『香港発活劇エクスプレス 大福星』

香港発活劇エクスプレス 大福星 デジタル・リマスター版 [DVD]

原題:“福星照高” / 英題:“My Lucky Stars” / 監督、武術指導&主演:サモ・ハン・キンポー / 脚本:バリー・ウォン / 製作:レナード・ホー / 製作総指揮:レイモンド・チョウ / 撮影監督:ピーター・ゴク / 音楽:マイケル・ライ / 出演:ジャッキー・チェン、ユン・ピョウ、シベール・フー、リチャード・ン、チャールズ・チン、フォン・ツイファン、エリック・ツァン、ウォルター・チョウ、ポール・チャン、西脇美智子 / 配給:東映 / 映像ソフト発売元:Twin

1985年香港作品 / 上映時間:1時間37分 / 日本語字幕:?

1985年8月10日日本公開

2011年4月8日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

大成龍祭2011上映作品

DVD Videoにて初見(2011/11/02)



[粗筋]

 香港警察のマッスル(ジャッキー・チェン)とリッキー(ユン・ピョウ)は犯罪者を追って日本に潜入していた。しかし、どうにか追いつめたと思ったところで敵の思わぬ逆襲に遭い、リッキーが攫われてしまう。

 マッスルの要請に応じて、香港警察は彼らの協力者を、刑務所から連れ出した。通称デブ(サモ・ハン・キンポー)は詐欺罪で収容されていたところを、警察に騙される格好で協力を約束させられてしまう。

 デブが集めた仲間たち、ダンディ(チャールズ・チン)、ブル(フォン・ツイファン)、サイコ(リチャード・ン)、キウイ(エリック・ツァン)とともに、ある一軒家に赴くと、何と5人はフラワーというもうひとりの人物を加えた面々で強盗を働いた、ということにされていた。何やら極秘の作戦のための囮に用いられるらしい。天敵とも言える警察からの仕事と知ってデブ以外の4人は反発するが、通称フラワーとして同行するのがウー刑事(シベール・フー)という美女と知り、態度を一転させた。

 かくて6人は、日本へと発った。デブは日本に到着したあとで、仕事がマッスル絡みのものと知って不快感を顕わにするが、ウー刑事に説得され、嫌々ながら敵の主催する賭場へと潜入する……

[感想]

 日本のジャッキー・ファンとしては間違いなく観逃せない1本である。何せ、主な舞台が日本に設定されており、新宿駅富士急ハイランドでジャッキーやユン・ピョウが立ち回りを繰り広げているのだから。

 ただ、その部分を除くと、色々と物足りない内容であることは否めない。

 この頃の香港映画が全般にいい加減な話作りをしていることは、短期間にまとめて鑑賞してきただけに痛感しているが、本篇の作りは特に雑だ。日本を舞台にしていること自体はむしろどうでもいいほうで、そのために何故刑務所からサモ・ハン演じる主人公を呼び出す必要があったのか、何故いちど香港にあんな凝ったアジトを設けたのか、更にわざわざあんな危険なオオカミどものなかに女性刑事という子羊を送りこむような真似をするのか、ほとんど理解できない。敵の懐に潜りこむ手段にしても、果たしてあんな手の込んだ真似をする必要があったのか。

 恐らくこの頃のジャッキーやサモ・ハンの映画は、どういう見せ場を設けるのか、ということを先に決めて撮っているのだろう。現場でのアドリブも受け入れ、すべてを撮り終えたあとで改めて話をまとめているように思える。パーツがうまく噛み合えば、先行する『五福星』のように綺麗にまとまることもあるが、本篇の場合、その『五福星』で提示した元犯罪者の5人組というキャラクターの設定を踏襲していることが却って災いした感がある。5人組の活躍という大前提と、日本を舞台にする、というアイディアがうまく噛み合わず、何だか意味不明の話になってしまった。ストーリーとしてのカタルシスを求めても、どこにそれがあるのかも解らないのである。

 ……と、かなり厳しく記したものの、観ていて退屈はしない。支離滅裂ではあるが、サモ・ハンを中心とする5人組のいちいちコミカルな言動や、相変わらず工夫に富んだジャッキーのアクションは、前後の脈絡などなくても愉しいのだ。

 福星シリーズ恒例となったヒロインに対する悪戯は、普通ならさっさと気づくだろ、とも思うのだが、それでも通用してしまい延々と続くこと自体が笑える。それぞれの個性を活かした見せ場がないのが惜しまれるものの、本篇はシリーズとしては2作目に過ぎないので、引き継ぐことに意味があった、とも言える。

 そして、何だかんだ言いつつも、富士急ハイランドの観覧車のカゴから骨組みを滑り降りてくる様や、お化け屋敷を舞台にした立ち回りなど、日本特有のモチーフを組み込んだジャッキーのアクション・シーンは見応えがあり、やっぱり日本人としては嬉しい。クライマックス、何故かお化け屋敷の奥にあるアジトでの格闘はおそらく香港のスタジオあたりに築いたセットであろうが、サモ・ハン監督作品らしい正統派ながら意外性もあるアクションをきちんと組み込んでおり、安定した仕上がりならではの爽快感がある。

 ストーリー的にもアクション的にも、ジャッキー×サモ・ハン×ユン・ピョウ3人組の作品としては決してハイレベルではない。正直に言って、私が鑑賞したこの3人組の作品では最も不出来だ、とさえ思う。しかしそれでも、観ていて愉しく快い。たとえ勘違いでも日本的な要素をきちんと組み込み、アクションやコメディの見せ場を疎かにしない、サービス精神の為せる技だろう。

 ……しかし、いちおう3人組の作品としてカウントはしたものの、この話、ユン・ピョウの出番がほとんどない。2/3ぐらい、お姫様よろしく閉じ込められていたせいではあるし、その鬱憤を晴らすかのようにクライマックスでは怒濤の攻撃を繰り出すので、まあ勘弁してやるべきか。

 ちなみに続く『七福星』では、クライマックスにジャッキーの出番が妙に少ない、という事態が発生する。一説には、『ポリス・ストーリー/香港国際警察』の撮影が始まったために、意図的に出番を減らした、と言われている。だとすると本篇におけるユン・ピョウも、他の仕事との兼ね合いでこういう扱いになったのかも知れない――だとするとますます香港の映画界って、当時はそーとー緩かったんだな、と思わざるを得ないところだが。

関連作品:

五福星

七福星

スパルタンX

サイクロンZ

プロジェクトA

ポリス・ストーリー/香港国際警察

コメント

  1. […] 関連作品: 『るろうに剣心』/『るろうに剣心 京都大火編』/『るろうに剣心 伝説の最期編』/『SPL/狼よ静かに死ね』/ […]

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