山里の妻を観てきた。

 きょう何を観るかは、一週間前には決めていました。ていうか、そこまで観るタイミングがなかったが故に、きょうはこのために空けるしかなかった。

 ……はずだったんですが、予定を変えました。

 ほんとーは次の週末か、来週中に鑑賞する映画の予習として、配信で1本押さえておくつもりだったのです。
 予定が狂った原因は、SMT Membersの無料クーポン。先月、コンセッションで買い物した際に当選したのですが、うかうかしてる間に期限が来週頭に迫ってきてしまった。当初の予定では今週末、ある新作を観るつもりで、松竹系ではない劇場での鑑賞は確定していたので、このクーポンを無駄にしないためには、ハシゴのスケジュールを組まねばならない。

 どうやっても、しっくり来る予定が組めない。

 時間的にはピッタリだけど移動の時間を考慮するとギリギリ、しかも、本命の作品が夜遅いので、これに合わせると、昼食からかなり長い時間、食事が摂れない。以前なら、劇場のフードで小腹をごまかして手を打つところですが、困ったことに現在、座席をすべて開放する代償として、どこの劇場もドリンク以外の販売を自粛している。
 で、さんざん悩んだ挙句、クーポンを捨てるつもりがないんなら、わざわざハシゴをするスケジュール自体を見直して、私のほうで都合のつけやすい木曜日にクーポンを使ってしまうしかない、と悟りました。ハシゴをしないで済むなら、時間や場所の選択肢が増え、観てみたい作品も網に入ってくる。で、あれこれ悩んで、観に行く作品を確定したわけです。

 というわけで、午前中からやって来たのは新宿ピカデリー。例によって、いちばん近い駐車場は満車だったので、よく利用する方に移動する、というのを挟んだせいで到着がギリギリになってしまいましたが、予告篇も観られたので問題なし。
 無料クーポンにて鑑賞した本日の作品は、黒沢清監督がNHKにて制作したドラマを劇場用に再編集、ヴェネチア映画祭で銀獅子賞を獲得する快挙を成し遂げた1本、第二次世界大戦勃発前後の日本で、夫が抱えた秘密によって翻弄される妻の姿をクラシカルなタッチで描き出した歴史サスペンススパイの妻』(Bitters End配給)
 序盤はちょっと間延びした感があっていまいち乗り切れなかったんですが、高橋一生演じる夫が何をしているのか、が明かされるあたりから急速に緊迫感が増していき、終盤は惹き込まれてました。舞台も登場人物も決して多くないのに、そのなかで歴史を感じさせる要素をきっちり詰め込み、サスペンスを醸成する手際は素晴らしい。でもなんと言っても賞賛すべきは、タイトルロールと言える妻を演じた蒼井優でしょう。まさに昭和初期の、気苦労もなく生活している女性の鷹揚とした挙措を体現して、それが次第に変貌していくさまが巧い。そしてクライマックスの鬼気迫るひと幕は鑑賞後しばらく頭から離れません。文句なく名演。ぶっちゃけ、気にしつつもこれのためにあえて出かけるところまでは踏み出せずにいて、無料クーポンがなかったらスルーしていた可能性もあったんですが、観て良かった。実に面白かった。

 鑑賞後、またぞろ新しいラーメン店を開拓しようか、うろつきつつしばし悩んで、けっきょく3度目の訪問となる麵屋海神で、またぞろあら炊き辛塩らーめんのへしこ焼きおにぎりつきを注文してしまいました。こういうところが保守的。ただここは、食欲がいまいち、という気分でも入る食べやすさと、満足感がしっかり両立出来るので、体調に波がある私にはいちばん安心して選べるのです。少し歩けば五ノ神製作所もありますが、あちらは体調によっては胃に堪えるので……美味しいし、ときどき無性に食べたくもなるんですけど。

コメント

  1. […] 監督:黒沢清 / 脚本:濱口竜介、野原位、黒沢清 / プロデューサー:山本晃久 /  […]

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