宿命という名の獣。

 2ヶ月にいちどのお楽しみ、爆笑問題withタイタンシネマライブの日です。まだラーメンイベントも継続してるし、どうせ食事までしていくなら、何かしらハシゴしよう、とは思ったのですが、今回、異様に悩んだ。見に行きたい作品、優先順位、そして何より、食事も含めた時間の調整を考慮すると、どれもしっくり来ないのです。もういっそ、ハシゴはやめて本命だけに絞ろうかな、という気分になった当日になって、よーやく作品を決めて、チケットを確保したのです。席が空いてて良かった。
 というわけで、いつもより短めに仮眠を取り、早めに家を出る。予報ではほぼ曇り、雨の可能性も示唆されてるので、迷う余地なく電車移動です。
 ラーメンイベントの都合があるので、今回も行き先は新宿です。本題の方はTOHOシネマズ新宿ですが、その前に観るのは久々の新宿ピカデリー。
 無事に予定より早く到着したので、ゆっくり売店でドリンク類を購入……するつもりでしたが、飲料がドリンクバーしかなかったため、断念しました。映画館でドリンクバーをやるな、とは言いませんが、ちゃんと上映中、席を立たずに鑑賞したい人間にはメリットが皆無で、出来れば各サイズ1回のみの注文も許容して欲しい。あとのことも考えるとSサイズを頼む方がいい、という私には、550円はちょっと高すぎる。そもそも、ドリンクバーがロビーにしかなく、いちばん数字の大きいスクリーンは11階にある、という動線の異常に長いこの劇場には合ってない。
 こういうことは言っておかないと気が済まないので、従業員の方に指摘の上、今日はここで飲料は買わない、今後もこのスタイルを通すなら飲み物はよそで買ってきます、と宣言してしまった。たぶん、指摘されてないだけで、同じ理由で飲み物を買ってないひとは多いと思う。実際、スクリーンに入って周囲のお客さんの手許を窺ってみたところ、他の劇場に比べて、劇場のカップを持っている人が異様に少ない印象でした。
 まあそれはさておき、鑑賞したのは、『ヴェノム』から連なる《ソニーズ・スパイダーマン・ユニヴァース》最新作、運命によってライオンの身体能力を身につけ、悪党を狩るようになった男の宿命を描くクレイヴン・ザ・ハンター(字幕)』(Sony Pictures Entertainment配給)
『ヴェノム:ラストダンス』を観逃してしまったのにこっちを押さえるのは、文芸寄りだったJ・C・チャンダー監督がどう料理したのかが気になったから。起用自体がちょっと意外だった。
 しかし、個人的には好きなタイプのダーク・ヒーロー映画でした。ダーク・ヒーロー誕生のくだりは比較的あっさりと描き、既に自らの力と折り合いを付けた状態で物語は展開する。もともとうやむやにしていた部分が、自らの行動の結果として立ち塞がり、主人公に葛藤をもたらす。
 かと言って、そこをあまり執着的に描写せず、このキャラクターならではのお膳立てと戦いをしっかり盛り込んでいる。最初の暗殺から脱獄、街中の追跡劇、そしてクライマックスの大自然での壮絶な戦闘。久々に、アクションの趣向とテンポに痺れた気がします。ヒーロー映画ってこれでいいのよ。
 家族という厄介な絆だけでなく、ある意味でヒーローとヴィランの切り離しがたい関係を巧みに盛り込んだ、という点でも抜かりがない。アクションの見せ場をしっかり固めながらも、文芸的作品を手がけてきた語り巧者としての側面も見せつけた手堅い秀作。
 ・ヒーローなんですけど、最近の報道によれば、不評だった『マダム・ウェブ』を下回る興収予測が出てしまったことを受けて、ソニーが映像化権を所有する《スパイダーマン》キャラクターをフィーチャーしたシリーズは本篇をもって終了となるそうです。まあ、正直なところ、私みたいに新機軸や監督の切り口を期待して観に行く方が特殊で、世間的には、やたらとスーパーヒーロー絡みの映画が続くことに倦んでいる傾向があるのは間違いなく、固執しない方がいいと思う。コミックファンは残念かも知れないけど、みんなそこまで執念的に、分析的に鑑賞してるわけではない。この監督による、クレイヴンの次のステージが観てみたかった気もしますが、この人はあんまし成績に振り回されないところでやって欲しいかも。

 鑑賞後は、大久保公園まで赴き《至高のラーメンフェス》にて夕食、そしてそれからタイタンシネマライブです。いずれも別々に項目を区切って記します――明日以降に。

新宿ピカデリー、シアター5入口脇のデジタルサイネージに表示された『クレイヴン・ザ・ハンター』キーヴィジュアル。"
新宿ピカデリー、シアター5入口脇のデジタルサイネージに表示された『クレイヴン・ザ・ハンター』キーヴィジュアル。

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