第一なので、その意味では不満はない――とはいえ、物語の大半を割いて描かれる吉田鋼太郎との対決で用いられるゲームの作りがあまりに安直で、観ていていまいち乗れないのは残念。あまりにもドラマを乗せやすいし、その一方でラストの逆転がちょっと乱暴すぎる。そのあと、真の最終対決ではこのシリーズらしい推理と、知力を尽くした逆転劇が味わえるので、少し取り戻した感はありますが、やっぱり限定ジャンケンあたりの凄味には及ばない。つくづく藤原竜也を堪能するための映画だと思います。
――というわけで、当初の目論見通りの4本立てを達成し、帰宅の途へ。基本座って観てるだけですが、やっぱしそれなりに疲れました……。
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