作業がかなり詰まってきている状況ながら、この日出かけることは月曜日くらいには決まっていた。何故なら、「これは絶対劇場で観る!」と決めていた作品が都内での上映を終えるから。折しも、この時期恒例となった大つけ麺博が今年も歌舞伎町の大久保公園で開催され、ちょうど2日が初日。目当ての作品はレイトショー枠ですし、折角だからこの鑑賞前に食事をしておこう、更に可能ならついでにもう1本観ておこう、とあれこれスケジュールを調べ、1日の時点でネットでチケットも確保して、予定を固めてしまいました。
爆弾低気圧の影響で風は強いものの、幸いに空は晴れている。このところなかなか自転車に乗れませんでしたし、ラーメンを食べるなら少し多めに体力を消耗しておくべきだ、ということで、えっちらおっちらペダルを漕いで新宿へ……あんまり意識していないひとも多いでしょうが、新宿は意外と標高が高いので、市ヶ谷あたりからず〜っと坂が続く、自転車にとっては非常に辛い道程なのです。それだけいい運動にもなるわけですが。
まず向かったのは新宿ピカデリー……この劇場、動線の劣悪さがどうしても耐えられなくて、あんまり利用したくないんですが、シネコンの競争激化に伴い、他の系列ではかからない作品が増えていたりで、何だかんだでぼちぼち脚を運んでいる。ちょうど、会員サーヴィスのほうにいいクーポンが登録されていたので、それを利用してネットで予約しておきました。
鑑賞したのは、ドウェイン・ジョンソン主演、有名なサン・アンドレアス断層を起点とした巨大地震によって崩壊していく街から、家族を救うために奮闘するレスキュー隊員の姿を描いたディザスター・ムービー『カリフォルニア・ダウン(字幕・3D)』(Warner Bros.配給)。
作品そのものはこの劇場に限らずまだ続映の予定なんですが、3Dはほとんどの劇場で2日をもって終わってしまう。クーポンもあるので、たまにはいいか、と新宿ピカデリーで初めて3Dを鑑賞しました。
TOHOシネマズやユナイテッド・シネマなどでは、使い捨ても可能な安価なものを配布、持ち込めば割引、というスタイルを取っていますが、ここは鑑賞後返却する仕組みになっている。TOHOシネマズでは初期に導入したものの間もなく他のシステムに変えてしまったXpanDを依然として使用しているようですが、あのストレスの溜まるやたらと重い眼鏡はさすがにやめていて、うっかりすると持ち帰ってしまいそうになる手軽なものに変わってました。通常の眼鏡の上からも装着可能なので、これなら抵抗はない。
作品自体は、いい意味で大味な、娯楽に徹した災害映画でした。さすがにここまで簡単にビルがボロボロ崩れるとはちょっと考えにくいですし、引き潮の起きない津波もやや奇妙なんですが、それらがサスペンスに満ちたアクションを生み出しているので、娯楽映画としては充分に出来がいい。未だにあの震災のトラウマから脱していない方にはやはり辛いかも知れませんが、想像しうる恐怖を丹念に織り込んだ作品として、けっこう面白かった。個人的に偏愛する『ボルケーノ』に近いムードもありましたし。
映画を見終わったあとは、急ぎ足で歌舞伎町を抜けて大久保公園の大つけ麺博へ。ちょうど一般の皆様も仕事が終わった頃合いなのでしょう、なかなかの混雑でしたが、しかしそれほど並ばされることもなく10分程度でお目当てのものを入手しました。
今年の大つけ麺博は“つけ麺VSラーメン”と銘打ち、従来のつけ麺一辺倒ではなく、ひとコマ10店舗のうち半分にラーメンを配し、食事した客の投票で雌雄を決する、という趣向になっている。別に比べなくても、という気はしますが、今まで以上にバリエーションが楽しめるのは有り難い。
今年初参加の今回は、さっそくつけ麺ではなくラーメンから手をつけてみた。でびっとの醤油豚骨ラーメンです……実はこれ、タレントのデビット伊東が経営する店だったりする。前々から気になっていたので、出店を幸い、さっそくこれから嗜んでみました。
何だかんだで開業15年も経ち、支店も多く出ているというくらいですから、なるほど美味しい。豚骨ながらくどさはなく、変に主張しすぎる食材もない一方で、キクラゲやネギもときどき程よいアクセントとなってくれるので、飽きず食べられる。私は本当はラーメンのスープなんか飲み干しちゃいけないんですけど、今日はそれなりに運動もしているし、この匙加減なら、と思わず最後の1滴まで飲み干してしまった。それくらい美味。
予定より早く食事できて、時間が余ったので、もう1杯食べようかな……と一瞬だけ考えましたが、さすがに普通盛り2杯は食い過ぎだろう、と悟ってすぐに離脱。例によってちょっとだけお買い物をして、あとは次の劇場にてダラダラと時間を潰しました。
ふたつめの映画館は、休館を控えてますますラインナップが多彩になっている感のある新宿武蔵野館。鑑賞したのは、単純にして醜悪な発想をとことん広げて、とうとう極地に達してしまったシリーズ完結篇『ムカデ人間3』(Transformer配給)。回数を絞っているのも幸いしたのか、こんなとんでもないカルト作品ながらそこそこ長くかかってましたが、いよいよ新宿武蔵野館では最後となったため、ギリギリで駆けつけた次第。1作目から観ている馬鹿者としては、劇場で観ないなんてあり得ませんから。
クレイジーさではシリーズ屈指。肛門と口を接合してムカデ状にする、というアイディアをよくもまあここまで膨らませたものだ、と思いますが、それを最大規模にするために、中心人物と世界をもろとも発狂させている。1作目では静かな狂気を演じたディーター・ラーザーが今回は、南部人っぽい偏屈さをまとった横暴ぶりで作品を支配してます。実は、肝心の“ムカデ人間”という趣向にはなかなか手をつけようとしないんですが、ディーター・ラーザーの異様なテンションが、クライマックスの醜悪な描写とうまくバランスを取ってインパクトが凄い。冷静に考えればあり得ないことが幾つもあるんですけれど、それを正当化するための仕掛けをきちんとちりばめ、そこここに風刺性やオマージュらしきものも組み込んでいる辺りはやっぱり一筋縄ではいかない。ラストシーンは『悪魔のいけにえ』を思い出したんですが、狙っているのかは定かではない。
およそ高尚とは言いにくい作品ふたつでしたが、満足して帰途に就きました……自転車の後輪タイヤの不調さえなければ文句なしだったんですが。やっぱり長いこと放置されていた自転車なので、ゴムが劣化していた可能性がありそう。交番で空気入れをお借りして何とか自宅まで辿り着きました。
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