さよならキツネ。

 今週含め3週間は必ず1日、午前十時の映画祭10に取られてしまう。そのうえで土曜日に用事なんて入ってたら、木曜日しか一般上映作品を観る隙はありません。というわけで、“とりあえずなんか観る”という前提のもと、スケジュール優先で作品を選びました。
 朝一番で訪れたのは、TOHOシネマズ上野。鑑賞したのは、長年愛されている冒険小説の(調べた範囲では)6度目の映画化、飼い犬が数奇な運命を経て野生へと戻っていくさまをロマンたっぷりに描き出す野性の呼び声(2020・字幕)』(Walt Disney Japan配給)
 ひたすらにお犬様を愛でる映画でございました。いちおう“主演”としてハリソン・フォードがクレジットされており、フォード演じる人物が語り手とはなっているものの、視点人物は完全に犬のバックです。少し異常なくらいに賢いバックが、各所で災難に見舞われながらも成長し、聡明でありつつ野生へと目醒めていくさまが、冒険映画ならではのロマンたっぷりに描かれる。極寒の地の冷たくも清澄な光景、渓流の荒々しく躍動する光景、などなど、美しい自然を駆け巡る犬の姿にひたすら見蕩れっぱなしです――ぜんぶCGでしょうし、あまりにも犬の振る舞いに人間っぽさが滲むのがやや気になるとは言えますが、こんなに素直にロマンを感じられる映画はちょっと久しぶり。100分足らずと尺も手頃なので、ひととき浮き世の憂さを晴らすには最適。っていうか、色々と息苦しいいまだからこそ観て心地よい1本でした。

 ところでこの作品、映画ファンとしては、本篇が始まる前からちょっと胸が苦しくなるひと幕があります。
 冒頭のロゴが“20th Century Fox”ではなく、“20th Century Studios”になっているのです。
 フォックスの映画部門がディズニーに吸収されたのが昨年。既存のディズニー実写とは一線を画し、従来のフォックスやフォックス・サーチライトの方針に沿った作品をリリースする、ということにはなったらしいのですが、昨年末あたりだったか、“20世紀フォックス”は“20世紀スタジオ”に、“フォックス・サーチライト”は“サーチライト・ピクチャーズ”に変更、と“フォックス”の名前を外す方針を発表していた。
 確か『フォードvsフェラーリ』までは“20世紀フォックス”名義だったはずですが、とうとう今回、ロゴから“Fox”が消えてしまった。前述の通り、製作・配給する作品の方向性は変えない、という話ですが、やっぱりちょっと寂しい。
 ちなみに劇中にもキツネは出て来ませんでした――地理的に出て来てもいいんじゃないか、と思うんですが。

コメント

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  2. […] 原題:“The Call of the Wild” / 原作:ジャック・ロンドン / 監督:クリス・サンダース  […]

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