『空飛ぶペンギン』

空飛ぶペンギン [DVD]

原題:“Mr. Popper’s Penguins” / 原作:リチャード・アトウォーター『ポッパーさんとペンギン・ファミリー』(文溪堂・刊) / 監督:マーク・ウォーターズ / 脚本:ジャレッド・スターン、ジョン・モリス、ショーン・アンダース / 製作:ジョン・デイヴィス / 製作総指揮:デレク・ドーチー、ジョエル・ゴットラー、ジェシカ・トゥチンスキー、マーク・ウォーターズ / 撮影監督:フロリアン・バルハウス / プロダクション・デザイナー:スチュアート・ワーツェル / 編集:ブルース・グリーン,A.C.E. / 衣装:アン・ロス / キャスティング:キャスリーン・チョプリン、マルシ・リロフ / 音楽:ロルフ・ケント / 出演:ジム・キャリーカーラ・グギーノアンジェラ・ランズベリークラーク・グレッグ、オフィリア・ラヴィボンド、マデリン・キャロル、マックスウェル・ペリー・コットン、フィリップ・ベイカー・ホール、ジェームズ・タッパー、デヴィッド・クラムホルツ、ドミニク・チアニーズ / 映像ソフト発売元:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント

2011年アメリカ作品 / 上映時間:1時間35分 / 日本語字幕:?

日本劇場未公開

2012年8月3日映像ソフト日本盤発売/2013年2月6日日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

DVD Videoにて初見(2013/08/07)



[粗筋]

 ポッパー氏(ジム・キャリー)はやり手の不動産ブローカーだ。口八丁手八丁で難攻不落の権利者を口説き落とし、幾つもの物件を確保している。その功績は、務める不動産会社の新たなパートナー候補に掲げられるほどだが、その夢を実現するために、経営者たちは彼に最後の宿題を課した。ニューヨークでも老舗の名門レストラン〈タバーン〉の権利を、ヴァン・ガンディ夫人(アンジェラ・ランズベリー)から買い取ってこい、というのだ。

 難攻不落と言われるガンディ夫人攻略のために綿密な戦略が必要になるなか、ポッパー氏のもとに突如、奇妙な荷物が届けられる。それは、冒険家である彼の父が差出人となっていた――既に物故しているはずの父から何故、と訝りながら箱を開けると、そこに入っていたのはなんと、ペンギン。

 父の意図を量りかねながらも、ポッパー氏は仕事に追われ、部屋にペンギンを残していく。帰ってみると、部屋は壮絶な有様になっていた。ポッパー氏は父の代理で荷物を送ってきた人物に連絡し、引き取るように懇願するが、どう話が行き違ったのか、さらに“追加”が届いてしまう。

 始末に悩んでいるところへ、離婚した妻アマンダ(カーラ・グギーノ)と娘のジェニー(マデリーン・キャロル)、息子のビリー(マックスウェル・ペリー・コットン)が、ビリーの誕生日を祝うためにポッパー氏の部屋を訪れた。ペンギンを目にした子供たちは大喜びし、ポッパー氏はやむなく、ペンギンを飼い続けることを約束してしまうのだった……

[感想]

 実在の動物をモチーフとして採り上げ、家族の絆を謳うという、物語としては定番の構造である。児童小説がもとになっているそうだが、ざっと調べてみるとかなり設定などが改変されているので、物語の構造自体、現代のものとして、単独の映画として受け入れやすいように変えられたのかも知れない。

 私はペンギンに詳しいわけではないが、それでも本篇の描写には色々と疑問を抱く。自分で水道を開けるとか、やたらと理解力が高い、というのはフィクションとして受容するにしても、住環境への適応力の高さ、刷り込みの強さはさすがに行き過ぎの感がある。

 また、これは好みの問題もあると思うが、本篇のペンギンが恐らくほぼ全篇、CGで描かれているのもちょっと残念だった。近年のCGは完成度が高く、実写の中にあってもまったくと言っていいほど違和感はないのだが、滑らかすぎる動きは却って不自然さを感じさせてしまう。もしアニマトロニクスマペットを使用していたのなら、配分を多めにするか、質感を観る者にもたらす工夫がもう少し欲しかった。

 しかし、基本的にそつのない仕上がりである。有り体ではあるが、突然ペンギンが生活に介入してしまう人物の設定、物語とペンギンの特徴とのリンク、ファンタジー的な要素が与える笑いとドラマティックな筋書き、と必要なものはしっかりと組み込んである。その一方で、お約束の展開となりそうな要素がにちょっとしたひねりがあるのも評価したいところだ――ただ、ひねりと気づくかどうか、そこを面白がれるかどうかは微妙なところなのだが。

 相変わらず多彩な表情と大きな動きで魅せるジム・キャリーも見所ではあるのだが、本篇では果たして彼が適役だったのか、少々疑問に思える。彼だからこそ、その場には実在しない、或いは生きていないはずのものがいても、居るものとして絡み、息吹をもたらすことが可能だったのも間違いないが、それ以外の部分でも彼の味が強く出てしまっていて、本来はもっとペンギンたちに焦点が合っているべきところが、興味が分散してしまうのが難点だ。どちらも魅力はあるのだけれど、完全に一本化はされていないので、全体の印象がぼけてしまっている。

 観ていて愉しく、快い作品である。終盤の展開はかなり御都合主義ではあるものの、いちばんの主題は明確なので、嫌な印象を抱くひとはそれほど多くはないだろう。ただ、本当にそつがなさ過ぎて、あとにまるっきり残らないのが気にかかる。それもまた娯楽映画の見せ方のひとつではあるのだが、本篇の場合は、もう少し何かが残るようにしてもよかったように思うのだ。

関連作品:

(500)日のサマー

イエスマン “YES”は人生のパスワード

ナイト ミュージアム

ダブル・ミッション

アベンジャーズ

ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー

50/50 フィフティ・フィフティ

街の灯

ハート・ロッカー

皇帝ペンギン

幸せへのキセキ

コメント

タイトルとURLをコピーしました