原題:“Sin City : A Dame to Kill for” / 原作&脚本:フランク・ミラー / 監督:ロバート・ロドリゲス&フランク・ミラー / 製作:ロバート・ロドリゲス、アーロン・カウフマン、スティーヴン・リュロー、セルゲイ・ベスパロフ、アレクサンドル・ロドニャンスキー、マーク・マニュエル / 製作総指揮:フランク・ミラー、ハーヴェイ・ワインスタイン、ボブ・ワインスタイン、ザンヌ・ディヴァイン、アダム・フィールズ、エリザベス・アヴェラン、マーシー・マディソン、オレグ・ボイコ、ジョン・ポール・デジョリア、キア・ジャム、セオドア・オニール、ティム・スミス、アラステア・バーリンガム、キップ・ネルソン、アリン・スチュワート、マリナ・ベスパロフ、ボリス・テテレス、ジェリー・ハウスファター / 撮影監督&編集:ロバート・ロドリゲス / プロダクション・デザイナー:スティーヴ・ジョイナー、ケイラ・エドルプラット / 衣装:ニナ・プロクター / キャスティング:メアリー・ヴェルニュー / 音楽:ロバート・ロドリゲス、カール・シール / 出演:ミッキー・ローク、ジェシカ・アルバ、ジョシュ・ブローリン、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、ロザリオ・ドーソン、ブルース・ウィリス、エヴァ・グリーン、パワーズ・ブース、デニス・ヘイスバート、レイ・リオッタ、ジェイミー・キング、クリストファー・ロイド、ジェイミー・チャン、クリストファー・メローニ、ジュノー・テンプル、ジュリア・ガーナー、ステイシー・キーチ、レディー・ガガ、ジェレミー・ピヴァン、マートン・ソーカス、ジュード・チコレッラ、アレクサ・ヴェガ / トラブルメーカー・スタジオズ/ARフィルムズ製作 / 配給:GAGA / 映像ソフト発売元:Happinet
2014年アメリカ作品 / 上映時間:1時間43分 / 日本語字幕:林完治 / R15+
2015年1月10日日本公開
2017年2月2日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazon]
公式サイト : http://sincity.gaga.ne.jp/
TOHOシネマズスカラ座にて初見(2015/01/20)
[粗筋]
――Just Another Saturday Night
気がついたとき、マーヴ(ミッキー・ローク)は大破した乗用車とパトカーの傍に転がっていた。記憶を辿り、ホームレス狩りをしていた大学生達を追っていたことは思い出したが、自分が着ていたコートがブランド品である理由が思い出せない。マーヴは必死に記憶を遡ろうとした――
――The Long Bad Night
悪徳の蔓延る街シン・シティに、ジョニー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は徒手空拳で突っ込んでいった。彼が武器とするのは、ギャンブルの運と、神憑りに鍛え上げた指先だけ。日夜ろくでなしどもが集うバー“ケイディ”の奥で催される闇ポーカーに、ジョニーは直前のギャンブルで増やした金を携え参加する。
ジョニーの標的は上院議員ロアーク(パワーズ・ブース)。シン・シティの最高権力者であり、誰も逆らうことの出来ない絶対者だった。ギャンブルでもその力は圧倒的だったが、ジョニーはマーシー(ジュリア・ガーナー)という“幸運の女神”がついたこともあってか、見事ロアークに圧勝する。だが、ロアークは若造の絶対的勝利を認めなかった――
――A Dame to Kill For
浮気調査の仕事で喰っていたドワイト(ジョシュ・ブローリン)は、ひとりの女を救った夜、エヴァ・ロード(エヴァ・グリーン)と再会する。かつての過ちを謝罪する、というエヴァに、彼女が危険な女だと知りながら、ドワイトはほだされていた。
富豪である夫ダミアン(マートン・ソーカス)のサディスティックな愉しみのために虐げられている、と訴える彼女のために、ドワイトはマーヴをそそのかして味方につけ、ロードの屋敷に突入するが、そこには罠が待ち構えていた――
――Nancy’s Last Dance
ケイディのダンサー、ナンシー・キャラハン(ジェシカ・アルバ)は、彼女を愛し、彼女を守りつづけた男ジョン・ハーティガン(ブルース・ウィリス)を奪ったロアーク上院議員(パワーズ・ブース)への怨みをずっと忘れていなかった。しかし、シン・シティを闇で牛耳る男の強大さを怖れ、手出しできないまま4年が過ぎてしまう。だがある日、彼女は遂に決意し、苛烈な策を講じた――
[感想]
役者以外をほぼCGで表現することにより、さながらコミックがそのまま動いているかのような画面を構築、観客に新鮮な衝撃を与えた作品『シン・シティ』の続篇である。
前作をご覧の方はご存知のように、この作品は複数のエピソードを並行的に語り、それぞれが相前後しながら緩やかに繋がっていくのが醍醐味のひとつだった。本篇でも基本的にその語り口は踏襲しているが、特徴的なのは、ただ“続き”を描いているのではなく、前作よりも前の出来事とあとの出来事を並行して描いている点だろう。前作で死んだ者は多いが、本篇では普通に姿を見せるので、前作の記憶が半端なまま鑑賞すると終始困惑が先に立ちかねない。
では前作を観ていない方が、素直に作品世界に浸れるのか? と問われると、正直なところ、これもまた微妙だ。恐らく前作の登場人物や物語について、ある程度の知識がなければ、本篇はやたらとちぐはぐな印象を受けるはずである。なにせ、エピソードごとに登場人物の関わり、顔の覗かせ方が異なるため、全体像の把握が難しいのだ。
鑑賞するならば、前作と続けて味わうのが無難かも知れない。それでも、ある意味で多くのことが徒労に帰すあの終幕を受け入れがたい、というひとはいるだろう。アートとしての先鋭的な趣向に慣れてしまったあとに発表された続篇としては、そのあまり愉快でない類の苦みがネックとなっていると思う。
とはいえ、本質的な魅力が前作から損なわれているわけではない。本篇を支えているのは、悪徳の街をしぶとくしたたかに生きてきた者たちの、危険を知る者ならではのユーモアであり、個々のエピソードでクライマックスを彩る破滅的なカタルシスだ。その鮮やかさは本篇でも貫かれている。
特にインパクトがあるのは、ジョセフ・ゴードン=レヴィット演じるジョニーが語り手となるパートだろう。若くして強運と手業に優れた男が、街でも最も権力を持つ男に無謀な戦いを挑む。モノローグで饒舌に手の内を晒しながらもなかなか本当の理由を語ろうとしないが、徹底的に痛めつけられながらなおもクールに立ち上がろうとするさまは、このシリーズが持つ作品世界ならではの非情さとスタイリッシュさが巧みに象徴されている。
前作自体、すべてのエピソードが緻密に結びついているわけではなく、登場人物が重なっていたり、時間軸が相前後しながら交差するくらいなので、伏線が回収されていく妙味、カタルシスといったものは実感しにくい。しかも語られる話が前作も含めて順序がシャッフルされているので、いったいどの辺りの話をしているのか、理解しようと努めると複雑すぎて辟易するかも知れない。
しかし、そうした物語同士の繋がり、個々の出来事がどのように別の事件に結びついていったのか、ということを読み解く面白さがある。そして、そこに繰り返される犯罪や悪徳の連鎖、複雑にもつれ合った登場人物たちの感情に、噛みしめるほど渋くも深い味わいが楽しめるはずだ。
なまじ1作目のインパクトが強いだけに、その姿勢を保ったことがいささかマイナスに作用した感はあるが、ブレのない続篇である。やはり単品で楽しむよりは、1作目と併せて吟味するべきだろう。
関連作品:
『シン・シティ』
『エル・マリアッチ』/『デスペラード』/『レジェンド・オブ・メキシコ/デスペラード』/『フロム・ダスク・ティル・ドーン』/『グラインドハウス』/『マチェーテ』/『マチェーテ・キルズ』/『アリータ:バトル・エンジェル』/『ザ・スピリット』
『インモータルズ-神々の戦い-』/『アイズ(2008)』/『とらわれて夏』/『リンカーン』/『トランス』/『RED/レッド リターンズ』/『ダーク・シャドウ』/『アベンジャーズ』/『ジャーヘッド』/『ジャッキー・コーガン』/『マン・オブ・スティール』/『ブラッディ・バレンタイン3D』/『ピラニア リターンズ』/『ハングオーバー!!! 最後の反省会』/『ダークナイト ライジング』/『ウォールフラワー』/『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』/『メン・イン・ブラック3』/『ロックンローラ』/『アメイジング・スパイダーマン2』/『シャッフル』
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